最近読んだ本 2001.2〜2001.9


ウィーン薔薇の騎士物語5
幸福の未亡人
高野史緒
中央公論新社

 幸福の未亡人を招いての舞踏会が某大使館主催で開かれるという。演奏依頼がジルバーマン楽団に来る。最初にフランツがそれを聞いたのはその大使館の書記官から。でも何か訳がありそうだ。舞踏会の会場では莫大な財産を引き継いだ未亡人に群がる多数の男たち。未亡人ことハンナの心境はといえば・・・。ここでクリスタが大活躍をし意外な真実が見えてくる。
 あれよあれよと巻き込まれる騒動の中でフランツはちゃっかりクリスタとの愛に芽生え(よかったね)、暗躍するはずのアレクシスは過去の女性に振り回され、それでも終わりよければすべてよし。恋人に捧げるワルツが薔薇の騎士弦楽四重奏団の手によって奏でられる。
 しかし、しかしである。演奏にことよせてフランツが語った言葉。「バルカン戦争で引き裂かれたすべての恋人たち、そして、もしかしたら未来の内線で引き裂かれ、命を落としてゆくすべての恋人たち・・・・・・キリスト教徒も、イスラム教徒も、(中略)・・みんなみんな・・・・・・全ての恋人たちに捧げるつもりで、このワルツを演奏します!」
 作者がフランツの語らせたこの言葉はそのまま現代のバルカンを含めた各地の紛争への哀歌である。そしてこの作品が校了し出版されるまでの間に起きた9月11日がかぶりなんともやりきれない気分になるのだった。  
 とあれ1年かけてのフランツの成長は素敵だ。一部一応の終了などといわず早々の復活を望みたい。 (9.27読了 - 2001.09.30記)
竜の挑戦(上・下)
アン・マキャフリィ
ハヤカワ文庫

 やっと翻訳された“All the Weyers of Pern”。シリーズはいよいよ終局にむかう。前作「竜の反逆者」から待つこと6年。原作を手元にかかえつつ読み切れない悲しさもやっと解消される。着陸場で発見された『アイヴァス』。彼との対話から物語は紡がれる。後の世に『アイヴァスの時代』と知られることになる数年間を。
 南ノ大陸で発見されたコンピュータ・アイヴァスはパーンの忘れ去られていた知識を補完し、彼に期された命題の解決にとパーンの人々に一つの提案をする。それは糸胞・赤ノ星との決別である。そのためにすべきことは・・・。ということで人々は学習を始めるのだった。ピイマアにロビントン師、リトルにファンダレル、レサにそしてもちろんジャクソム。豪華なオールキャスト。その実現のために竜と火蜥蜴の力が必要になる。そのために彼らもまた訓練をするのだった。
 変革を喜んで学び受け入れようとする人々がいる一方で反対し怯え変化を覆すためには何でもやってしまおうという集団もいる。この物語は人がおのれ以外もの(生物であれ機械であれ自然であれ文化であれ)とどう関わっていくかの投げかけをしている。
 やはり「パーン」はSFである、と、うれしく読んで久々の新作にパーン再読ループに入り込んだ次第である。  (9.01読了 - 2001.09.02記)
家なき娘(アン ファミーユ)(上・下)
エクトル・マロ
岩波書店

 初版が1941年の本書。この7月にめでたく復刊となり(thanks 復刊ドットコム)やっと入手。他社訳の「ペリーヌ物語」でもなじみの話だが、旧字旧かなの本書を手にして感慨深い。
 父を亡くし母を失い一人になってしまったペリーヌは、祖父のもとへ向かう。おそいかかる飢え、困難な仕事。ひるむことなく最善を尽くすペリーヌ。名を隠したまま祖父ヴェルフラン氏の目に留まったペリーヌは、花のように咲き開いていくのだった。
 改めて読んでみると、パリの貧しき人々の様子、紡績工場での働き手のこと(日本にも“女工哀史”なる言葉があった)など、作者マロの視線は、幸せになる一人の少女ペリーヌのみならず、庶民すべてに注がれている。その描写が作品の世界をより鮮明にしている。
 旧字旧かなで書かれてゐるのがたいそふ似合ひな物語であつた。    (7.05読了 - 2001.07.07記 08.06転記)
ノービットの冒険−ゆきて帰りし物語−
パット・マーフィー
ハヤカワ文庫

 “トルーキンの「ホビットの冒険」を下敷きにしたユーモア・スペース・オペラ”というコピーに思わず手が伸びた本書。もっとも「ホビットの冒険」とても楽しんで読んだことは覚えているがそれしか覚えていない(;_;)、あらすじですら忘却の河の中。でも、ユーモアもスペオペも大好きだし・・・・・、ということでいさんでよみはじめる。
 アステロイド・ベルトで暮らすベイリーは、<休みなき休息(レストレスレスト)>がマイホーム。そこで食べたりお茶を飲んだりとのんびり暮らすのが大好き。ある日いつものように小惑星を巡っていると迷子のメッセージポットが浮かんでいるではないか。ポッドを拾った、それが彼の冒険の始まりだった。
 ベイリーの祖父母を知っているという女性探検家ギターナや、クローンのファルー一族と共に、メッセージポットの示す指示にしたがってワームホールをくぐって旅立つ。冒険はしたくなかったはずのベイリーがいつのまにか冒険の主人公。敵の中をくぐり抜け<超古代族>の遺物を求めて・・・・・・。
 メビウスの輪・パタフィジシャン。論理のマジックにもわくわく。忘れていた「ホビットの冒険」も思い出してしまう。  みごとな展開。    (7.08読了 - 2001.07.08記 08.06転記)
ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
J.K.ローリング
静山社

 ハリポタ第3弾。ハリー達も3年生に進級する。が、その前のお約束の夏休み、ダーズリー一家(マグル)の中でのハリー、あいかわらずいいことがまるでない。この夏はそこにおじさんの妹も加わり、ハリーはおじさんの家を飛び出す。そのときであった犬が実は・・・・。
 ハリーの命を狙ってアズバガンを脱獄した囚人がいた。それを追い求める看守の吸魂鬼(ディメンター)、2年生の時よりさらにハリーを取り囲む状況は複雑だ。彼に敵意を燃やすスネイプ先生や、マルフォイはあいかわらずのうに、今回は仲良し3人組(ハリーとロンとハーマイオニー)が仲違い。
 ハリーの両親の殺害の謎や父親の学生時代のことなどいろいろなことが少しづつ証される本巻ではある。魔法の授業も新しいものが増え、魅力的な先生もくわわり、読みながら一緒にホグワーツ魔法魔術学校の生活を楽しむ。ホグミート村なんて面白そうな場所もでてくるし、魔法の道具は今回もいろいろあって物語の進行の隠し味となっている。   (7.15読了 - 2001.07.16記)
SF新世紀レンズマン(上・下)
原作:E.E.スミス 文:吉川惣司
講談社X文庫

 「古書店の片隅から拾い上げてきたよ、読んでみる?」とポンと渡された本書、あのE.E.スミスの「レンズマン・シリーズ」中の「銀河パトロール隊」を下敷きに、アニメーション映画化されるにともなって書かれた本書。ノベライゼーション。原作のレンズマンの渋さはないが、活気あふれる少年がたどるレンズマンの道。軽やかに楽しめる。原作を読み直したくなったのはいうまでもないが・・・・。   (6.23読了 - 2001.06.23記)
創竜伝 5
田中芳樹
講談社文庫

 ドラゴン特別編?。“蜃気楼都市(ミラージュ・シティ)”。日本海にある学園都市、それが物語の舞台。無き祖父の知人に頼まれ、彼の経営する学校の危機を何とかしようと日本海に来てみると・・・。怪しげな宗教団体に悪徳政治家。悪の共食いは許せるが罪無き人(未亡人)は救いだし、四兄弟の活躍で、都市の破滅は逃れられた。茉莉ちゃんのハウスキーパーたるサポートぶりも相変わらずの、四兄弟の休日??   (6.22読了 - 2001.06.22記)
カエアンの聖衣
B.J.ベイリー
ハヤカワ文庫

 “一粒の種、もし死なずんば・・・・”とは聖書の言葉だが、密貿易業者にうまくのせられてしまった服飾家(サートリアル)のペデル・フォーバースを一つの極として、ジアードの調査隊があり、カエアンがある。身にまとうと人格が変わる衣装とはどんなものか。私自身の日常にさえ、まとうものを変えることによって自らの変身を試みることがある。5つに限定されたスーツ、スーツと人との関係、そして2つの知性。SFマインドいっぱいのおいしさ。   (6.20読了 - 2001.06.20記)
創竜伝 4
田中芳樹
講談社文庫

 うるわしのブルードラゴン。“四兄弟(ドラゴン)脱出行”。物語の舞台が地上、天上に交錯してあらわれ、いずれが現実(うつつ)、いずれが夢。地上の四姉妹に操られる一人、アメリカ大統領にも火の粉がかかる。もちろん、日本国首相にも。長兄の始様=青竜王は、意識を失うことなく竜に変身。その後を追ってアメリカ上空、ドラゴンが揃う。彼らの従姉妹の茉莉ちゃん、従者を得た彼女、どうもただものではないようだ。   (6.19読了 - 2001.06.19記)
創竜伝 3
田中芳樹
講談社文庫

 西海白竜王そして北海黒竜王。終くんは風だった。“逆襲の四兄弟”。筑波学園都市から横田基地へ、戦車を強奪し、ヘリによじ登り、走り回る四兄弟プラス茉莉ちゃん、プラスはみ出しモノの自衛官・・・。アメリカ四大財閥の手がのびてきているがなにやらその裏にまだ何かが隠れているようだが。 脇役の隣人さんとか、ソビエト大使館員とか、細部のくすぐりも楽しい。   (6.07読了 - 2001.06.14記)
美しいキラル part3
前田珠子
新書館

 1年ぶりの続編。女性になってしまったファガル。きっちり4人組になった一行に次々と襲いかかる気配。なぜサリームが狙われるのか「万能の稀石」の秘密も明らかになり、『ぶっそうなファガル』においてはキラル&ファガルのペアができはじめたころの話が盛り込まれ、場面を変えながら謎に近づいていく。まさか初代キラルまで関わってくるとは・・・。
 “きらきらしゃらしゃら”。繰り返し文中で使われる二人に対する形容。美しさにみがきのかかったファガルが、慎重に行動しているはずなのに決まってどんでん返しが待っている。そのギャップと強さが今回も楽しい。登場人物の中でファガルが一番のお気に入りだから、彼の活躍も彼の心配性なところもにこにこ^^;読んだ。 (6.06読了 - 2001.06.08記)
やさしい竜の殺し方 1・2
津森時生
角川スニーカー文庫

   同名のスニーカーブックスで出版された本の文庫化。1年以上も前にこのシリーズ(続編の『ゆがんだ竜の愛し方』『危ない竜の選び方』含めて)借りて読んでいて、しかも面白さの余り3作目が終わり次第すぐに2度読みに入った前歴があるので(^^;)本当は再読本なのである。手元にないことが悔しく文庫化を機に早速取り寄せた。(書店事情が悪いのでお世話になってます>bk1さま)
 あとがきに >“男性の方へご注意、女性向きとして書かれて・・・” とあるのを読んで、思わずえーっ!! 前回の時その話の作りの面白さに我が家の下の子に読ませてしまっていたからだ。本人も楽しんだようだったんだよね。そんなこといわれてもいまさら・・・。
 本は読み手を選ぶかもしれないけれどそれは性別とはちょっと違うかもしれない、と思い返して、手元に届いてから1ヶ月も読んであげなくてゴメンネ、とページを繰る。そのまま勢いに任せて2冊ともぐんぐん、青菜を茹でながらまで片手に本という道楽をしてしまった。
 RPG的設定で(登場キャラクターの役割分担もそれぞれに)巨大な敵を倒すために向かう冒険者の一行。その中の一人が・・・。掛け合い漫才もあれば泣かせる場面もあって、にやにやしたりほろりとしたり、二つの世界(陰と陽)のひずみをかかえながら旅は続く。 (5.27読了 - 2001.06.03記)
幻の将軍(上下)
川原よしえ
エニックス

  少女だったころ一度は通る道か。ある時は男装の麗人に憧れ(ベルバラのオスカル)、少年の魂に焦がれ(萩尾望都とか竹宮恵子)、あんな風に生きてみたいと思ったりはしないだろうか。少女としての特権を楽しみつつもありせぬ世界への憧れは何時だってあったのだ。
 おびに書かれた言葉>“嵐の海で再会を誓った幼馴染を捜し出すため、少女は、嘘を、吐いた。”これにつきるだろう。
 フレイは剣術も馬術も大人にひけを足らない。思ったままをすぐに行動に移し、人々の心をつかんでいく。その活躍の様、読んでいて気持ちがいい。伏線のはり方は意外性がなくて予想のできる展開なのだけれど、フレイの大活躍に気持ちよく自己投影できて、すっきりと読み終わる。  (5.31読了 - 2001.06.03記)
創竜伝 2
田中芳樹
講談社文庫

  南海紅竜王登場。続くんが続いた^^;。“摩天楼の四兄弟”舞台は東京湾(ディズニーのあるあたり)から新宿副都心、都庁まで。四兄弟をとらえようとする悪役は国内では先の老人の死去(1巻)いらい小粒になった感じだがかえってパイの取り合いは激しくなって4人はおちおち休んでいられない。そこに海外からの包囲網も加わり・・・。
 借りてあったのは2までだったので続きが読みたい病もしばらくがまん。従姉妹の茉理ちゃんの司令官ぶりがいいなあ。  (5.25読了 - 2001.06.03記)
創竜伝 1
田中芳樹
講談社文庫

   北海黒竜王登場。余るくんだぁ^^。“超能力四兄弟”。富士の麓での自衛隊との闘い、その裏には戦後日本を牛耳ってきたある男がいた。
 名前だけは知っていたのだが手に取らないままいた本のひとつ。リズミカルで四兄弟の掛け合いは面白いし悪になりきれない小心者のおじさんも可愛い。裏を支配する男とそれにぺこぺこする首相の描写は半村良の「闇の中」シリーズにもあったなあ、と懐かしい匂いのするリズムで読む。 (5.24読了 - 2001.06.03記)
エンダーの子どもたち(上・下)
オースン・スコット・カード
ハヤカワ文庫

 『ゼノサイド』続編。エンダーの物語もここで収束。3人に別れたエンダー、アンシブルとの接続をたたれるジェイン、破壊されようとするルジタニアとそこに住む人々、窩巣女王にバガーにペケニーノ。彼らがどんなふうに救われるかという物語と、それぞれの人が「生きる」ということにいかに向き合っているかの話。女王、父樹、母樹たちが紡ぐフィロトとアイウア。ピーターとワンム、ミロとヴァル、そしてエンダー。3つの軸を起点に個々の生の煌めきが宇宙に広がる。『ゼノサイド』にも東洋思想が一定の位置を占めていたが本編における日本及び日本的事象もまた・・・。 
 一気に軽く読める本ではないけれど(だから体調のいいときでないと読めなくて読み終わるまで時間がかかったけれど)読了後の充足感はやはり最高である。  (5.21.読了 - 2001.05.21記)
イズァーカ商会へようこそ
前田珠子
集英社コバルト文庫

 人材派遣会社から派遣されたのは・・・・。チームを組んだ3人、目的はある人物を守ること。「見者」「緋の民」などなにやら常ならぬ人もいて、取り巻く(巻き込まれる)騒動。威勢のいい立ち回りと所々に顔をのぞかせるくすぐり。
 初期の作品(トラブルコンビネーション)を彷彿させるなあなど思いながら読んだあとで解説、作者の説明『初投稿の作品の舞台』。うん、うん、納得。勢いにのってリズミカルに速読。  (4.30読了 - 2001.05.07記)
黄昏の岸  暁の天(そら)
小野不由実
講談社文庫

 十二国記シリーズ。戴国に泰王驍宗がいた。それを支えるのは泰麒だったのだが・・・。戴国に反乱が起きた。反乱を鎮めようと自ら出かけた王とそれを待つ麒麟の上に何が起きたのか、それより6年の時が経ったころ、戴の将軍李斎が景王陽子のもとを訪ねたことで明らかになった。胎果として生をうけた陽子、延麒六太が、なんとか行方不明になった泰麒を探し出そうと試みる。
 久々の十二国記、実はその世界の流れを忘れていたのだが、話を読む内に思い出して、それに連られて世界に絡め取られていく。この世界はなぜ「天」「命」なのか、陽子の疑問はこの世界のこれからを読み手に期待させる。積んだままの新潮文庫「魔性の子」の未読が悔やまれる。パラパラ見ただけだが、本書と対ではないか。   (4.21.読了 - 2001.04.23記)
星界の戦旗3
森岡浩之
ハヤカワ文庫

   ジントはラフィールと共にハイド星系に向かう。故郷の惑星マーティンを正式に統治するためだ。時を同じくして新たな戦隊(第一蹂躙戦隊)もまた、演習のためにと当地へいくことになった。懐かしの友人、故郷、そこでジントを待っていたものは・・・。
 本当に久々のシリーズ続編ということで間にアニメ化やらいろいろあったので読みながら視覚化しジントやらフィールの声をイメージして読む。家族でいたかった、かくありたかった、その願いは過去のものとして、戻るべきは星界軍(らぷーる)。ディアーホと子猫たちが可愛い。 (4.11読了 - 2001.04.16記)
スカーレット・ウィザード5
茅田砂胡
中央公論新社

 同シリーズ完結編。作者があとがきで「SFではない、ハーレクイン・ロマンスです」といっていた意味に納得。確かに極上の恋物語である。最後まで読み終えてみてわかる伏線の数々、あれもこれも、と思い出しながら、実はこの結末を読んだ上で改めて1巻、最初から読み直してうずうずしている@チェックしなければ^^;。
 前半は掟破りたっぷりの大攻撃、わが子を救うためにはありとあらゆる裏技もコネも力も利用して、いみじくも「子どもを盗まれて怒り狂っている母親に逆らってはいけない」のである。とはいえ途方もないのはウィザード(魔女)と呼ばれるジャスミンだけではなくケリーも同様だ、例のごとく。惑星ウィノア(そう、ケリーのあのウィノア)に勢揃いしたメンバーと来たら。。。。!!
 子どもを取り戻し、そして・・・・。
 うーん。こういう終わり方なのか。すべての話がつながって・・・。扉絵に納得。
 しかしもう少し活躍する場面が読みたい、「ガイア」(幽霊星)に降り立つ二人が見たいというのは読者のわがままか。   (4. 7.読了 - 2001.04. 8記)
ウィーン薔薇の騎士物語4
奏楽の妖精
高野史緒
中央公論新社

 夏休み、薔薇の騎士四重奏団のメンバーは各地にお出かけ(まあ、だいたいは出稼ぎも兼ねてのことらしい)することになった。フランツは招かれてベルシュタイン公の領地へ。なぜか彼の案内役というのがトビアスのいうところのおにいちゃんこと変装のルドルフ(皇太子)だったりして、そこにクリスタまで飛び込んできて、さあどうなるか。そもそもはヴァイオリンを受け取りがてらのプレゼントされた休暇だったのだが。
 かの地には幻のヴァイオリンの名器「シレーヌ」があるという。「シレーヌ」は持ち手を選ぶとか。「シレーヌ」を奏でてみたい、しかし、、、揺れるフランツの心。そこに起きる殺人事件。またまた巻き込まれるフランツ。夜な夜なの夢。
 大人にちょっとなってきたかな>フランツの心身の成長、男の子だったんだねえ(^^;)。トビアスからおにいちゃんに宛てた手紙の文体が読んで楽しい、見て楽しい。少し前ならパソコン通信の文体といいたいところだが、時代の趨勢はインターネットだし・・・。  (3.25読了 - 2001.03.26記)
暁の娘アリエラ(下)
ひかわ玲子
講談社X文庫

  皇女への道へ悩みながらも アリエラは進む。若き公子達は宮殿内の評価とは違って信頼に足ると学ぶ出会いもある。彼女の星を早いうちに摘もうと他国からの攻撃もある。守られることにより、だからこそ守る側へと決意を新たに旅立っていくアリエラと彼女を取り巻く若者たちだけでない、シリーンも美しく活躍する。一人一人の思いを巻き込んで歴史は動いていく。  (3.24.読了 - 2001.03.25記)
バラヤー内乱
L.M.ビジョルド
創元SF文庫

 「名誉のかけら」の続編、というより完全に二つで一つの話のつながり。「名誉のかけら」がページを閉じた翌日から始まる話が本書。マイルズの誕生前後の内戦とそこに関わるコーデリアが中心となって物語が紡がれる。
 政治のパワーゲームプラス(もちろんバヤラーだから)武器の闘いもまた読み応え十分。異文化に接したコーデリアのとまどいとか、ぐんぐん読み進めて、マイルズが誕生。エピローグのマイルズがまた(^^)。
 「戦士志願」を始めとする「ヴォルコシガン・シリーズ」。本を積み重ねてただいま再読の真っ最中。読み直すことで世界がまた深まっていく醍醐味がたまらない。  (2.24読了 - 2001.02.26記)
エンダーズ・シャドウ(上・下)
オースン・スコット・カード
ハヤカワ文庫

  ストリート・キッドだったビーンの物語。ロッテルダムでの路上生活のリアリティ、生存競争、それはそのまま生き残りをかけてのバトルゲームだ。「エンダーのゲーム」の姉妹編。バトルスクールで出会い共に闘ったエンダーとビーン、スクールのシステムがビーンの目に触れるとどんどん顕わになってくる。彼ら少年達を取り囲む大人の思惑も同様に・・。
 虐げられた環境の中、目を光らせ頭を働かせ、生き延びるための知恵を駆使していくビーンの様子にすかっり没入してしまった。見えすぎるがゆえにトップに立てない悲哀など、すでに「エンダーのゲーム」で知っている話がまるで違ったものに見えてくる。直後に「エンダー」再読したのはいうまでもない。  (2.10.読了 - 2001.02.11記)
スピリット・リング
L.M.ビジョルド
創元推理文庫

  時は中世ルネサンス、ところはイタリア、異端裁判(魔女裁判)の盛んなりし頃、教会の指導の元白魔術は容認され黒魔術は退けられ・・といったあたりから現実の過去とはずれたビジョルドの作り上げた世界に誘われていく。この時代は世界史の中でも好きな部類にはいるのでそこがどう料理されているのかも興味も相まって、≪マイルズ≫を放ったまま先に読んでしまった。(^^;)
 少女と少年の冒険物語FT。モンテフォーリア小国に住まうフィアメッタは夢見る少女、魔術を学びたいのに父は真剣に取り合ってくれない。しかし小国をねらう敵がいた。城は占領され城に招かれていた父は死に、あまつさえその死が利用されようとしている。スピリット・リングに封じ込められようとされているのは・・・・。助けを求めた教会もなかなか動かない。自分の手でなすべきことをしよう。怖さに耐え勇気を振り絞って、二人は立ち向かう。
 物語に実在のモデルがいたとかで、その現実と虚構の取り混ぜ具合も楽しく物語を味わった。読み応えのある本はやはりいい。(^^)  (2.04読了 - 2001.02.05記)
流血女神伝
砂の覇王4
須賀しのぶ
集英社コバルト文庫

  小姓として落ち着いたかにみえたカリエだが、運命の女神は働くのがお好き。 久々にエディアルドと再会したそのときにもあまりのタイミングの良さ(悪さ^^;)はこの上ない。ドミトリアス皇子の戴冠式と結婚式に同行することになったその影には、バルアン王子の思惑も働いているだろうが、そこでこれから起きることといえば・・・。
 いずれの時代でも王族の結婚とか戴冠とかはまたとない外交上の舞台。表裏入り乱れての陰謀も飛び交うのかもしれない。そこで柳腰のコスチューム(ドレス)をまとうことになったカリエと彼女を取り巻く人々。さあいよいよ・・・といったところで話は次回が待たれる。 (2.05読了 - 2001.02.05記)


1月以前の<最近読んだ本>


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