参考書(新制度による分類)

作成日:2000-12-10
最終更新日:

中小企業診断士(休止中)勉強のための教科書や参考書、実務書を、新制度により分類した。 これらは中小企業診断士受験を必ずしも意図していない本もある。 また、これらの本を必ずしも推薦するものではない。


主参考書

経済学・経済理論

伊藤元重:入門 経済学、日本評論社

ですます調でとっつきやすい。しかも、問題がどこかもはっきりと示されている。 惜しむらくは、かなり以前に書かれたものであるため、 最近の経済についての動向がつかめない点だろう。 経済学の本の宿命ともいえる。

助言能力

池見酉次郎、杉田峰康:セルフ・コントロール、創元社

カウンセリングの基礎理論として、TA (トランザクショナル・アナリシス)が「企業診断」で 紹介されている。この TA は日本語では「交流分析」と訳されているが、 厳密に言えば TA と交流分析は同じではない。 池見らはこの本で「交流分析」を、TA で重視する対話だけでなく、沈黙をも含めた、 全人格的なふれあいを意味する「交流」の分析であることを提唱している。この本では、 多くの例をあげつつ、自己の分析をどのように行なうかを表している。 そしてこの分析は自己のみならず、助言にあたっての依頼者の分析においても有効であろう。

(社)中小企業診断協会 編:コンサルティング・コーチング、同友館(2001)

二人の中小企業診断士(黒須靖史氏、米澤実弥子氏)によって書かれた、 コーチングスキルを身につけさせる必要性を説いた本。 指導をするという立場から、自己の気付きによる解決を補助するという立場への転換は、 思ったより難しいだろう。 「拡大質問」、「未来質問」を何のわだかまりもなく素直に訊くことができるまでには、 私自身に関していえば修行が必要だと感じる。

企業経営理論

旧科目の「経営基本管理」、「販売管理」、「労務管理」を合わせた分野と理解しています。

徳永豊、森博隆、井上崇通:例解マーケティングの管理と診断、同友館(1989)

中小企業診断士受験において、この本は販売管理のバイブルのように言われている。 ただ、もう古いのではないかなとも思う。 本当ならばコトラーらの「マーケティング原理」でも買った方が 勉強にはいい。しかしあれは厚いし、高いからこれで十分だろう。

この本をちらちらとめくった限りでは、最初の「組織にはコンフリクトがつきもの」とか、 最後の「コンサルタントの14カ条」などが印象に残っている。 最近改訂版が出ている。

財務・会計

アクト経理研究グループ:経理の仕事が面白いほどわかる本、中経出版(1993)

見開き右ページに解説が、左ページに図表があり、配置がすっきりしている。 わかりやすくできているといえる。 このグループの構成員はすべて中小企業診断士であるので、考え方を知る意味でもいいだろう。 そのためか、言い回しに診断士固有の表現が見られる。 「会社から部門別管理へと深度化させる」という表現が出てくるわけだ。

私でも面白いほどわかる決算書(別冊宝島 625 号)、宝島社

「読む人 社長、読まない人 リストラ」の宣伝文句に思わずビビって買ってしまった (ちなみに買ったのは実務補習中のことである)。 もちろん、このくらいのことを理解しなければ診断士の一次試験も通らないのだが、 経理も財務もまるで知らない、つまり当初の私のような初心者にはお勧めできる。

経営法務

これに関する本は全くもっていない。企業診断のある号では、経営法務を勉強するには、 書店で一般に見られる「事業を始める人のために」のような薄い本や、 資本関係、金融関係、各法律についての「薄い基本書」で十分とある。また、 司法試験予備校が出しているテキストの中に優れたものがある、とも書かれている。 かろうじて持っているのは次の本だけだ。

独占禁止法の解説、一橋出版

コンパクトにまとまっていて、安い。それゆえか字が小さいのが難点。 おそらく高校生の教材用にでも作られているのだろうか?
ところで、この本にも、独禁法の正式名称が書いていない。そんなものだろうか?


経営情報管理

小澤弘道、浅井重和、倍和博:情報経営の基礎、日刊工業新聞社(1999)

思ったより役に立っていない。記述に繰り返しが多い。

木村博光、高島利尚(編著):IT ソリューション−戦略的情報化に向けて、同友館(2000)

中小企業診断士 Y さんの勧めで買った。IT に関して経営の観点からまとめた本であれば 別にほかの本でもよかったのだが、人の勧めというのはこういうときにはありがたい。

でいろいろ文句をつける。まず腰巻きの文句が気に入らない。 「経営戦略の次元から IT の課題を解き明かす」 これはいい。その下はどうだ。 「次の資格をめざす人、必読!!」 とあり、その下に 「IT コーディネータ、経営コンサルタント、 中小企業診断士、情報技術者 etc 」となっている。 なんか、ただの受験参考書に自らを貶めているようではないか。 ちなみに、IT コーディネータと中小企業診断士は試験に合格し、 所定の実習(講習)を必要とする資格である。 一方、経営コンサルタントや情報技術者はそんな試験はない (経済産業省が行なう試験は「情報処理技術者」である)。 経営コンサルタントは、資格ではない。実力である。できるやつができる。それだけである。

次に内容を見てみた。編者含めて16人もの人々が執筆しており、内容の疎密が少しある。 たとえば、バランススコアカードの記述がある。これは、p.40 と p.70 にあり、 半数程度は内容が重複している。もっと絞り込めたはずだ。

重複した記述は他にもある。p.9 と p.18 、組織文化変革へのポイントである。 これは全くコピーアンドペーストではないか。コンピュータプログラミングではないが、 "Never Repeat Itself."である。こんなことが随所に表れていては、 中小企業診断士は本の記述を水増ししたといって嫌われる。 ちなみに、著者 16 人はすべて中小企業診断士であることを付記する。

あと、お決まりであるが、誤植表をかかげる。

誤植表
ページ参考
13セキュリテイセキュリティ
13強調作業協調作業
22重要戦略課題の確重要戦略課題の確認図表1-2-2
25TCOコンソーシアンTCOコンソーシアム図表1-3-1
27全社WNA/LANシステム全社WAN/LANシステム
61バージョアップバージョンアップ
219短時間でかどうがかのうなもの短時間で稼動が可能なもの
303フィードフォアワード型原価管理フィ−ドフォワ−ド型原価管理
318(図表 6 - 2 - 4 脚注が途中切れている)
327VM:Vurtual MachineVM:Virtual Machine

運営管理

石田俊広:新版生産情報システム、同友館(1996)

これだけのことが押さえられていれば大丈夫だろう。 ちょっと工鉱業部門の生産管理のような気もするが。 2001 年に新訂2版が出た(未見)。

パコ・アンダーヒル:なぜこの店で買ってしまうのか、早川書房(2001)

騙される、というところまではないけれど、つい買ってしまうというのはよくあること。 それを見事に暴いてしまっている。しかし、この本に書いてある程度の各種の戦術 をいろいろやっても売り上げが改善しなければ、よほどその商店街なり店なり業種なりの 活力がないということになる。それがわかるのが、こわいことだ。

それにしても、なぜ早川書房はすぐ「翻訳権独占」て書きたがるのだろう。 これで退いてしまう人はいないのだろうか。

もうひとつ、カバーの紙の質がおもしろい。こういう紙をなんといったのだろうか。 つい持ってみたくなる。

中小企業経営・中小企業政策

中小企業庁(編):中小企業白書

中小企業白書のページを御覧ください。

中小企業庁(編) 新中小企業基本法 同友館

中小企業庁が存在する意義を確認するにはいい本である。


副読本

こちらは特に教科別に挙げることをせず、順不同に並べている。お門違いと怒るなかれ。 日誌に挙げた本もここに入れた。

ケネス・J・クック「中小企業のための戦略計画」同友館

中小企業診断士2次試験の問題を、 すべてこの本のワークシートの枠組みでまとめられるだろうか。 そのように思ったほど、よく目配りがなされている。

小野修一、鈴木実、松枝憲司、渡辺和宣:図解でわかる部門の仕事 情報システム部、日本能率協会マネジメントセンター

情報システムの今日の業務と問題点を要領よく説明している。 若干突っ込んでほしいところもあるが (たとえばプロジェクトマネジメントにおける ISO 10006 、2000 年改訂 ISO 9000など)、 及第点といったところだろう。 わたしもいざとなったとき(どういうときだ?) この本を頼りにすることがよくあり、 そのたびに役に立っている。

見開きで主な内容を説明しているのはいいアイディアだ。 しかし、致命的な欠点がある。索引がないことだ。 索引がない本は読み捨てにされる可能性が極めて高い。もったいない。

最後に、誤植を少しあげておきます。

ページ
89コサルタントコンサルタント
112バランス考慮したバランスを考慮した
117パーフォマンスパフォーマンス

櫻井通晴[編著]:企業価値を創造する3つのツール EVA®・ABC・BSC 中央経済社(2002)

表題で説明されている3種類の考え方についてその特徴と利点・欠点を解説し、 最後にこれらの統合の可能性、 企業特性によるこれらの採用の可否について論述している。 まず、これらの道具について簡単に説明する。

EVA®
Economic Value Animal の略ではなく、Economic Value Added の略。 経済的付加価値と略される。 スターン・スチュワート(Stern Stewart)社によって開発され登録商標になっている (以下®印は省略する)。 企業価値を表す尺度であり、「残余利益(または営業利益)から資本の利用に対する費用 (資本コスト)を差し引いたもの」として定義される。
ABC
Activity Based Costing の略。活動基準原価計算と略される。1980 年代後半、 キャプランとクーパーが考案した。 「活動、資源および原価計算対象の原価と業績を測定する方法」である。
BSC
Balanced Scorecard の略。日本語では適当な訳がないためか、 そのままバランスト・スコアカード(あるいはバランス・スコアカード)と呼ばれる。 キャプランとノートンが提唱した。企業の戦略的な目標がいかに達成されたかを評価する。 なお、キャプランは ABC の提唱者でもある。

さて、本書を概観する限り、ABC については単独ではあまり重きが置かれていない。 これには、他の2つの考え方をより詳細に説明したい意向と、 ABC は導入されていて当然とする意向の2つがあると思われる。

ついで、EVA についてはかなりのページ数を割いて説明されている。 EVA にいちいち®印が記されていてうっとうしいほどだ。 そして説明の多くは、 従来型の企業価値評価尺度とEVA を採用した場合の尺度の差違に割かれている。 確かに、従来型の絶対量で計られる尺度よりは、 株主や利害関係者の価値判断が多く入った尺度が望ましいだろう。 しかし、著者らは一方で「日本の上場企業の約 1/4 の EVA が赤字とされている」 という結果を引用し、これらの企業が EVA を導入することは 「経営者のモチベーションを低下させることになろう」と結論付けている。 では、EVA を黒字にするにはどのようにすればよいか。その解は本書にはない。

私の意見では、EVA を黒字にするには ABC を使えばいい、ということである。 しかし、ABC と EVA の連携について述べられているのは本書の p.219 だけである。 そこでは、ABC を用いることで EVA に対する信頼性が増すということしか述べられていない。 実務に適用するには物足りなく思う。

BSC についていえば、視点の一つである財務の視点について、 これを信頼あるものにするのが ABC であり、EVA であるという。 したがって、EVA がしっかりできなければ BSC も意味がないのではないか。 しかし、その EVA も赤字であれば導入は望ましくないとされる。 結果的に、ABC から入らなければならない。 EVA も BSC もその後であるというのが私の見方である。 しかし、繰り返しになるが、その ABC に関する記述が少ない。 まだまだ足元を固めないといけないのだろう。

最後に誤植を。p.207 、後ろから3行目の「俗人的」は、正しくは「属人的」である。 そして、文のねじれを指摘しておく。p.225 の第2行からの文がおかしい。 「ABC の日本企業への導入に努力してきた者として日本で最も必要とされるのは、 硬直化した典型的な日本企業では ABC の導入に成功しても、 昇進や業績評価が年功や学歴で評価される日本企業では、正当な評価を受けないし、 仮に失敗すれば二度と立ち上がれない組織風土があることを痛感してきた。」 いいたいことはわかるが、それなら次のように直すべきだろう。 「硬直化した典型的な日本企業では、 ABC の導入に成功しても、 昇進や業績評価が年功や学歴で評価されるため、従業員は正当な評価を受けられない。 また、失敗すれば二度と立ち上がれない。そのような組織風土があることを痛感してきた」 そうすると最初の一節の情報が失われるが、それはあらずもがなの情報である。

Eliyahu M. Goldratt:Necessary But Not Sufficient

私はこの本を半年かけて読んだ。しかし、わからなかった。思ったことは、 「Eliyahu という名前からしてユダヤ系か、 そういえばエリアフ・インバルという指揮者は今はどうしているだろうか」 ということだけだった。 ところが、この本を読んでいる人が日本にたくさんいることを知った。 しかも、その中には書評をしている人までいた。 もちろん、中には読んだことだけをインターネット上で言っている人もいたが、 その人も面白くて一気に読んでしまったという。 たぶんその人も読んで理解しているのだろう。なぜ、私だけがわからないのか不安に思った。 しかし、あるときその不安が解消した。 考えた結果、次の3点に思いあたったからだ。

  1. 私は英語版を読んでいる
  2. 私は英語が苦手だ
  3. 大多数の日本人は日本語が読める

まず、私が英語の本を読んだ証拠としては、 "Technology is necessary, but not sufficient."という一節が211ページに出てきたことを 挙げる。そういえば、"Change the rule."という一節もどこかにあったような気がするが、 メモを取るのを忘れてしまった。

第2には、私はまるで英語を理解していないということがある。 ところどころに、"baloney" ということばがあり、辞書を引くと「ボローニャソーセージ、 ばか者」という語義があった。私はこれを見て、「ボローニャソーセージはおいしいのだろうか、 ばか者という表現は地域差別にならないのだろうか」ということばかり心配していた。

第3には、わかる人というのは日本人であり、 この人たちは日本語に訳された本書を読んでいたということに気付いた。 邦訳は「ザ・ゴール3 チェンジ・ザ・ルール」 であると思われる。断定しなかったのは、私はその訳書を読んでいないこと、 また邦訳の題が本書の直訳ではないからである。

なおもう一つ、私は日本語版を持っていない、という問題もある。 なぜかというと、金がもったいないからである。 なぜ英語版があるかというと、 それがたまたま勤務先にあったからである。

あらすじについては、インターネットで紹介されている。 それで、私の足りない頭で読んだ限りは、 「うまくいったようでも、まだまだ不満なところがあるだろうな」 というものである。実際、最後は「終わりの始まり」と書かれている。 そして、ソフトウェアに携わっているある方が、 冷めた印象を持っていることが印象に残っている。


雑誌、新聞、その他時事資料

以下の情報源を利用していた。
  1. 埼玉新聞 毎日新聞 東京新聞
  2. 週刊金曜日(雑誌)
  3. クローズアップ現代(NHKテレビ)
  4. 放送大学(テレビ、ラジオ)
  5. ビジネスズームアップ(TBS テレビ) 企業未来!チャレンジ 21 (テレビ東京、毎週土曜日:午前6時30分〜6時45分)
  6. ワザあり日本の旅 (テレビ東京、毎週土曜日:午前11時00分〜11時30分)
  7. 企業診断(雑誌)

中小企業診断士の勉強には必ず日本経済新聞が役に立つという。 しかし、私は購読をしていない。 なぜかというと、あの膨大な株価欄が私には役に立たないからだ。 それに、私にとって日経新聞を購読することは、 日本は経済ばかり突出してしまったということを暗に認めてしまうことだ。 だいたい、私の履歴書なんて、ほとんどが成功者の物語ではないか (清水義範の「私の利溺書」には笑ってしまった)。 以上が私が購読していない理由だ。 しかし、朝の混雑通勤時に他人の迷惑を顧みず無理に日本経済新聞を読んでいる人が近くにいれば、 ありがたく読んでいたこともまた事実である。

その他、日経**(**にはビジネス、コンピュータ、情報ストラテジー、 オープンシステム システム構築 SYSTEMS などが入る)を 勤務先で読む程度だった。

それから、二次で浪人生となったあと、同友館の「企業診断」を毎月購入することにした。 二次合格、診断士資格取得のあとも、購入は続けていたが、中小企業診断士休止を機に購入を中止した。

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MARUYAMA Satosi