北海道大遠征Part3

   2005年8月10日(夜)〜17日

コース:
1日目:八甲田山
2日目:ペケレベツ岳(日勝峠)
3日目:トムラウシ山(トムラウシ温泉短縮コース往復)
4日目:赤岳(大雪山)
5日目:表大雪縦走(黒岳〜旭岳)


  お盆の時期に合わせた北海道大遠征の第3回。前回からは5年ぶりの大遠征である。
5日間連続で山を歩く強行軍であり、今回のメインがトムラウシの日帰り往復であるため、5月末の袈裟丸山から7月の会津駒、和賀岳まで私としては随分長いコースタイムの山行を重ねてきた。

  何とか足慣らしの方は出来たかなという感じだが、7月からは仕事の書き入れ時、普段の2倍近い仕事量に追われ、相変わらず予測のできない父の動向にヒヤヒヤしながら、本当に参加できるかどうか直前まで確信が持てず、精神的にはかなり追い込まれていた。

  不安なままに荷造りをし、背中の小さめザックに両手の小荷物といういでたちで、集合場所で今回の精鋭(?)メンバーと顔合わせして初めて、ああ本当に北海道へ行けるのだ、と実感した。

  さて、北海道といっても飛行機でホイっと飛んでいくのではなく、毎度お馴染みのマイクロバスによる陸路の遠征。(大型バスでは登山口まで入れないため。)
前の2回は新潟からフェリーで小樽、帰りもフェリーで室蘭から大洗着というルートだったが、今回は東北道を北上し、夜行明けで八甲田、八戸港を夜出るフェリーで苫小牧港早朝着、北海道に上陸後は大雪山系へ移動途中のペケレベツ岳に寄り、いよいよ3日目に大本命のトムラウシ。

  その翌日は疲労を考えて、アップダウンが少なくお花畑を歩く赤岳コース、最終日にはロープウェイを活用して大雪山を縦走するという、非常によく考え抜かれた、しかし過酷な大遠征である。

今回の第一の目的は何と言ってもトムラウシ登頂であり、それゆえ『体調不良時は決して皆に迷惑をかけないよう。(行くか戻るかは)早目の判断を!』というリーダーの厳命もあって、そのプレッシャーたるや、相当なものである。
20名を越える中高年のパーティーゆえ、余裕を見て行動時間は12時間程度を予定しているが、果たして私がこの山行に耐えられるのか、歩き出すまで大きな疑問符がついて回ることになった。

  通路まで占領した大荷物を積み込んで、マイクロバスは、集合時間を勘違いしたS氏のギリギリ・セーフというハプニングはあったものの、ほぼ定刻に走り出し、東北道を一路北上。

順調に走り続け(私もエアクッションやら腰枕やらの長距離対策もばっちりで、結構よく眠り)、朝5:40には津軽SAに到着。
寝ている間に青森県まで来たのだ。いよいよ大遠征が始まったんだなあと実感。
ここで身支度を整え、高速を降りて八甲田山に向かう。

  そういえば、前回来た時は母も一緒で、まだ大きな雪渓が道を塞いで、ルート探しで苦労したっけ。
赤岳まで行ったが、ガスの中、強風で吹き飛ばされそうだったなあ・・・。

そんなことを思い出しながら酸ヶ湯に到着。何となく一度登っているし、「トムラウシ12時間」という言葉が絶えず頭にあるので、八甲田周回コースで6時間余り、と聞いても「ふ〜ん。まあ楽勝かな。」
・・・根拠のない自信である。

  地獄湯沢〜八甲田大岳〜毛無岱〜酸ヶ湯という周回コースを駐車場の奥の登山口から歩き出す。
暫くはよく整備された樹林帯の中を歩き、ツルリンドウの蕾などを見ながら進む。
体調もよく、天気も良い。

  花を左右の足元に探しながら歩を進めると、そのうち視界が開け、硫黄臭のする地獄湯沢に沿ってザレ地を行くことになる。

ここを抜けるとまた植物が見られ、すぐに八甲田清水を味わえる仙人岱に至る。
湿原の花は盛りを過ぎているとはいえ、ウサギギク、ウメバチソウ、ハクサンチドリ、キンコウカ、ヨツバシオガマ、チングルマなど。
勿論、カメラ部隊も出動で、冷たい水を飲みながらの大休止となる。
今日は夜遅くフェリーに乗るだけなので、焦る必要は全く無く、本当に余裕の山行である。

  目の前には八甲田大岳がそびえ立ち、なかなかの眺望である。

      

モウセンゴケのかわいい白い花が沢山さいている。

    
  モウセンゴケの花
    
  ミヤマ・リンドウ
    
  ウメバチソウ
    
  ハクサンチドリ

  十分堪能してから歩き出すと、今度は流れの上を木道で越えていく。ここでも沢山の花が目を楽しませてくれる。
またしても撮影タイム。ゆとりの山行は、嬉しいものだ。

十分水辺の花々を楽しむと、この先は砂礫の斜面を頂上目指して登るだけである。

さあ、と気合を入れなおしてカンカン照りのザレ地を登って行く。

といっても実際にはそれほどでもなく、時々振り返って大展望を楽しみながら歩いて行くと、八甲田大岳山頂に至る。
ここで昼食タイム。

山頂より赤岳方面を望む
  山頂にはイワギキョウが並んで咲いている。視界良好、気分よく思い思いに陣取ってお弁当を食べていると、あれ?・・・
視界の端を何かがゆっくりこちらに向かって歩いて来る。
え?猫?・・・と思ってよく見ると、ウサギではないか。

  何とロープの向こうの草原からやってきて、こちらへ入ってくるではないか。

「あ、ウサギ、ウサギ!」と皆に声を掛けると、その声に驚いて、今度はピョンピョン跳ねながら、また草地の向こうへ帰って行った。

グレーで小さな体のウサギだった。登山者の食べ物でも狙っていたのだろうか。
かわいい訪問者に気をよくして、今度は一気の下りである。


  滑るので慎重に足を進めながらも、コイチヨウランやミヤマフタバランなどを見つけながら降りて行く。

小さな不思議な形をした花が咲いていたが、後で調べるとこれは「アリドオシラン」だった。
地面を這うような小さな白い花である。

ミヤマ・フタバランなどは、余りに地味なため、列が渋滞した時にふと目をやると咲いている、という具合だ。これが、と名を挙げても殆ど関心を持たれないのは生き延びるためには幸いかもしれない。


アリドオシラン

そんなことを考えている間に立派な避難小屋の前に出る。ここで小休止。
この先は毛無岱、広い湿原が待っているのだ。
どんな花が咲いているだろうか。
    

  目の前に広がっていたのは、黄色い絨毯。
それは見事なキンコウカだった。

  
キンコウカ  
    
  コバノギボウシ
  
  コバノ
  トンボソウ?
      

毛無岱の池塘

湿原はキンコウカの他にも咲いているが、水が多い場所にはコバノギボウシが綺麗な紫色を見せ、
さらに、湿原からニョキニョキ伸びているみどりのランは、コバノトンボソウ?
沢山の花を数えながらルンルンと降りていく。
湿原はまだまだ続く。急な階段状の木道を下りていくとまた広い世界が待っている。ここも見事な池塘である。

夏休みの百名山といっても平日だと案外登山者は少なめ。団体は私たちだけのようだ。
随所に休憩できる場所も作られているので、休憩にはもってこいである。

  後は下るだけとあって、みんなとおしゃべりしながら降りていくと、そのうち酸ヶ湯の大きな屋根が眼下に見えてくる。
朝7:10からのんびり歩いて13:40下山。

本日の温泉は、この酸ヶ湯。酸ヶ湯といえば有名な「千人風呂」。しかしこれは混浴である。
この建物の奥に「玉の湯」という男女別の内湯もあるそうで、勇気ある女性数名を除いてはみんなこちらに直行。600円なり。
歴史を感じさせる建物に上がって、客室が並ぶ廊下のずっと奥の二階にあるのがこの「玉の湯」。ここは、非常に狭く、脱衣所は本当に狭い上に押し合いへしあいの大混乱。うわ〜大変。

やっとの思いで、汗でへばりつく服を脱いで浴室に入るとやっぱり狭い。しかし、お湯は確かにいい感じ。(千人風呂とは泉質が違うらしい。)
汗を流してほっとして・・・と言いたいところだが、その汗が引かないうちにまた大混雑の脱衣所で悪戦苦闘して、やっとの思いで廊下に出る。
玄関口近くまで来ると、自販機で買ったジュースが美味しい。廊下の隅に座って流し込む。そろそろ出てきたみんなも揃った。
聞くところに依れば、千人風呂は意外と狭く、さらには湯気も全くないので入ってくる女性は身の置き所が無いとか。バスタオルを巻いて入るしかなさそうだ。(どうしても入るなら冬がお勧めらしい。)
それに、入ってもせいぜい100人。看板に偽りあり、との声も。



十和田湖・子ノ口にて

  さて、本日の日程を無事消化したので、またご機嫌よくバスに乗って、フェリーまでの時間をちょっとした観光にあてる。
奥入瀬渓谷に沿ってバスを走らせ、銚子大滝を見学し、子ノ口まで行って、十和田湖をちらっと見る。
私は奥入瀬も十和田湖も初めて。道路に沿って豊かな水量の流れを見る。
十和田湖ではフェリーが戻ってきたところだった。

また往路を戻り、八戸のフェリーターミナルに向かう。夕飯はターミナルの食堂にて。結構ホッケが美味しかったらしい。 乗船すると、団体用の一室が与えられ、ほっとする。毛布を300円で借りて正解。夜中に冷房が効きすぎて冷えてきた。干しておいたタオルもバリバリに乾いている。
手足を伸ばして寝るだけでも有難い、と思う間もなく夜行の疲れで眠りに落ちる・・・。

ペケレベツ岳に続く→


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