参考書

作成日:1999-01-26
最終更新日:

中小企業診断士(休止中)勉強のための参考書、副読本、情報源。評価は一部のみ記述している。 参考書に振った番号は買った順番で、計46冊ある。
総覧新中小企業基本法を 追加した。(2000-08-31)

新課程による区分もある。


主参考書

1. 全般(試験、診断士)

(1)加藤忠宏:情報診断士突破マニュアル、日刊工業新聞社(1998)

まずはこの本を信じて取り組んでいる。

(7)現代用語の基礎知識1999、自由国民社(1998)

常識のない私にとって常識を与えてくれる大部な書。2000年版も買いました。

(8)中小企業庁:中小企業白書(平成10年版)

中小企業診断士受験のバイブル(と言われている)。わたしはきちんと読み込んでいない。 しかし、事例は楽しいので読んでいる。 例えば、後継者に血縁者を選んだ会社より、血縁にこだわらない者を選んだ会社の業績がいい、 と書いてあると思わず拍手してしまう。私は貧乏人の子だからである。

なお、平成10年版の本文は、すべてインターネットで公開されていたが、今はもう見られなくなってしまった。 今は平成11年版の全文が見られる。ひょっとして年を勘違いしていたのかもしれない。

(13)森谷正規、藤川彰一:ベンチャー企業論、放送大学教育振興会(1997)

事例をたまに見ている。しかし、あまり本試験との関連性は強くない。

(16)山根義信:山根式中小企業診断士試験中小企業白書対策(1999)、日本マンパワー出版

経済的知識に使っていた。これも誤植を捜すのが楽しみ。ある年にこれを買えば、 次の年からはこの本のまとめ方にならって自分で中小企業白書をまとめるのがいいと思う。 なぜなら著者自身がこういっているからだ。 「中小企業白書をまとめた本には二次的な意味しかない。原典である中小企業白書を読め。」

(27)中小企業庁:中小企業白書(平成11年版)

白書のページをごらんください。

(43)中小企業庁:中小企業白書(2000年版)

白書のページをごらんください。

(28)山田英夫:ビジネス版 悪魔の辞典、メディアファクトリー(1998)

やられた、というのが正直な気持ちだ。自分も同じような考えで用語集をまとめたかったので、 この本とは別のことば、別の定義を取り上げて悪魔の辞典に取り上げた。 専門分野を中心に行なおうと思ったが、専門知識も共通知識もないことが今さら身に染みてわかった。

2. 一次試験(共通4科目+情報4科目)

(4)中小企業診断士受験研究会 編:'99 中小企業診断士試験過去問題集、日本マンパワー出版(1998)

この本には世話になった。過去5年間の試験問題が載っている。 商業部門、工鉱業部門がいっしょになっているが、それもまたよし。

(5)アクト経営問題研究グループ監修:マル速中小企業診断士過去問題解体白書、大栄出版(1998)

マンパワーの問題集に比べると信頼性に劣る。たとえば、財務管理の問題など、けっこう違う。 情報部門だけになっているためか、2年分多くのっている。

(21)中小企業診断士試験計算問題集、日本マンパワー出版

少し事例が古いが、自分なりに取捨選択して勉強してきた。 なお、これも「キーワード」と同じく1999年に改訂版が出た。 気になる点があったので、下に記しておく。

経済的発注量の導出

本書の pp.140-141 に記されている情報が不完全と感じているので、 以下私の考えで変更したり追加したりして補足する。

経済的発注量(EOQ)とは、 資材や商品の発注費用と在庫費用の和を最小にする、1回あたりの発注数量である。 1回あたりの発注数量が多すぎると在庫量が増加し在庫費用が大きくなる。 一方、発注数量が少なすぎると一定期間における発注回数が増加し発注費用が大きくなる。 そこで、発注数量に対して総費用を最小にする最適発注量が存在するはずである。

発注量を q とする。総費用 C(q) は発注費用と在庫費用の和である。発注費用 Co(q) は、 年間仕入数量 R と発注1回あたりの費用 Cu を用いて、次のように書ける。

Co(q) = (R / q) * Cu

一方、在庫費用を Ci(q) とする。Ci は平均在庫数と在庫商品単価の積に比例すると仮定する。 平均在庫数は q / 2 である。在庫商品単価を Cs 、比例係数(在庫費用率と名づける)を I とすると

Ci(q) = I * (q / 2) * Cs

よって、最適発注量は Co(q) + Ci(q) を最小化したときの q である。 上記の本はC(q), Co(q), Ci(q) のグラフを書くことによって、 Co(q) = Ci(q) のときに C(q) が最小になるというが、これは言葉が足りない。 正しくは、C(q) = R / q * Cu + I * Cs * q / 2 という式の最小値を求める手続きを明示すべきだ。

手続きとしては、C(q) を q に関して微分するのもいいが、 相乗平均と相加平均の関係を用いるのが簡単だ(以下引数 q を省略)。 相乗平均と相加平均の関係より、 sqrt(Co * Ci) ≦ (Co + Ci) / 2 であること(sqrt は正の平方根を意味する)、 等号成立は Co = Ci のときであり、またそのときに限ることが成り立つ。 従って、ここで初めて、 Co = Ci から (R / q) * Cu = I * (q / 2) * Cs が導出でき、 その結果 q が求められる。

以上が古典的な EOQ の考えと求め方である。 注意すべきは、在庫がゼロになることが許されていること、このときに発注すれば即納され、 欠品による問題は起こらない、と仮定できることである。

この先の発展については、 日本応用数理学会の論文誌 2009年9月号などにみることができる。

(24)中小企業診断士試験精選問題集、日本マンパワー出版

これも自分の常識+参考書代わり。これも1999年に改訂版が出た。

3. 一次試験(共通4科目)

(12)山根義信:山根式中小企業診断士試験短答式チェック 共通項目、日本マンパワー (1996)

中小企業診断士受験指導で有名な方が書いた有名な本。 中小企業診断士受験用の参考書を揃えるとき、この本の記述にだいぶ従った。 誤植がけっこうあるので以下示しておいた。私のもっている第6刷による。

ページ
45コンテンジェンシーコンティンジェンシー
46コンテインジェンシーコンティンジェンシー
49能力主義化能力主義下
75フィヨールファヨール
85Quality of Workig LifeQuality of Working Life
99コンティンエンシーコンティンジェンシー
102式命令系統指揮命令系統
130愚母父母
130単準単純
191捕捉補足
207遍在偏在
214アプローチして考察とアプローチして考察すると
274(専売的チャネル戦略の別名称)限定的チャネル戦略排他的チャネル戦略
288価格拘束性を待たず価格拘束性を持たず

p.274のは誤植とはいえないかもしれない。「キーワード1000」に倣うと上記のように訂正せざるをえない。

山根さんは「定義的に説明できる」というセリフが得意のようだ。

(14)中西安監修・編著:中小企業診断士試験キーワード1000 共通科目編、日本マンパワー出版(1994)

(29)中西安監修・編著:中小企業診断士試験キーワード1000 共通科目編(改訂版)、日本マンパワー出版(1999)

(14)について、今となっては古いが、キーワードをまとめるには適している本、と書いた。 と思ったら今年(1999年)の4月には、改訂版(29)が出ていたのだった。

4. 経営基本管理

(3)森本三男:経営学、放送大学教育振興会(1995)

現代の経営学が俯瞰できる。

(15)伊丹敬之、加護野忠男:ゼミナール 経営学入門、日本経済新聞社

経営についていろいろ考える材料になる。

5. 財務管理

6. 販売管理

(9)徳永豊、森博隆、井上崇通:例解マーケティングの管理と診断、同友館(1989)

中小企業診断士受験において、この本は販売管理のバイブルのように言われている。 ただ、もう古いのではないかなとも思う。本当ならばコトラーらの「マーケティング原理」でも買った方が 勉強にはいい。しかしあれは厚いし、高いからこれで十分だろう。

この本をちらちらとめくった限りでは、最初の「組織にはコンフリクトがつきもの」とか、 最後の「コンサルタントの14カ条」などが印象に残っている。

(25)独占禁止法の解説、一橋出版

コンパクトにまとまっていて、安い。それゆえか字が小さいのが難点。 おそらく高校生の教材用にでも作られているのだろうか?
ところで、この本にも、独禁法の正式名称が書いていない。そんなものだろうか?

(26)田村正紀:マーケティング論、放送大学教育振興会(1999)

ワン・ツー・ワン・マーケティングなど、現代のマーケティングにも触れられている本。
ところどころ、前近代的なセリフがあって笑ってしまった。以下引用する。

いまさら思い出したのが、SFAの F は、 Force(部隊)のことだった。

7. 労務管理

(17)労働省:労働白書(平成10年版)

カラーが多い。しかし、内容をきちんと見たことがないのでこまった。

(30)労働省:労働白書(平成11年版)

まだきちんと見ていません。

どちらの白書にも付属の CD-ROM が収められている。 気に食わないのは、ある特定の表計算ソフトのグラフ化機能を前提として 作られていることだ。

(19)日経連経済調査部編:1999年版春期労使交渉の手引き、日経連出版部

経営者側に都合がいいことばかり書いているのでは?と疑いつつ、まだその反駁点をつかんでいないので悲しい。

(20)加藤實:人事労務の法と管理、同友館(1998)、

4/5が法律、1/5がいわゆる労務管理。今回使わない労働法規が多いのを除けば、それほど悪くはない。

8. 経営情報管理

(22)小澤弘道、浅井重和、倍和博:情報経営の基礎、日刊工業新聞社(1999)

思ったより役に立っていない。記述に繰り返しが多い。

9. 生産情報システム

(23)石田俊広:新版生産情報システム、同友館(1996)

これだけのことが押さえられていれば大丈夫だろう。ちょっと工鉱業部門の生産管理のような気もするが。

10. 中小企業対策

(32)中小企業庁(編):中小企業施策総覧 平成11年版(本編)、(財)中小企業総合研究機構
(33)中小企業庁(編):中小企業施策総覧 平成11年版(資料編)、(財)中小企業総合研究機構
(46)中小企業庁(編):中小企業施策総覧 平成12年版、(財)中小企業総合研究機構

中小企業対策に関してまっ先にあげられる参考書である。いずれもA4版と大きなサイズなので、 本棚にどのようにして入れるか困る。中身は施策とその中身についてこまごま書いてある。 例年は本編と資料編の2冊が発行されていた。 本編だけでいいのかもしれないが、資料編も思い掛けないことが書いてあるので両方揃えておくといいだろう。 なお、間違いもあるので、他の参考書と一緒に活用するべきである。

なお、(32)を一所懸命勉強した方は「中小企業給食事業団」という誤植を見つけている。 私は知らなかったが、探した末2000-08-24に私も発見した。

(46)が出て8/30に手に入れた。一冊になるというのは前から聞いていたのだが、 驚いたのは平成11年版では350ページほどの本編が2000円以上したのに対し、 平成12年版は量が増えて500ページほどになったうえで1700円と少しになったことだ。 ここでも価格破壊が起きているのだろう。

平成12年版の誤植は次の通り。

ページ備考
114発堀発掘
114新商品・新設務・新技術新商品・新役務・新技術
116技術人材の資成技術人材の育成
126小規模企業設備資金助成法小規模企業等設備導入資金助成法
127公設試験研究磯関による技術支援公設試験研究機関による技術支援
127解放試験室開放試験室
130新事業開拓創出促進出資事業新事業創出促進出資事業
161メカロトロ税制メカトロ税制
209フソトウエアの開発のソフトウエアの開発の
213主務大臣の承認を受ける主務大臣の同意を得る
213都道府県知事の同意を得る都道府県知事の承認を受ける
220地方税の不均一致課税に伴う地方税の不均一課税に伴う
220施設設備事業への低利融資施設整備事業への低利融資
291本法を規制を受ける本法の規制を受ける
495ゆとりと豊さゆとりと豊かさ

中身を見ておかしい、と思ったことがある。「地域中小企業支援センター」の所在がどこにも載っていない。 都道府県中小企業支援センターや、中小企業・ベンチャー総合支援センターはある。なぜだろう。

(34)中小企業診断協会(編):中小企業の法律・施策用語小辞典(平成11年版)
(35)中小企業診断協会(編):中小企業施策の手引(平成11年版)
(41)中小企業診断協会(編):中小企業の法律・施策用語小辞典(平成12年版)
(42)中小企業診断協会(編):中小企業施策の手引(平成12年版)

(32),(33)のことばの羅列を解きほぐすための本。全体の流れは(35)や(42)でつかみ、 細かな点や不明点を(34)や(41)で 押さえるようにすればいいだろう。毎年改定される。
なお、これらの本は、まとめ方や法律の略称など、多少(32),(33)と異なる。 正確を期すためにはやはり(32)、(33)は不可欠である。

(41)には例のごとく誤植があったので、これを示す。「である」体のなかに「ですます」体が混じっているのも 取り上げたので更に多くなった。つれあいは以前校正の勉強をしていたことがあるので、 きっとこの本を見たら大喜びだろう。あんまり多かったので同友館に読者カードを送って指摘した。

ページ備考
17倒産企業に対るす倒産企業に対する
18利率が優偶されていること利率が優遇されていること
22対るす対する
22生じていると認めらる生じていると認められる
22(17)が重複している
24激甚災害貸付激甚災害等の激甚災害貸付 激甚災害等の
26国と都道府県等が強調して国と都道府県等が協調して
31中小企業信用保険公庫中小企業総合事業団
37事業を営むものに限ります事業を営むものに限る
37基本税法による特典です基本税法による特典である
38控除されます控除される
38税率は30%であるが税率は30%ですが
39なっていますなっている
46商工会義所商工会議所
49地 価税が非課税措置地価税が非課税措置
55任意グループも含まれます任意グループも含まれる
66改善を図るた めに改善を図るために
673%超える3%を超える
70中小企業近代化資金等助成法小規模企業者等設備導入資金助成制度
73課題対応新技術開発事業課題対応新技術研究開発事業註1
74地域分があります地域分がある
85充実を図ります充実を図る
89企業の技術者,専門化等企業の技術者,専門家等
93国民金融公庫国民生活金融公庫
96中小企業事業団中小企業総合事業団
97国民金融公庫国民生活金融公庫2個所ある
135リーテル・サポート・センターリテール・サポート・センター
144中小企業退職金共済事業団勤労者退職金共済機構その後事業団とあるところは機構のこと
164債権型倒産処理手続き再建型倒産処理手続き
177設備近代化資金貸付制度設備資金貸付制度
178中小企業事業団中小企業総合事業団
187中小小売振興会中小小売振興法
註1:昨年の同じ施策には「研究」の文字は入っていなかったが、今年は入っている(パンフレット参照)

あと、P.37 の「青色申告」の説明内容は、次の項目「青色申告特別控除」にすべて含まれている。無駄だ。

さらにいえば、いわゆるマル経の説明が三ケ所別々のページで解説されている。 おまけに、索引をみるとその三ケ所が別々の見出しとなっている。

小企業等経営改善資金(マル経)融資制度
小企業等経営改善貸付
小企業等経営改善資金融資制度

これにはあきれたを通り越して笑ってしまった。これだけ分かれてしまった原因を探ると、 最初が小規模企業対策で、次が国民生活金融公庫の貸付の分類として、最後が創業支援の施策として、 それぞれの側面から見た結果である。

(42)にも例のごとく誤植があったので、これを示す。 ここでは広義の誤植ということで、名称・制度の変更によるものも含めている。

ページ備考
32商工中央金庫が行う特別貸付について商工組合中央金庫が行う特別貸付について
33国と都道府県等が強調して国と都道府県等が協調して
47地下の下落傾向に伴う地価の下落傾向に伴う
55中小企業近代化資金等助成法の特例小規模企業者等設備導入資金助成法の特例
79課題対応新技術開発事業課題対応新技術研究開発事業註1
108組合などに存在もあります組合なども存在します
111施設の対する施設に対する
121貸事業場,等の施設を貸事業場等の施設を
130リーテル・サポート・センターリテール・サポート・センター
138講じられている講じられています
138推進されている推進されています
139行われている行われています
149受けたものでる受けたものです
154内整理,和議,会社更生等内整理,民事再生,会社更生等
155中小企業倒産貸付中小企業倒産対策貸付
156小規模企業等設備導入資金助成法小規模企業者等設備導入資金助成法
註1:(41)と同様。

そのほか、「あっせん」と「斡旋」、「ソフトウエア」と「ソフトウェア」など、表現のゆれがある。

(36)TBC 研究会(編):中小企業診断士2次試験 中小企業対策の完全攻略 '99年版 法学書院
(38)中小企業対策マテリアルズ、日本マンパワー

中小企業対策の200字と600字の模範答案を列挙した本。どちらを選んでもいいと思う。 私は出たのが早いというだけの理由から、前者で勉強した。確か前者は8月半ばには出ていたのに対し、 後者が出たのは8月終わりだった。正確度と量の充実さは後者が高いように思う。

(44)TBC 研究会(編): 中小企業診断士2次試験 中小企業対策の完全攻略 2000年版 法学書院

8 月 9 日あたりに手に入れた。まずは恒例の誤植探しです。

ページ備考
7およびどう資料編および同資料編
32抽出の角度を高める抽出の確度を高める
106主要商工会議主要商工会議所
118特別貸付を平成13年特別貸付は平成13年
134産業活力の再生すること産業活力を再生すること
134事業再構築計を主務大臣の認定を事業再構築計画が主務大臣の認定を註3
139現在の勤務先とと同一業種現在の勤務先と同一業種
149大規模実証実験に対し大規模実証実験事業に対し註1
150全国中小企団体全国中小企業団体
152(解答例が前ページのそれと同じ)(本ページのキーワードの整理を使う)
202事情について通睦している事情について通暁している
204目的した目的とした註2
204特別小口保険ついて特別小口保険について註2
205中小企業倒産防止法中小企業倒産防止共済法註3
註1:200字を超える。 註2:両方を直すと200字を超える。 註3:ワンポイント・アドバイスの部分。

なお、この本の誤植に関しては、 著者である TBC 研究会のホームページでも扱われている。 掲示板から「専任講師からのお知らせ」だったかな。私の指摘と重複しているのはほとんどない。 私のは字面でわかる程度のである。

なお、ここのグループの方々から、 p.124:与件予見、p.206:債権型再建型 という指摘があったことを付記する。

(45)中小企業庁(編): 新中小企業基本法 同友館

中小企業基本法が生まれたのは昭和 38 年と聞いている。前後して東京オリンピックが開かれたり、 東海道新幹線が開通したりした。何を隠そう、私が生まれたのも昭和 38 年であり、 植木等が「無責任一代男」を歌って大ヒットしたのもこの年だったはずだ。 そのため私は大の無責任男になってしまった。

とこんなことを書いたが大して理由があるわけではない。今までの中小企業をなんだかんだで 見下げておいていまさら持ち上げるのも面映いものだ。その印象を与えているのはあちことで出てくる 外来語である。曰くセーフティネット、曰くイコールフッティング。日本語には訳しにくいことばも あるのだろうけれど、しっかりしちくり。以下私案を示す。

セーフティネット
安全網でいい。高所作業をしている人ならむしろ安全帯のほうがピンと来るかもしれない。
イコールフッティング
私は最適化理論を少しかじっていたから、「イコールフィッティング」の誤植かと最初思った。 つれあいに聞いたり辞書を調べたりしたら、be on a equal footing with で「同じ基盤で」とか 「対等な立場で」という意味であることがわかった。だから「市場における競争条件のイコール・ フッティングが確保される」という文なら「市場において競争条件である公平性・対等性が確保される」 とでもすればいいのに。
メルクマール
手がかりとなる基準、目印。
フロントランナー
先頭走者

この他にも数多くの外来語がある。なぜこんなに多いのかと思ったら、第2章が条文の解説なもんだから その反動が第1章や第3章にきたのだろう。第2章には相変わらず、 「蓋然性」、「平仄を合わせる」、「個々の経営の賦存状況に応じて」なんていう 表現がそこかしこにある。賦存ということばは広辞苑にもないぞ。

ついでに、この本は中小企業庁や同友館が出した本にしては誤植がえらく少ない。 次はまれな例であった。

ページ
61新事業開拓助成金公布事業新事業開拓助成金交付事業

それから、p.116 で、技術に関する各種支援機関に国立研究機関が提示されている。 その後の文章で「国研」と2回、略して登場しているが、 それなら最初に国立研究機関(国研)として略称を示しておくべきではないのか。 公設試験研究機関(公設試)としているのに。

11. 二次診断事例

(31)2次試験用中小企業診断士試験(平成11年度版)同友館(1999)
(37)中小企業診断士二次 診断事例情報合格対策 経林書房

これらは、ほとんど手をつけなかった。中小企業対策に時間を取られたためである。 後程じっくり噛み締めようと思う。

(39)静岡情報戦略研究会(編):中小企業診断士2次試験診断事例の徹底マスター、法学書院
まずは恒例の誤植探しから。
ページ
135(3351.77)・In(X)(3351.77)・ln( X)
145ウォールセラーホールセラー
196Direct MaleDirect Mail
280標準化されているだけでなく標準化されていないだけでなく
358永年の感永年の勘
372貢献ながら貢献しながら
372活用され実績はない活用された実績はない

135ページの誤植はわかりにくい。誤りは大文字のI(アイ)に小文字のnを使っているが、 正しくは小文字のl(エル)に小文字のnである。対数はロガリズムだからだ。

ついでにこのページの食料品の推計式に疑問がある。決定係数が高い(1に近い)ものを採用する、とある。 この場合はべき乗回帰が採用されている。しかし、これはモデルを考える立場からすると気になる。 べき乗を採用する合理的な根拠があるのかどうか、わからないからだ。これならまだグラフを 視察によって外挿するほうがましだ。

誤植というほどではないが、"inter-net", "Ether-net"の表記も気になる。これらは一語で"Internet", "Ethernet"と 表記されるのが普通だ。

また、telnetを「他のコンピュータに侵入する技術」と紹介しているのはひっかかる。 telnet は侵入という悪い概念は持たない。他のコンピュータを使う正規のプロトコルである。

さらにもう一つ、生産の評価に QCD ということばをよく使う。QはQuality, CはCostである。 DをDay としているが、普通は Delivery の意味だと言われる。もっとも、中身は同じ、 納期のことである。

ほかの「ガイダンス編」などは参考になる。しかし、情報はなまものである。 新しい事例は受験生の側で用意しなければならない。

(40)中小企業診断士2次試験まるかじり、TAC出版

誤植がけっこうみつかった。1995年初版による。

ページ
47重要は決定は重要な決定は
61マーケテインクマーケティング
63納期解答納期回答
67期間業務基幹業務
68出庫表出庫票
76他品種多品種
81方針明確にする方針を明確にする
137エロクトロニクス化エレクトロニクス化
149それぞれ(1),(2),(3)の「ができること」のすぐあとに「。」がない 「。」付加
149QC活動と取り入れる等によりQC活動を取り入れる等により
158作業票活用し作業票を活用し
173膨大の試験範囲膨大な試験範囲
174勉強方勉強法(あるいは勉強方法)
175他の受験生との差別か他の受験生との差別化
175短期館短期間
181ご検討を祈りますご健闘を祈ります

他に危ないものがある。たとえば、 プロセスを抑えて効果的に(p.166)は「押さえて」と書くのが普通だろう。 また、p.37には技術アセスとあるが、アセスメントと省略しないで書くのがいいと思う。
だいたい、事例3の工業ケースはその1がない。

また気になったのは、問題文に「どんどん」、「たまに」、「アクションに結びつけてる」など、舌足らずな表現が 見うけられることである。見方を変えれば、自分で問題を作りなさいという配慮なのかもしれない。

この本のいいところは、正解例を示したあとで、「このような解答ではこのような理由で 正しくない」という基準を示していることである。 誤った例を通して学ぶのは必要なことであるが,理由はおろか、 誤った例さえ示していない本も多い。次の(37)が、その悪い例である。

(37)中小企業診断士二次 診断事例情報合格対策 経林書房

これは平成6年度から平成8年度の過去3年間の試験が記載され、解説されている。 心構えや事前準備、当日の対策など、なるほどと感心するところがある。 その一方で、解説文の中には日本語として体をなしていない 記述が散見される。(もちろん自分の文章は棚に上げて!)
<例1>
34ページ:『工業ケースということから、製造業に関する知識、特に生産管理の知識の深度化が必要とされる。』
「深度化」ということばは日本語にはない。『生産管理に関する深い知識が必要である』で十分。
<例2>
77ページ:『再度全社的観点でパッケージソフトの手直しを行い、 オフコン内の売上情報から財務管理へ渡せるようにする』
後半は舌足らずだ。『オフコン内の売上情報を(直接)財務管理の入力データとして渡せるようにする』

12. まとめ

これらの本を揃えたら約5万円弱かかりました。

まりんきょ学問所中小企業診断士 > 参考書(旧制度による分類)


MARUYAMA Satosi