泌尿器科医・木村明の日記


広告費についての統計学的考察


年間15人しか前立腺癌で死亡していない都筑区で50歳以上の男性をすべて検診すると前立腺癌が250人見つかってしまう

250人すべてを治療することにより、15人全員を死亡しないようにすることができるとしても、

1人の前立腺癌死を減らすために17人治療しなければならなくなる、

これはThe New England Journal of Medicineの3月26日号に出た欧州の論文の「1人の前立腺癌死を減らすために48人余計に治療」と符合する、

なんて言ってはいけません。一昨日のPSA検診で見つかる予想患者数と死亡患者数の解離についてに書いたように、私のは数字の遊びに過ぎません。

突っ込みどころもいっぱいです。

こういった数字遊びは、広告費にいくら投資するか、の判断材料ぐらいまでにしておくべきでしょう。

あるミニコミは横浜市都筑区全域(但し南部の一部地域を除く)及び川崎市宮前区有馬6~9丁目に66,600部配布されます。

このミニコミ誌の半ページを使って、「日帰り前立腺生検150例の実績。超音波医学会指導医」という広告を出すとします。

当院に来てほしい患者さんは、PSA検診を受けて4以上だったが怖くて病院に行っていない人。

生検が必要かどうか、超音波で判定しますし、必要な場合にも日帰りで行いますから怖がる必要はまったくありません。

都筑区には50歳以上の男性が25000人います。平成16年にPSA検診を受けたのは横浜市全体では5.6%なので、

都筑区では25000x0.056=1400人がPSA検診を受けていることになります。そして160人が異常値が出ているが、そのうち110人が2次検診の結果が不明、つまり、2次検診を受けていない可能性があります。

110人がこのミニコミ誌を見て当院に来てくだされば、宣伝費は安いものです。

このミニコミ誌のホームページには新聞折込チラシよりはるかに安い費用としか書かれていないので、額は書きませんが。

このミニコミ誌に書かせていただいた膀胱炎の記事が、「青葉区 膀胱炎」でググっても、「都筑区 膀胱炎」でググっても上位に出てきます。

ミニコミ誌に記事を載せて私のホームページで2次利用。

次回はこのミニコミ誌に広告を出そうかなあ、なんて考えています。

息子も都筑区に引っ越して来たことだし、このミニコミ誌の感想を聞かせてもらいましょう。
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