最近読んだ本


有翼騎士団1・2・3
赤城 毅
中央公論新社

 全3巻。各巻のサブタイトル。1.風に立つ緑の姫君 2.夜を紡ぐ銀の公爵 3.光呼べ青嵐の騎士
 勇敢な若者がお姫様を守って悪漢と戦う。書き込まれ読み尽くされた感のあるテーマだがその都度若者と姫にとっては新しい出会い、冒険である。そして若人二人を囲む脇役たち。
 時は明治、処は欧州、独逸は伯林(伯林)にて物語のスタート。関わる場所や関わる人々の国はといえば、ポーランド・ドイツ・フランス・ロシアにイギリスまで・・・! 日本の若武者(サムライ)たる印南光太郎と亡国の男装の姫エウフェミア。祖国の復活を目指す有翼騎士団がいて、分けありの東洋人風のフランスの少々がいて・・・・・・・・・。とこれは若人側。対する悪役もなかなか。まさか土方さんにお目にかかれるとは!
 光太郎の燃ゆる勢いにつられて怒濤の一気読み。氷の侯爵も、アレキサンドライトの輝きも悲しくて・・・・・・・・・。 (09.20読了 - 2002.10.02記)
神の子羊 1・2・3
のりす・はーぜ
光風社出版

 『イラストレーション 竹宮恵子』とあるこの本(3冊セット)図書館でで見かけ手に取ってみると表紙絵からしておなじみの絵姿、ジルベールとセルジュ。あとがきをぱらぱらするとこの筆者のペンネーム【のりす・はーぜ】は、あの(知る人ぞしる)増山のりえ「ウィーン協奏曲」参照だという。そしてわざわざ「風と木の歌」の続編として期待されては困る、と断っている。ここまで書かれたら読まぬ訳にはいくまい。 
 今(20世紀末)を起点に過去(セルジュの時代)を求めるという形で話が進む。セルジュの作った曲に惹かれてセルジュをテーマに研究をしたいという音楽学校の女生徒ととセルジュの子孫(子爵となる)、この二人を軸にかって彼らを取り巻いたイタ人々の子孫や住んでいた場所を軸に織りなさせる模様、そこにジルを思わせる少年も登場して・・・。
 あっという間の数時間の読書を楽しんだのだった。 (09.06読了 - 2002.09.16記)
女神の誓い
マーセデス・ラッキー
創元推理文庫

 剣士と魔法使いの出会いと冒険の物語。自分以外の一族を皆殺しにされその敵を討つために<誓いを立てし者>として生きることになったある剣士と、ある条件に限り救い手として行動しなければならない魔力ある剣<もとめ>を手にした魔法使い。二人は「血の姉弟」となり、一族復興を心に共に歩み出す。復興には資金がいる。自分たちの能力を生かし目的を達成するのに一番の道は『傭兵』稼業。この話はまた二人の傭兵の物語でもある。
 とここまではふつうの設定、普通のファンタジー。剣士と魔法使いがコンビを組んで旅をしながら悪を倒し、かつ自分たちも成長するというのはおきまりのパターン。ただそこに大きなパターンのずれがある。この剣士、魔法使い、共に女性なのだ! そして魔法の剣は女性を助けるためにしか使えない。戦うことで自らの傷を癒し成長していく剣士タルマと魔法使いケスリーの物語。
 作者は、アン・マキャフリーとの共作「旅立つ船」をはじめ、ブラッドリー、C・J・チェリイ、アンドレ・ノートンらとの共作も多いという。ストーリングの巧みさ、軽快な語り口、なるほどとうなずける。 (08.23読了 - 2002.09.01記)
裁きの門
マーセデス・ラッキー
創元推理文庫

 タルマとケスリーのさらなる物語。「女神の誓い」続編。彼女たちには新たな仲間が加わる。ケスリーが魔法で呼び出した魔法を使える狼ワールがそれ。彼(多分そうだと思うのだが)のちょっとひねった会話への割り込みなど危機の場面であってもつい笑ってしまったりするのだ。二人だけの請負傭兵稼業から傭兵隊<太陽の鷹>の一員となって活動を始める。そこでも重要な位置を占めるようになった頃、隊長が故国の用事ででかけたものの帰ってこない。彼女を捜して二人(プラス一匹)はレスウェラン国へと向かう。そこで遭遇したのは・・・・。
 シリーズとなる『ヴァルデマール年代記』。そのヴァルデマール国へ初めて足を踏み入れるのだった。<使者>や<共に歩むもの>との出会いもまた・・・。一族を復活させるための手立てとして目指していた学校もめどがついて、まずは剣士と魔法使いも落ち着く場所を見いだせたようだ。しかしそこへ至る道ときたら・・・・・・・・・・。
 止めるべきときを見失い本を閉じられないままの一気読み。  (08.24(未明)読了 - 2002.09.01記)
誓いのとき
マーセデス・ラッキー
創元推理文庫

 伝説となったタルマとケスリーのいろいろなお話(短編集ともいう)。二人がであって一族の元へとまず帰るまでの頃とか魔法の剣の引き起こした傭兵時代の話とか、「裁きの門」後の二人の家族のことなど、いろいろな味わいの物語。
 表題作ともなっている「誓いのとき」の他「護符」「英雄の話」「伝説はこうして生まれる」「同士討ち」「毒薬」「炎の翼」「フォルスト・リーチの春」「竜の嘆き」の9編。 (08.24読了 - 2002.09.01記)
運命の剣(上・下)
マーセデス・ラッキー
創元推理文庫

 タルマとケスリーの傭兵コンビが活躍した時代から約100年後、ケスリーの孫娘ケロウィンが主人公として運命の冒険へ足を踏み出す。宴席で父を殺され兄を傷つけられ兄の花嫁はさらわれてしまった。救い出したのがケロウィンだったのだがそうなるとそれまで暮らしていた館(かってのタルマとケスリーの作った学校)で浮くことこの上ない。ケスリーからケロウィンへと引き継がれた魔剣<もとめ>と共にタルマに鍛えられた彼女は傭兵としての道を選ぶのだった。そして<使者><共に歩むもの>との出会い、(修行仲間のレスウェン国王の弟ダレンもまたその役割を果たすことになるのだが)各国の情勢からヴァルデマール国へ歩を進めることになる。『ヴァルデマール年代記』の織り糸となる物語だ。ケロウィンが傭兵隊長となるまで、なってからの葛藤・困難を乗り越えていく様子など、良質の成長物語でもある。  (08.25読了 - 2002.09.01記)
ドラゴンファームはいつもにぎやか
久美沙織
プランニングハウス

 竜と少年と少女の物語か。牧場=元は由緒あるお城の領主であったデュレント家の末っ子フュンフがいつものように牧場仕事をしていると竜が逃げ出したとか。相棒の竜シッポに乗って探しに行くとそこで美少女にであった。彼女から自分の家の牧場が買収されるかもとの話を聞きフュンフは大慌て。そこから物語は始まる。
 世の中のことなどまるでわからなくてドジででも一生懸命なフュンフと彼を取り囲む人々、そして竜。冒険の行き着く先はめでたしめでたしで竜のシッポは光であることを見いだしフュンフは竜の一部であることを知り伝説は伝説でなかったことを知るのだった。
 リズミカルな語り口に引き込まれるファンタジー。ハヤカワ文庫で出版されたのを目にしつつ買い求めずにいたのだが図書館で(おそらくはオリジナルの)カヴァー&イラスト吉野朔美による本シリーズにであい借りて読む。一気に・・・・。  (05.09.読了 - 2002.05.12記)
ドラゴンファームのゆかいな仲間(上・下)
久美沙織
プランニングハウス

 あれから3年牧場は豊かに栄え、働き手も増え竜も増え、シッポとビニューの子どももまもなく卵からかえるはず。いいことずくめなのに、何か変? 家出していた兄のキャシアスが帰ってきた。姉の結婚式もあった。父と子(キャシアス)の確執もあった。愛しのディーディーは他を向いている? 間に立って、巻き込まれて悩むフュンフ。
 しかし、シッポの子どもたちはさらわれてしまった。犯人は最近牧場に働き始めた4人の男たち。「竜の王に背くもの」とは・・・。そして「聖竜師」とは。 少年は愛竜の空飛ぶ竜シッポの見守りの元、さらに成長していく。 (05.10.読了 - 2002.05.12記)
ドラゴンファームのこどもたち(上・下)
久美沙織
プランニングハウス

 ディーディーと結婚し一児の父となったフュンフ。祖母も昔話から始まった竜のレースは義父の手によって復活され、国を越えての長距離レースが行われることになった。デュレント牧場ももちろん出場する。シッポとその子どもたちの4頭とフュンフ含む人間4人。
 レースが始まる。いろんな人々にであい、困難な場所は出場者ともに乗り越え、そんなときフュンフは決まって指導者だ。でもレースの行方より「竜の王に背くものと共にある国」のライラーの守レルジン動向の方が気に掛かる。どうすればいいのだろう。
 レースを囲む人々との関わりも行動も入り組みながら一つに集結していくところが気持ちよい。そして、「『聖竜師の放つ光は、竜たちの内なる光を強め、浄化する』」のだった。三部作完結。  (05.11.読了 - 2002.05.12記)
足のない獅子
駒崎 優
講談社X文庫

 「足のない獅子」この第1作から始まる連作シリーズ9冊、以下題名をあげる。「足のない獅子」「裏切りの聖女」「一角獣は聖夜に眠る」「火蜥蜴の生まれる日」「豊穣の角」「麦の穂を胸に抱き」「狼と銀の羊」「開かれぬ鍵 抜かれぬ剣(上・下)」
 ときは13世紀、騎士道盛んなりしイングランドが舞台。騎士見習いの少年の活劇物語。従兄弟でもある少年の名はリチャードとギルフォード。ギルフォードはブラッドフィールドの跡取りでよく言えば将来を保証されているのだが、リチャードには誕生と共に亡くなった母と彼女の生前の宮廷での評判と一枚のサーコート(鎧の上からかける外衣)があるのみ、いうところの“庶子”である。が庶子といっても どうやらその父親と噂されるのは王家の・・・・・・・・・・。(あわわ、これは口に出してはいけないこと、もしもこれが反逆などとの言質をとられてしまったら)。
 それでも自分の将来を考えなければならぬリチャード、ギルフォードと組んでシルフィードの街に起こる事件に首を突っ込んでは小金を稼いでいる。彼らの小姓、ギルフォードの父親や杖をふる祖母、街で彼らを手助けする人々(親方・娼婦・王城の犬飼の息子などなど)、ちょっとばかり>いいのかそんなで、といいたくなるような司祭に、厳格な執行長官。忘れてならぬ宿敵のノルマンの貴族の血を引く隣の領主。などなど少年二人のまわりの人々も忘れることはできない。
 活劇あり推理ありはらはらわくわくリズミカルな連作、一つ一つでもよいが通して読むと登場人物の絡み具合が深まってなかなかによい。騎士になった彼らの物語も読みたいものである。騎士といえば紋章が授けられるのだがリチャードの紋章は・・・、というのはシリーズ最後のネタバレになってしまいそう^^。  (04.26.読了 - 2002.05.04記)
蒼穹のシディ
〜アグラファ1〜
三浦真奈美
中央公論新社

 海があって帆船があって鷹が飛ぶ。少年(ミオ@主人公)は鷹と共にいる青年にであう。それが始まり。行政官の息子のミオが長らくすんでいた島(かってはリグリア領、いまはアティスの支配の元にある)から父親の目を盗んで旅立つ。が、海賊に囚われ奴隷に。無事脱出してアグリアの軍に入隊し、軍を指揮する羽目になってしまった。まだまだ未熟なミオ、心惹かれるのは鷹をもつ青年レシェフであり、彼を捕らえた海賊の首領アインだったりする。ミオはアティスの人間であり、アインは旧リグリアの民、彼らの道が交差して新しい流れが来るのか。物語はまだ始まったばかりである。
 海と風と船、作者の他の作品、ex.「女王陛下の薔薇」などにも共通する風景である。(04.03.読了 - 2002.05.04記)
暁の天使たち
茅田砂胡
中央公論新社

 前作「スカーレット・ウィザード外伝」の終わりが彼らの活躍を予告していたのでしたよね・・・・。買いました。それも発売予定日過ぎてもなかなか店頭に並ばないものだからパピルス(電子書店)の先行販売というのをダウンロードして読んで、読み終わった翌日に書店でも買うという騒動(;_;)。ダブりだけれどイラスト付きでヨシということにしておこう。
  でてきました。金銀黒の3人組。でもそれだけだと思っていたら金銀さんの遊び相手まで登場して、確かに作者があとがきで書くように『本当に新装開店にあたるかというと、かなり疑わしい』訳で、あの話の続きであってもおかしくないことは確かではあるのでした。医者(切り刻みは得意?)に経営者(なのか<ヴァンツー?)、になろうかな、なんていうファロットの彼らの戦闘はいつものようで懐かしかった。こちらの話のつながっていることも確かで、じゃあそのうちケリーとジャスミンも金銀コンビに(黒の彼氏にはケリーすでに関係あるし)からみつくようにはちゃはちゃ(^^;)するのかな、なんて、想像を巡らすには、の作品でした。
 異世界に来たシェラのとまどいとかこちらの世界でのリーの過去のこととか、思いがけず出てきた古いアルバムをみたら色鮮やかなまま残っていた場面が、バラ園にもあったんだなあ、など、舞台のあちこちをのぞき見た気分。しかし・・・・・・・・・・・・・・(^^;;;;;;。  (03.28.読了 - 2002.04.07記)
楽園の魔女たち
〜月と太陽のパラソル(後編)〜
樹川さとみ
集英社コバルト文庫

 マリアはジェイルに出会えるのだろうか。無人島にいた男性はよく見るとジェイルではない。折しも発見された洞窟。その中を進み、約束し挑戦を決意するマリア。それぞれの場で動いていた他の魔女(サラ・ダナティア・ファリス)も、収束されるかのようにマリアと合流する。そこでお師匠様のエイザードが・・・。
 彼女たちの請け負ったそれぞれの旅路もくすぐったいようなおもしろさだったが「愛」における純粋さや、「調停者」をはじめとする物語場の人物が心に抱えたそれぞれの思いの重なりがエンディングに向かう流れが読んでいて楽しかった。(04.01.読了 - 2002.04.07記)
戦闘妖精・雪風
神林長平
ハヤカワ文庫

 雪風は戦闘機である。シルフィードという名前の、フェアリイ基地に配置されている、謎の異星体ジャムと戦う戦闘機。出だしのこのネーミングからぐんぐん迫ってくる。8篇で編まれた作品。
 読み始めは人間と異星体ジャムとの戦いが描かれてそこに<雪風>が介在しているようにも見える。南極大陸に未確認戦闘機が現れどれが人類とジャムとの戦いの始まりだった。地球側は超空間を抜けて惑星を発見する。その惑星こそがフェアリイ、戦いの前哨基地である。雪風およびその乗務員の任務はたとえ味方を見殺しにしても必ず戻ってくること(ブーメランのように)、戦闘の偵察してその情報を余すことなく伝えるということだ。 
 雪風の操縦者<零>、彼と雪風の関係も変わる。機械の知性、成長する機械は人間とどうか川手地区のだろうか。対ジャム戦闘を描きながら底流に流れる‘機械’の存在が章を追うごとに絡み合い深まっていく物語の進展に、神林ワールドにただただのめり込む。 (03.01.読了 - 2002.03.11記)
「目覚めよ、女王戦士の翼!」(上・下)
スコーリア戦史
キャサリン・アサロ
ハヤカワ文庫

 ソズの弟、王圏の継承者ケルリック。単独の任務中に攻撃を受けて見知らぬ惑星で遭難してしまった。そこは王圏宇宙軍の宇宙港こそあるものの、王圏からの立ち入り禁止惑星。カイル中枢も傷つきなすすべもない。コバ星の住民に救われたケルリックだが、このコバ星というのは・・・。支配し守るのは女性、仕えるのは男性、ジェンダーが全て逆転している。ケルリックも坊代の夫(アカシ)となる。まるでハーレムのよう。読んでいて男女の役割が逆転していることがまるで気にならず、そういえば・・・、なんてはっとすることも多々あって、この本を読んでいるとだからジェンダーの区別がなんなの、っていいたくなる。
 コバ星の中で特筆すべきは「クイス」というゲーム、将棋やチェスに似ているのだが、誰もが打つクイスは伝達の手段でもある。ケルリックの打ったクイスも波のようにネットワークのように世界に広がりコバ星も変わっていくのだった。クイスで政治も科学も現される世界を満喫した。ケルリックのその後、コバ星のその後が知りたい。早く翻訳を・・・・  (02.23.読了 - 2002.02.25記)
銀河おさわがせアンドロイド
ロバート・アスプリン&ピーター・J・ヘック
ハヤカワ文庫

 オメガ中隊とフール大尉は、また別の惑星へ、別の作戦へと動く。その陰にフール憎しのブリッツクリーク大将がいてさらなる罠を仕掛けてくるのだがそれはさておき。オメガ中隊は姿の見えない敵に侵略されているというゼノビア星に派遣されたのだった。任務の途中でフールとビーカーは捕らえられ基地に戻れない。が、そこにローレライにいるはずのフールの替え玉=アンドロイドが現れ、事情を知らぬ中隊は混乱の中。
 そっくり顔の集団(エルビスは嫌いじゃないけど、宗教といわれると、ニヤニヤ^^;)とアンドロイドと中隊の隊員たちが大活躍。相変わらずのドタバタでの大円団。今回はあまりお金儲けもなさそうだったけれど、テンポよく、フールよりも個々の隊員にスポットが当たっていたが、楽しく読んだ。伏線があれも、これも、・・・・・・・、なるほど。(^^)  (02.20.読了 - 2002.02.25記)
流血女神伝 砂の覇王6
須賀しのぶ
集英社コバルト文庫

 舞台は海の上、ところは海賊船。カリエが気付いたのはとらわれたとはまた別の船の中、そこもまた海賊船なのだが、その海賊船を率いるはトルハーン。どうもバルアンとは知り合いらしいうえに、かってはルトヴィアに属していたようだ。彼を討伐しようとルトヴィア海軍も出航した。船の上で帆柱登りの特訓を受けたり否応なしに鍛えられてしまうカイエ。その海の上でも戦いが始まる。 トルハーンとその副艦長と彼らを取り巻く海賊たちの雰囲気がグー(^-^)g""。加えてトルハーン討伐を命じられたギアス艦長他のルトヴィアの面々もなかなか。海の男と女というのは魅力的だ。  (02.09.読了 - 2002.02.11記)
楽園の魔女たち
〜月と太陽のパラソル(前編)〜
樹川さとみ
集英社コバルト文庫

 そういえばマリアは人妻だった。ということが今回の話の始まり。マリアは行方不明のジェイルを探しに海に乗り出す。無邪気なマリアと家族の組み合わせも良いが、他の3人もそれぞれにかり出される。サラと博士、ファリスと時代錯誤の王子様、そしてダナティアはといえば・・・。
 特別なときに特別なことが起きるらしい。前編とされるこの本は登場人物が現れて少し動き始めたところだ。後半でどう動き収束するのか楽しみに待とう。  (02.03.読了 - 2002.02.11記)
クリセニアン年代記
全18巻
ひかわ玲子
小学館キャンパス文庫

 各巻の題を並べてみる。天を継ぐ者・邪眼の美皇子・エルメールの虜囚・月影の暗殺者・水晶の谷を越えて・蒼き若鹿の風・琥珀の結界・純白の花嫁・緋の逃避行・黄金の呪縛師・闇聖神殿の祈り・凍れる都・神よりも深き闇・囚われの翼・千の暁の彼方に・果てなき祈りの声・勝利の夢ははばたく・天の扉が開く時
 光と闇のファンタジー。光が善ではなく闇が飽くではなくどちらをも内包する生き物たる人間。翼人を介在した年代記が編まれる。織りなされる人間模様。完結後まとまって読むことで流れが目に見えるようにすとんと心に落ちた。少年もいいが思いを心に閉じこめて強く育つ少女たちがよい。   (01.08.読了 - 2002.02.11記)
レディー・ガンナーの大追跡

茅田砂胡
角川スニーカー文庫

 偏見の牢獄にとらわれてしまったキャサリンとニーナ。そこで出会った一人の少女と共に脱出を試みる。相変わらずのムチャぶりを発揮するキャサリンだがそれ以上に驚くべきはかの少女。とあれ無事館を逃れアナザーレイスの人々と出会う。一方キャサリンとは別行動をとっていたヘンリーは、用心棒4人組と再会する。そこで彼らが耳にしたことも剣呑ではない。軍隊まで出動しての大騒動の裏に潜む人の心は近親憎悪だったのだろうか。重いテーマを軽い作品の中に込める難しさもあるだろうが、メッセージは伝わる。まずはとりあえずの決着を見るが単純に片付けられない人と人の理である。三つ巴(?)の恋模様も含めてのくすぐりが笑わせてくれる。   (02.02.読了 - 2002.02.11記)
レディー・ガンナーの大追跡

茅田砂胡
角川スニーカー文庫

 前作「レディ・ガンナーの冒険」以来久々の続編。アナザーレイス(異種人類)とノンフォーマー(無形種;いわゆる人間)間での対立・偏見は、あらゆる火種を残している。もちろん互いに友好を深めようとする人々はいるのだが、いつの世にもどの時代にもどの世界にも、ということなのか。レディー・ガンナーことキャサリンが美術の授業で描いた蜥蜴のベラフォードの絵、そのトランスフォーム(形態変化)が耳目を集めてしまった。それも種族に偏見をいだく人間たちの・・・。自分が起こした騒動に気付いたキャサリンは父親の忠告も振り切り何とか解決しようと飛び出すのだった。飛び込んだ先で待っていたものは・・・。魔女狩り、あやうし! 下巻に続くということで、しばらくはお預け。   (12.28.読了 - 2002.01.02記)
月と闇の戦記
退魔師はがけっぷち。
森岡浩之
角川スニーカー文庫

 題名からも連想したのだが本文からもあとがきからもこれは「月と炎の戦記」の続編。舞台が現代に移る。魑魅魍魎の徘徊するお化け屋敷のひょんなことから住むことになった売れない退魔師、そこで彼は不思議な人物に出会う。くだんの住宅に住んでいる二人とウサギ(!)、もしかして彼らは・・・・。現実と壁を接するもう一つの世界に主人公たちを含む幾多の登場人物たちが入り乱れての物語は始まったばかり。軽やかなテンポで読める一冊。続きを楽しみにまとう。プロローグはこれからどう物語の進行に関わってくるのだろう。。。 (12.28.読了 - 2002.01.02記)
三千世界の鴉を殺し5
津守時生
新書館ウィングス文庫

   惑星内部の不審な相手との戦いはルシファードに頭痛を残して終わった。それを取り除いてくれたのがラフェール人のニコラルーン。白氏とラフェール人の種族的対立やらルシファーにプロポーズする輩やら喧しいことこの上ない。司令官をその気にさせて自分に降りかかる火の粉を防いで向かうは「戦勝会」。それがまた・・・。男殺しのルシファーならではのドタバタが気持ちいい。
 『やさしいしい竜の殺し方』以外、どれも貸してもらっている「津守」本だが、あとがきを読むと、そ・そうだったのか、なんか読み直したいし、某『カワランギ・サーガラ』完訳版におまけついてたって知らなかったし、ここはもうすぐクリスマスだし(ってなんの関係もないけど^^;)がんばって手に入れて読まねば、と年内になるべく購入する本リストに静かに追加するのだった。このシリーズと『カラワンギ・サーガラ』と『喪神の碑』をセットでって、いくらになるんだろ(;_;)。   (12.01読了 - 2001.12.03記)
流血女神伝
砂の覇王5
須賀しのぶ
集英社コバルト文庫

  正妃としてルトヴィアの宮廷にたったカリエにドミトリアスお兄ちゃんもグラーシカも気付いた。といって、表立てることも出来ず、頭の傾げ方と物腰が語る宮廷政治、座る順番さえも定まっている王宮内ではある。そこでカリエの素性確認が要求され、明らかになる。アルの従兄弟、つまりルトヴィア王国の血を引くものであるということだ。そのことは砂漠のエティカヤ国の第二王子バルアン(カイエの主??)にとってどう働くのか。かの国でも王位をめぐり世界を巡っての動きが始まる。カイエをバルアンのもとに導いたのは幼いカイエをギウタの落城の時に救い出したラグリゼ(流血女神を信奉するザガール人)は砂漠に現れ、他のザガール人も絡まって、物語は海に移っていく(というか、海上で話は‘続きは次回’)。。。  (12.01読了 - 2001.12.03記)
スカーレット・ウィザード外伝
天使が降りた夜
茅田砂胡
中央公論新社

 寿命の年を宣言されてから数年を生き得たジャスミンとケリー夫妻の生活が物語の始まり。お約束の大型肉食獣夫婦の生活は前作「スカーレット・ウィザード5」で女王の死を見送った後、再度前の戻ってのスタートだけにモノローグがかぶり笑っていればいいというものではなかったのだが、この夫婦の最後の数年間はまあ、今回の話の中では単なるエピローグ。舞台が動くのはジャスミンの死後である。作者自らが「前作が女王(クィーン)退場ならば今回はキング退場」と語るようにケリーが主人公。そしてこのカップルの息子のダニエルがいて彼が伏線を引っ張る。彼がというよりは彼の周辺に見え隠れするある人物なのだが。その人物とケリーとガイア。「肉体は僕にとっては衣のようなもの。ボンジュイの海で生まれガイアとは違うんですけどぉ〜」と語る黒髪の青年、どこかで見たことなかったか。まず1行目に「天使」という言葉が出てきたときから、いやそれ以前にケリーがあの惑星に降り立ったときから何かあると思ってはいたのだが、まさかこういう形で結びついてくるとは!! ちょっとかなりけっこう(^^;)強引な筋運びというか、なにやら思惑ありなのか、太陽さんのお月様の13歳の少年二人が連邦大学付属校に入学してその学園ものが次作品?
 うーん。もちろん出版されたら買います・読みますよ、しかし。楽しみなようであり、さてどうなるのか。
 個人的にはダイアナとケリーの話をもっと読みたいだけに、リィたちの話もこのスカーレット・ウィザードと関係なく読みたかったような気が・・・・・。   (11.29.読了 - 2001.12.02記)
天空の遺産
L.M.ビジョルド
創元SF文庫

 マイルズ22歳。恋も冒険も銀河の中には潜んでいる。『ヴォルコシガン・シリーズ』最新訳。セタガンダ帝国の皇太后の死去、敵対関係にあるとはいえそれと外交は別物。バラヤー帝国から皇位継承権を持つものとして使節に送り出されたマイルズと従兄弟のイワンはセタガンダの空港に到着するやいやなトラブルに巻き込まれてしまう。遺伝子を管理するホートの美女、ホートの支配下にあるゲム貴族たちなどが絡み合う中マイルズの推理やいかに。セタガンダ帝国のちょっぴり平安時代にも似た政治形態があきらかになったり謎解きのくすぐりどころなど読みどころはたくさんあるけれど、やはり美女のために走り回るマイルズがどんどん冒険の深みにはまりこんでいく様子や、巻き込まれてしまうイワンの愚痴が何ともおもしろい。イワンの口から明らかになる少年時からのマイルズって・・・・・^^;。 (10.25読了 - 2001.11. 5記)


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