トムラウシ山   2005年8月13日

コース:トムラウシ温泉短縮コース往復(日帰り)
短縮登山口4:22〜4:44温泉コース分岐4:50〜5:40カムイ天上5:50〜5:52 旧道合流点〜7:03コマドリ沢下降点〜7:30コマドリ沢出合7:40〜8:45前トム平8:55〜9:10大きな岩場〜9:30トムラウシ公園9:42〜南沼分岐〜11:07トムラウシ山手前11:24〜11:32山頂11:42〜12:57トムラウシ公園13:10〜14:24コマドリ沢14:35〜16:05カムイ天上16:18〜16:53温泉コース分岐〜17:15短縮登山口


トムラウシ温泉国民宿舎「東大雪荘」を午前3時45分に出発。あたりはまだ暗いが、林道を走っているうちにどんどん明るくなってくる。いよいよ、との思いが胸によぎる。
短縮コース登山口に4:20着。駐車場の広さは勿論、既に停まっている車の数にも驚く。さすがは百名山。

今回、メンバーの平均年齢は△△歳を切っているそうだが、体力・気力年齢で−10歳は軽いと見た。何と言ってもベテラン・健脚揃いの精鋭22名、チームワークで目指せ、全員登頂!

さて、予習では田植えのような泥濘、と聞いてスパッツをつけて歩き出すが、足元はしっかりしている。22分で温泉コースに合流。体温調節タイムとなる。

「トムラウシ山→8.5km」
が、ここでまずここでまず先制パンチ。「短縮登山口0.7km, トムラウシ山8.5キロ」・・・はあ、今日は片道9.2キロかあ。・・・ため息をひとつ。
いやいや、コースタイムの単純合計だけで10時間なのだから、元より覚悟の上であるが、これは大変な所にきちゃったな、と改めて実感。

このあたりはまだまだ道も広く平坦に近い。コイチヤクソウが沢山咲いていてかわいらしいが、撮影する時間もなく、後ろ髪を引かれる思いで歩いていく。
すぐにカムイ天上に。所要50分に「凄いね、コースタイムは1:10だよ。」・・・大いに気をよくし、これなら12時間かからないよ〜と意気が上がる。それに、樹林に邪魔されながらも何と目指すトムラウシの山頂がちらと見えるではないか。
今日はあそこまで行くんだな。山頂が見えているとやる気も出るというもの。

休憩後すぐに現在は閉鎖されている沢コースの旧道への分岐があって、新道は笹の切り開きの尾根道になる。
急に明るい道になるが、足元は笹の根がスパっと切られており、ヤマアラシのトゲが並んでいるよう。
見かけほどは歩きやすくないし、転んだら大変。(勿論、切り開きには本当にご苦労があったと思うし、感謝の気持ちで一杯ではある。)
花はないが、ここで十勝方面だろうか、素晴らしい展望が開ける。
見とれるような山並みと、あっと声に出すような押し寄せる鱗雲に愕然。(典型的な地震雲・・・かな。)

さて、意外と長い新ルートも、右に折れると目の前に改めてトムラウシがご挨拶。気のせいか、少しは近づいたかな。
いいお天気の中、でも案外コマドリ沢は遠い。ちょっとがっかりし始めた頃、お花畑が現れた(6:50)。ハクサンイチゲやヨツバシオガマなど。その先で下降が始まる。どんどん降りて行く。きっと帰りにここを登り返す頃には泣きが入っているね、と話す。それでも構わない、登頂さえ出来たなら。
そんな思いで沢出合へ。休憩者多数。冷たい沢の流れにほっと一息。時刻は7:20、もう3時間歩いている。エゾノキンバイソウが大きな黄色い花をつけている。


沢沿いはお花畑なのであった。渡渉地点には雪は全くない。今日は他に団体は2つあるようだ。"札幌"隊と"群馬”隊のよう。似たような年齢構成でほぼ同じ人数が、休憩のたびに抜きつ抜かれつ進んでいる。
ここからはほぼ沢に沿って登っていくが、そこはエゾコザクラの花畑であった。

エゾノキンバイソウ

エゾコザクラ
もう少し上がると雪渓が現れ、涼しい。普段の山行ならそろそろ頂上という時間になるが、今日はまだまだ序の口。でも沢山の花が現れると気分が違う。
コマドリ沢を離れると今度は前トム平をめざす。このあたりもお花が一杯で、エゾノハクサンイチゲ、白いトカチフウロ、それに見事なコマクサも。

今までに見たコマクサは、殆どが保護地や育成地に咲いていて、本当に自然の中に咲いている姿を初めて見る気がする。


エゾノ・ハクサン・イチゲ

トカチ・フウロ
(千島フウロの白花版)

コマクサ
1時間ほどで前トム平まで登る。ここまで来ると素晴らしい展望だが、照りつける日差しを避けるものがないのは辛い。いつのまにか雲は眼下に退き、目の前にはトムラウシがそびえているが、まだまだありそうだ。

体力を温存し、足を持たせるためにも究極の荷物の軽量化を図っているが水は減らせないので結構重い。
疲れきってしまうと食べ物も口に入らなくなるし、水分も早めに補給した方がよいと思い、朝からこまめに水を飲んだりゼリー状の栄養物をとったりしてきたが、どうやらそれは裏目に出てしまったようだ。

・・・元々胃腸が弱いのに、午前4時前に起き、おにぎりを1つ食べ、それから休憩のたびに口にしてきたものだから、どうも調子がおかしくなってきた。困ったな・・・。
ここから2時間30分で山頂というコースタイムになっている。トムラウシのピークはまだ1つ丘を越えて行かなければならないが、何とか登頂できそうだ、という実感が出てくる。

沢山の花、それも数が凄い。これが本当の北海道の自然なのだ。
エゾノツガザクラの濃い紫、エゾコザクラの小さな花、エゾヒメクワガタの可愛い花、見事というほかない。これはまさに楽園である。

ここまで来てしまえば、もう感動の方が勝り、足取りも軽くなろうというもの。
何より誰も脱落せずここまで快調に歩いてきているのは嬉しい。

大きな岩場をトラバースし、少し登ると雰囲気が更に変り、まさに「トムラウシ公園」が姿を現す。
岩とハイマツや植物の緑が織り成す広大な庭園である。ここへ登ってまた降りて行くのは足にこたえるが、ストックを頼りに降りて行く。


前トム平にて休憩中


「トムラウシ公園」
随分と歩いてきた感じがするのは、もう5時間も歩いているから。しかし時刻はまだ9:30だ。
長丁場だし、花も素晴らしいので休憩はしっかり取る。

この素晴らしい花を愛でずにどんどん歩くのでは、ここまで来る意味がないではないか。・・・同じ花でもまた写したくなる。
チングルマもエゾノツガザクラも、絨毯のようだ。こんな世界があったなんて。

他のグループはわき目も降らずに歩いて行く。先頭の人はもう先ほどからザックは背負っていない。疲れ果ててしまったのだろう。ガイドが2つ背負っている。

抜きつ抜かれつ同じような集団同士で歩いてきたが、贔屓目に見ても我々の方が体調はよさそうだ。

さあ、もう一息でいよいよトムラウシに登るのだ。
南沼のキャンプ指定地との分岐に来ると、沢山のザックがデポしてある。登り30分、下り15分となっているからだろう。我々は誰も置いていく人がない。途中で何かあったら困るし、何となくガスってきたのがちょっと気にかかる。

さあ、いよいよ最後のステップと思い、登っていくとどんどん視界が悪くなる。あと少しというあたりで、降りてくる登山者に会うが、狭い山頂に沢山のグループがいて、混雑しているという。
それで、目の前ではあるが、順番待ちも兼ねて大休止とし、行動食をとる。

そのうちに上から集団が降りてきて、ようやく私達も頂上を目指す。

狭いというのでここにザックを置き、数分でやっと辿り着いた山頂は周囲がガスの中。全く展望がない・・・。

でも、とうとう登り詰めたのだ、トムラウシに!
時計は11:32になっている。4:20から歩き始めて7時間。
展望は得られなくても、みんな思い思いにカメラに収まる。全員揃って元気に登頂。よくぞここまで来たものだ。


全員集合!


トムラウシを降りる
大きな達成感を胸にしつつも、これから下山が待っているのだ。何が何でも帰らなければならないと思うと、今度は来た道の遠さを思う。
さあ、頑張って、あと・・・5時間?6時間??
焦っても仕方ない。なるようになるさ、と気持ちを切り替える。それに、またお花畑の中を降りていくのだから、きっと、大丈夫・・・。
まずは石がごろごろしたつづれ折の道を南沼分岐まで降りる。
下りは滑るのでちょっと怖いが、イワブクロやコマクサ、メアカンキンバイなど飽きさせない。

トムラウシ公園まで来ると休憩。水が流れ、本当に秘密の花園に間違いない。


エゾヒメクワガタ

チングルマ
花も、1つの種類でこれほどの面積を埋め尽くす数というのも初めてだ。
コマドリ沢から咲いていたのに、エゾコザクラには見飽きるということがない。鮮やかなその色と姿、今年は花が遅れていて本当にラッキーだ。

ここで昼寝でもしたくなる。しかし、先は長い。頑張るのはこれからだ。

同じ道を往復する利点の1つは、道の様子が分かっていること。これを過ぎればあそこに着く、と分かれば無用な心配もなくなる。
長い山行ほど、ルートの予備知識が必要なのは間違いない。

花、花、花に見送られて下山は続く。前トム平を越え、大岩の積み重なった地帯をトラバースし、沢を下って渡渉地点に至る。

14:25、行動時間がとうとう10時間となった。
沢で休んでいると、とうとう胃腸が赤信号になり、"お花摘み"に。う〜ん、そろそろ体が悲鳴を挙げ始めたのか。

お花を楽しみ、休憩もしっかりとって、急がず歩いているのに、このあたりでとうとう先行グループに又追いつき、更には追い越すことになる。
抜かれる方は余り気分が良くないようだ。それに、追い越すたびに相手の顔色をそれとなく伺っている。
どうやら相当疲れているようだ。足は私達の方が速いし・・・。

コマドリ沢の上り返し、ひょっとしてストックにすがって痛む足をひきずりつつ苦しんでいるかも、と行きに想像したが、幸い今はどこも痛くない。
土留めの階段の登り返しは結構厳しいが、ここさえ登れば、今度こそもうただ下るだけ。もう少しだ!

新道は今度は笹が滑る方向になるものの、道が広く緩やかなので、みんなの話が弾んでいる。誰も脱落するものもなく、一緒に歩けるのだから大したものだ。
他の登山者は一様につかれきった顔をして、足元もふらついていたり。

それでも長い新道を、とうとうカムイ天上まで戻る。16時を過ぎている。でもあと1時間程で無事下山できそうだ。
朝ここを歩いていた時に見えた山頂は、遠かったな。でもあそこまで行ってきたんだなあ・・・。

とうとう温泉コースの分岐まできて、あとは駐車場まで、となる。歩き続けてまる1日。とうとうゴールが間近になってきたのだ。

17:15、駐車場に戻る。歓声が上がる。
『来た、見た、勝った』ではないが、「歩いた、登った、戻った!!」という感じだ。じわじわと感動が湧いてくる。
行ってきたんだ、トムラウシに。本当に歩き通したのだ。

実はこの日、疲労と暑さで救急車が出動する騒ぎになっていたという。大学生やツアーのガイドが背負って降ろしたという。さもありなん、本当に厳しい行程だから。
でも、私たちは全員が亀のように確実にそして結局早く無事に降りてきたのだ。これが本当の実力というものだろう。

行動時間約13時間。トムラウシ山、登らせてくれて本当にありがとう。

さて、バスは再度東大雪山荘に戻って大急ぎで温泉に入り、次の宿へ向かう。
長い長い林道を走る途中で何度も北キツネに出会う。真っ暗な林道をのんびり歩いていたり。
トムラウシの奥深さを再確認する。

ここでトラブル発生。宿が夕食を用意できないという。いろいろ行き違いがあって、結局素泊まりとなる。
遅い時間なので全員が揃って食事にありつける場所を探すのは容易ではない。
結局、宿の紹介で居酒屋に入り、ビールやラーメン、どんぶりなどで乾杯となる。

宿に戻って部屋にわかれ、明日の用意や洗濯、荷物の片付けにおわれ、寝たのは10時過ぎとなった。

しっかりストレッチをして、湿布を足に貼って、目覚ましをセットする。
明日はパスすると言う人もあったけど、本当に明日歩けるのかなあ・・・。

大雪山系・赤岳へ続く*


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