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スタッフ | |
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監督 | ピート・ドクター | |
共同監督 | リー・アンクリッチ/デヴィッド・シルバーマン | |
製作総指揮 | ジョン・ラセター/アンドリュー・スタントン | |
脚本 | アンドリュー・スタントン/ダニエル・ガーソン | |
音楽 | ランディ・ニューマン | |
声の出演 | ||
ジョン・グッドマン/石塚英彦・ホンジャマカ(サリー) ビリー・クリスタル/田中裕二・爆笑問題(マイク) メアリー・ギブス/井上愛理(ブー) スティーブ・ブシェーミ/青山譲(ランドール) ジェイムズ・コバーン/大平透(ウォーターヌース) |
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公式サイト | ||
http://www.disney.co.jp/movies/monstersinc/index.html |
人間界の子供たちの悲鳴をエネルギーに変えてモンスター界に供給する、"モンスターズ・インク"。だけど子供たちは年々モンスターなんかじゃ驚きも恐がりもしなくなってきてる。慢性的なエネルギー不足の中、モンスターズ・インクのエースコンビ、サリーとマイクをはじめとする社員たちも何とかエネルギー危機を回避しようとがんばるのだが状況はなかなか改善しない。そんなある日、モンスターズ・インクに大騒動が持ち上がる。しまい忘れた人間界への扉を開けて、一人の女の子がモンスターの世界に入り込んでしまったのだ。モンスターたちの世界にとって、人間の子供は世界を破滅に追い込みかねない危険な存在。偶然女の子と遭遇したサリーは、なんとか彼女を秘密のうちに人間界に送り返そうとするのだが………
天下無敵のCGI工房、ピクサーの最新作。いやはややってくれるわ。まったくこの連中、"映画を造る"ってことがどういう事なのかを良くわかっているよなあ。正しく"モーション・ピクチャー"なのだよこの映画は。
webや雑誌で紹介されている静止画像を見てても、実はそれほどピンと来ないものがあるキャラクタたち(一応のヒロインであるブーなんて、止メ絵でみたらむしろ気持ち悪いぐらいだよな)なんだけど、こいつらがスクリーンで動き出した瞬間に、この世界にはこいつら以外ありえない、ってな仕草を見せ、しゃべりまくってくれる。「シュレック」の時にも思ったんだけど、向うの連中はわかってるよなあ、としみじみ感じ入ってしまう。今できることはこれとこれ、ここまでのお話はできそうだ。んでももう一歩、何か挑戦してみたい。んじゃ今回はこれに挑戦してみよう、てな流れで映画が企画されてるような気がするんだな。
今回の挑戦はサリーの全身を覆うファーシェーディング(寝息とともに揺れ、光のあたり方、通り方がソリッドな物体とはちょっと違い、雪の中では水滴がつく)と、それに比べるとちょっと地味だけど、(シュレックの)フィオナ姫同様のスムーズなクロスシミュレートにあったのかな。凄いことやってます。
人間側の世界の表現を子供部屋だけに限定して、それ以外は全てモンスターたちの世界で起きたこと、というシチュエーションの設定で、余計なところに余分なリアリズムを持ち込むことを巧妙に回避してるあたりもうまい。このへんは「シュレック」でも感じたけど、全体に無理をしてないんだよな(どうしても「シュレック」とは比較してしまうことになるけど、んー、やっぱりテクスチャの使い方とか、キャラのディフォルメのしかたとか、ちょこっとしたところでやっぱピクサーはPDI/ドリームワークスの一枚上手をいってるかもしれん。いやもうほんのちょっとの差だと思うけど)。
そのうえで、単なる技術的な可能性を探るための実験映画なんかにはなってなくて、ちゃんとエンタティンメント性にあふれた、映画として楽しめるものになっているあたりが向うの映画屋のうまいところだよな。「ファイナルファンタジー」に決定的に欠落してた、映画はまずスジ(お話)である、と言う部分をおろそかにしていない。単に設定があって、敵がいて、そいつを倒して、ってのがスジじゃないんだよね。お話の世界に観客を上手に引き込んで、その世界を説明した上で、主人公の目的が明らかになり、それに対する障害は何で、主人公はその障害をどうやってはねのけて目的を達成するのか、そこをちゃんと描いてみせる、その手際がスジがうまい、って事になるんだと思う。起承転結をどう作ってやるか、ってことだな。
この映画のスジは、そりゃもう素朴なものだ。複雑な人間関係も壮大なバックグラウンドストーリーもない。いてはいけないものをいるべき所に返すだけの物語。ひねったところはなにもない。それでもこの映画が楽しめるものになっているのは、見ている側が決してお話の中で迷わないように丁寧にストーリーを組み立てておいて、なおかつちょいとニヤリと出来る"転"の部分が用意できているからな訳で、これって実は映画を造る上で、できててあたりまえの部分を、あたりまえにちゃんとやっているに過ぎないってことになる。それすらできてない映画が昨今多すぎるんだろうね。まことにシンプルなお話なんだけど、最後まで楽しく見せてもらえたですよ。
あ、あと日本語吹き替え版についてだけど、そんなに悪くないです。爆笑問題の田中さんの声が、マイクじゃなく田中本人をイメージさせてしまう、と言う声が一緒に見に行ったメンバーからは上がったんだけど、オレ、この人あんまりよく知らないからそれほど気にはならなかった。声が何となく落ち着かない感じはあったけどね。サリーのホンジャマカ石塚氏の方は割と良かったんではないですか。あと、ブーの井上愛理ちゃんもキュート。総じて良くできた吹き替えでありましたただ、ウォーターヌース社長役、原語版ではジェイムズ・コバーンが当ててるらしいんで、そっちも聞いてみたいなあとちょっと思ってしまいますな。