えとせとら(2000年4月〜6月)


産業士官候補生
眉村 卓
角川文庫
 
 表題作を含む短編集。「工事中止命令」「最後の手段」「虹は消えた」「助け屋」「クイズマン」「ガーディアン」「スラリコ・スラリリ」「午後」「産業士官候補生」。昭和39年('64)から44年('69)年にかけて執筆されたものである。
 社会派SFといわれる氏の初期の作品だが、現代社会に入れられたメスは、いま読んでも古びてはいない。形は違えども、同じようなことがいまどこかで行われてはいないか・・。間違ったら、こんな路もありうるかも、という恐怖。笑いも苦笑いに化けてしまう。管理されるとは、それも知らぬまに、いや自覚のないままにと言い換えればもっとよいか、いまの自分のいるところが幻想なのか現実なのか疑ってしまうのだった。
 無任所要員ものの作品の中でもそうだが、ヒーローはアンチにしかなりえないむなしさ、つらさを思う。踊らされる日本、私たちはどこに向かうのか。  (2000.06.29記)
EXPO(エキスポ)'87
眉村 卓
角川文庫

 '70年大阪万博の2年前に執筆された本書。ブラッドベリー「華氏451度」、オーウェル「1984年」にみられる近未来の管理社会を描いている。それもこの作品はできあがった管理社会でなく、いかにしてそれが作り出されていくか。万博を中心に反体制(と思われがちな)住民運動もまきこんで時代の波が動く。
 この'84年すらすでにあとにしてしまった2000年の今、ここに書かれるような二律背反的な選択の時代のこないことを願う。
 万博を前に出品の競争が各社で激しく行われていた。「実感装置」(夢を作る装置)の開発を始めた大阪レジャー産業に系列財閥から圧力がかかった。反撃を開始する大阪レジャー産業。そこに海外の思惑はからむは、国内では女性党が反発するは、マスコミの寵児“ビック・タレント”の思惑はいかほどに・・・。
 そして登場する“産業将校”。社会が渦を巻いて動き始める。万博に企画から関わった人はどこへ行くのだろう。本書で警告された現代社会の危うさが、書かれたときより、標題の年より経てしまった今でも杞憂ではない部分もあって、どきりとさせられる。 (2000.06.29記)
“スキャンダル雑誌”創刊物語
『噂の真相』編集長日誌1
岡留安則
現代教養文庫
 
 1979年4月創刊号から、1984年3月号まで、5年間にわたる『噂の真相』誌の編集長日記。今でこそあちこちの雑誌での後記など面白い物もあるけれど、当時読み応えがあったのは、岡留さんのこれと、椎名誠&目黒考二コンビによる『本の雑誌』の2冊だったか。(『広告批評』は少しパワーダウンしていたし・・・)
 1984年に木馬書館から単行本で出された本誌、その時も読んだのだけれど、あれからすでに15年。いまあらためて読み返してみると(各号の目次もついているので)時代を読み直し、その時自分の思ったこと、してきたこと、振り返るのではなく今をとらえ直せる。
 いつの間にか読者も増えてwebページも立ち上げた「噂の真相」誌、休刊などといわず続いてほしいと願うのは読者のわがままか。  (2000.06.22記)
ジャーナリズム読本
柳田邦夫
青峰社

 「少なくとも私には、“雑文”にも、全力投球を惜しまなかった自負がある。ほこりがある。・・・」と、ギタさん(参照『書き言葉のシェルパ』はあとがきで語る。主として’82・83年に書かれたエッセイをあつめたもの。
 いくつかの題をあげてみる。「死んだ人にまで無礼千万な取材をするマスコミ」「野菜いためセットの悲劇」「生徒の自治能力を押しつぶす<生徒心得>」などなど・・・。
 今読んでも新鮮さの変わらない筆者の鋭さに驚嘆すべきか、はたまた変わらぬばかりかどこへ変化して行くかの時代に対する流される自分を叱咤して・・・なのか。のほほんと生きていてはだめだよと・・・。今にしてなお新しいエッセイ集。 (2000.06.22記)
怪傑ゾロ
J・マッカレー
角川文庫
 
 時は18世紀、ところはスペイン領ロス・アンヘレス(現カリフォルニア)。強きをくじき弱きを助けるマスクをかぶった騎士ゾロ。その正体は誰も知らない。
 彼を追うゴンザレス軍曹を初めとする総督側の一行。その非を糾さんと立ち上がるゾロに呼びかけられて集まった有力者の若き子弟たち。そしてあらぬ疑いを浴び迫害を受ける娘ロリータ。ゾロとロリータの出会い。
 決闘、恋、笑い、涙、驚き。はらはらドキドキ、懐かしの大活劇。 (2000.06.18記)
宇宙のスカイラーク
スカイラーク・シリーズ1
E・E・スミス
創元推理文庫

 なぞの鉱物”X”。それは限りない可能性を秘めていた。超高速宇宙船スカイラーク号を完成したリチャード・シートンは宿命のライバルデュケーヌに恋人ドロシーを大気圏外へと誘拐される。友人のクレインと追いかけるシートン。無事追いついて救い出したのもつかの間、エネルギーが切れてしまう。
 未知の惑星に降り立った一行を待ち受けていたのは異星人の戦闘。巻き込まれながらコンダール国に降り立ち助け助けられ、結婚式も挙げて地球に帰るシートンたち。
 これぞスペースオペラ。使い古された言い回しの 「手に汗握る・波乱万丈」がピッタリ。 (2000.06.11記)
スカイラーク3号
スカイラーク・シリーズ2
E・E・スミス
創元推理文庫
 
 惑星オスノームが壊滅状態に!! シートンたちは救援に向かう。そこで彼らを待ち受けていたのは異星人フェナクローンの容赦ない戒律を守る軍隊。彼らに対抗するのには力が足りない。オスノームに伝わる伝説をもとに探し当てたのは知識の巨人たるノルラミンの人々であった。
 力を合わせて新技術を開発し、敵に立ち向かう。同じ頃デュケームもフェナクローン人と遭遇して・・・・。
 新キャラ、特にノルラミンの生活はちょっとうらやましい感じもするのだった。闘争のないところに進歩はないというけれど。。。 (2000.06.11記)
ヴァレロンのスカイラーク
スカイラーク・シリーズ3
E・E・スミス
創元推理文庫

 デュケーヌの策略が始まる。なんとシートンたちの不在の間に地球を占領してしまったのだ。 
 新しい冒険を求めてシートンたちは宇宙に飛びたち4次元の世界に遭遇する。時間も空間も物質も歪んだ4次元の世界の生物との戦い、壊れた宇宙船の修理にたどり着いたのはヴァレロン。そこでは塩素を呼吸するクローラに支配されて苦労している人々がいた。クローラを撃墜し、ヴァレロンのスカイラークの建造に取りかかる。新しいスカイラークは彼らが出会った「純知性体」から得たものなどもりだくさんに積み込まれ、6次光線を使ってその知性体を捕まえることに成功する。知性体はシートンたちを分子に分解したがっていた。
 5次・6次光線。4次元の生物。言葉だけでもわくわくしてくる初期SFの醍醐味。(2000.06.11記)
スカイラーク対デュケーヌ
スカイラーク・シリーズ4
E・E・スミス
創元推理文庫
 
 シリーズ最終巻。銀河系外からの非人類の恐るべき侵攻。クローラ族による人類絶滅の破壊兵器。対抗するためにはすべての力を合わせねばならない。
 ラーディ族のもとにいたジェルミ人も、惑星レイ=シー=ニーの魔女(実は偉大なる力の流れの一部)も、もちろん宿敵デュケーヌとも。この惑星あの惑星、あの種族この種族、走り抜ける爽快感。銀河を巡るドキドキはらはらもこれで一区切り。 (2000.06.11記)
銀河市民
ロバート・A・ハインライン
ハヤカワ文庫

 少年は奴隷船に乗っていた。乞食のバスリムが彼を買う。とはいえバスリムの本当の姿は違う。少年(ソービー)はバスリムに導かれ成長していく。バスリムの死後ソービーはその遺言に従い恒星間宇宙船シス号に乗って九惑星連邦から脱出する。
 シス号は一族の船。船が故郷であり家族である。その一員として迎えられ火器管制員の訓練をつみ一族の暮らしにとけ込んでいく。一族が彼を受け入れたのは彼らがバスリムに「借り」があったからに他ならない。その「借り」はどうやらソービーの人生にも関わっていた。
 銀河連邦宇宙軍巡視艦にうつり、ソービーの身元(大企業の当主)が明らかになる。当主として考え行動し、なぞに困難に挑むソービー、その彼を支えるのは・・・。 (2000.06.03記)
スターマン・ジョーンズ
ロバート・A・ハインライン
ハヤカワ文庫
 
 航宙士になれると思っていたのに。伯父はギルドにマックス(ジョーンズ)を推薦していなかった。何をするのも職業選択は世襲制のギルドによるこの時代、彼はどうしても宇宙船に乗りたかった。
 偽りの身分で何とか恒星間貨物船に乗り込んだが、船の中で航宙士として訓練を受けることになった。頼りになる博士も失ってその貨物船はトラブルに巻き込まれる。船の銀河の位置がわからない。やむなくG型惑星に居住を試みる船の人々だったが・・・。
 少年の成長物語。ほのかな恋も微笑ましく。(2000.06.03記)
銀河おさわがせ中隊
ロバート・アスプリン
ハヤカワ文庫

 銀河最大の兵器会社の跡取りにして宇宙軍在籍のフール中尉。とんでもないミスをしたフールは辺境の地の落ちこぼれ集団、オメガ中隊の指揮官を命じられる。
 莫大な資産を有するフール中尉は問題の一部は金で解決する。たとえば、隊員に快適な環境を調えるためにホテルを借り切るとか・・。このあたりは筒井康隆の「富豪刑事」を反射的に思い浮かべる。型破りなフールはまた人材を発見し適材適所化するのもうまい。フールに巻き込まれたオメガ中隊のメンバーは落ちこぼれを脱却していつの間にか精鋭部隊に・・・。
 その精鋭化までの流れがドタバタの心地よいリズムに乗ってすすむ。隊員の一人ひとりが個性的で読んで繰り返して飽きがこなく文句無しに面白い。 (2000.05.22記)
銀河おさわがせパラダイス
ロバート・アスプリン
ハヤカワ文庫
 
 オメガ中隊の次の任務はカジノの警備。宇宙ステーションローレライはカジノ一色。新オーナーに請われて宇宙軍が受けた警備は一見楽そうに見えたが・・・。
 裏であやつるマフィアの女ボスマクシーン。中隊員はホテルの従業員などに変装しこっそりとそれぞれがローレライに入り込み、その代わりに中隊員の役をするのはそのまま雇われた俳優たち。
 降りかかる難題を例のごとくの機知と金と隠れた隊員の特技で乗り切るフール&中隊員。執事のビーカーの秘かな恋もなかなかな味わい。(2000.05.22記)
ねこの絵本
いもと ようこ
講談社

 ねこがいっぱい ある時は見開きの画面いっぱいにのびのびー。あっちでごろごろ こっちでふにゅふみゅ。
 いろいろなねこのぽーずがやわらかな画面上にひろがり見ていてあきない かわいい ねこだいすき の 絵本。 (2000.05.17記)
スイスのロビンソン
ウィース
小学館
 
 嵐が起こり船が難破した。 牧師一家はおけの船で近くの陸にわたる。島での生活は上陸の時の持っていった道具を生かしての自活。
 大蛇と戦ったりの冒険や島の探検、住まい作り、野生の動物の飼い慣らし(ダチョウまで!)、植物などの採集・・・。必要なものを作り出す知恵と力、協力にわくわくとする。
 繰り返し読み、買っても人に勧めてあげてしまい、また読みたくなっては買う、の繰り返しで、いま手元にあるのは5代目の本。無人島暮らしは無理でもアウトドアに飛び出したくなる。(2000.05.17記)
果てしなき旅路
ゼナ・ヘンダースン
ハヤカワ文庫

 ピープルシリーズ 超能力を持っているけれどその事実を普通人に知られないようにひっそりと隠れて暮らす人(個人あるいは集団)が、仲間にめぐりあうまで、という話のパターンがいろいろ。同胞(ピープル)が何故隠れるようになったのか、故郷とは・・。話が絡み合いながら章が進むにつれてなぞが解かれていく過程もぐいぐい引き込まれる。
 最初にSFマガジン誌上で読んだ「アララテの山」。この連作短編(長編)の第1章でもある。その第1章、何故か教師のいつかないゴーストタウンに一人の女教師が赴任してくる。隠すために守らねばならない秩序というものは子どもたちにとっては負担だ。チョークを動かしたり岩を浮かべたりしてしまっても無理はない。ある時山火事が起こりそれを回避するためにヴァランシーは・・・・。
 物語の聞き手の少女リーと共に喜びに浸る一瞬。(2000.05.13記)
惑星カレスの魔女
J.H.シュミッツ
創元SF文庫
 
 商業宇宙船のパウサート船長はついつい、幼い奴隷三姉妹を助ける。が、この3人は魔女だったのだ。彼女たちをカレスに届けた船長は禁断の星に立ち寄ったとして帝国警察におわれる身となる。実は帝国の要人はカレスの人々しか知らない脅威、人工頭脳モーンダーの傀儡であった。
 シーウォッシュ・ドライブ。超能力による超空間航行。冒険冒険。はたまたトラブル。銀河を縦横に渦巻きながら三姉妹ににこにこ。読んで楽しいスペースオペラ。(2000.05.13記)
そばかすの少年
ジーン・ポーター
角川文庫

 『舞い落ちた羽』と作者はまず題を付けたという。 たしかに。リンバロストの沼地に舞い降りた1枚の羽が、少年の心を開き大伽藍をつくらせ沼地の「エンゼル」を守りぬくことになる。
 幼い頃の事故で片腕を失いかつ孤児として苦しんできた「そばかす」は、沼地の番人になることができた。来る日も来る日も森の中を歩き回る。境界線を見張り、木を守る。彼が沼地で発見したものは・・・。読みながら自然の美しさ、神秘に心が洗われる。
 竹宮恵子さんが確か「別コミ(別冊少女コミック)」でマンガ化もしていた。このマンガがまさに原作の雰囲気通りの感動もの。言葉など変えてしまう原作に名を借りたいいかげんなものを見せられていたものにとって、竹宮氏のこの作品は「これこそが・・」と、出だしから引き込まれた。支配人と会ったときにそばかすが身なりを整える仕草、アイルランドなまり・・・・。その後「そばかす」本文を読み返すときに常に竹宮さんの絵がよみがえる。(2000.05.13記)
リンバロストの乙女
ジーン・ポーター
角川文庫
 
 母と二人暮らしのエルノラは高校へ行きたいという夢をあしらわれ学費を自分の手で作り学校へ通うことにした。その学費はリンバロストの森の蛾や植物の標本を森のおばさんに売って得ることに。学校に行き続けることにも困難はあったが雄々しく立ち向かうエルノラと彼女を支える人々。そのなかには「そばかす」ことオ・モーア卿夫妻(もちろん奥様はエンゼル)も。
 夫の死の秘密を知ったエルノラの母は変身して、リンバロストの自然の中で幸せを取り戻した母娘の前に一人の青年が登場する。やがて・・・。
 蛾の対の標本の美しさは夏の灯りに飛び込んでくる虫を見ては眉をひそめている日常からは思いも及ばないことながら、語られる自然の美しさ、すがすがしさ。神の作りたもう大伽藍の前にはだれでもぬかずかすにはいられない。信仰もないのに敬虔な気持ちになる一瞬。(2000.05.13記)
カムイの剣
矢野 徹
新潮文庫

 翻訳では知る人ぞしる矢野さんの長編冒険小説。手元にあるこの文庫の解説は星 新一さんによるもの。翻訳SFを読むとき、矢野さんの訳なら、と飛びつくように買った日々(他にも何人か、そういう訳者の方おられますが)。
 時代は幕末、北海道を舞台に始まるこの話が、あの海賊の覇者キャプテン・キッドの秘宝につながるとは・・・。
 明治維新でおなじみの人物もあらわれ、一気に最後まで読み干してしまう。それも何度も、の痛快感。西郷隆盛がいてマーク・トゥエインが登場して、あの人この人、わくわくとうれしい本。(2000.05.01記)
月と炎の戦記
森岡浩之
角川書店
 
 日本古代が舞台のファンタジー。天照大神が天の岩戸にこもってしまったときに起きたこと。そのときの「地」は?
 三貴子の一人、月読の命(つくよみのみこと)がした冒険。もしくは神ではない人の少女、カエデと、月読の命の従者(大兎)ツユネブリの奮闘といったらいいのか。
 それにしても神を召還するのに脅し罵る方が効果的とはいかほどに。ここに顕れる神は血と肉を持った現実だ。(2000.04.29記)
なぞなぞえほん 1〜3  のまき
中川李枝子 さく
山脇百合子 え
福音館
 
 「ぐりとぐら」の絵本でおなじみの作者コンビによるなぞなぞの本。12.5cmの正方形型の可愛い本で、見開きの左が絵、右は問題で、次のページに小さな時で答えがこっそり(という感じ)書いてある。
「ぐりとぐらかるた」にもいえることだけれど、言葉がとてもリズミカルで繰り返し繰り返し、口の中で跳ねて転がる。声に出して読むときの快感。
 もう絵本はとうに卒業した子どもたちだけれど、「かるた」と共に手放せずに時々パラパラ見ている。絵のキャラクターにもなつかしい思い出がいっぱい。(2000.04.22記)
書き言葉のシェルパ
柳田邦夫
晩聲社

 それでも君はジャーナリストになるかと副題のついたこの本。自由を愛し言論の自由のために命をかけ続けた著者の心の叫びに押しつぶされそうになる。
 ギタさん、と親しい方は呼んだと聞いている。私たちはギタ先生と呼ぶことのできる機会を得た。中央公論を退社後フリーの編集者となった著者が編集者を語りながらそこにすべての人間が生きていく上での基本を読み手に突きつけてくる。
 ジャーナリズムのあり方をのぞくにも役立つ本。語り口のリズムが心地よい。(2000.04.16記)
ハリー・ポッターと賢者の石
J.K.ローリング
静山社
 
 バックにきっちりファンタジーの設定があるので安心して読み始めて書き出しからはまってしまった。全体に流れる魔法の匂いがよい。小道具(フクロウとか)が決まっている。
 親戚に邪険にされながら育ったハリーが誕生日に受け取った手紙は・・・? 舞台は学園もの、成長もの、そして謎解き。わくわくはらはらしながらページを繰った。続編が楽しみ。(1月中旬読了 2000.04.16記)
シーシュポスの神話
カミュ
新潮社

 坂を転がり落ちる岩を永遠に押し上げ続けるシジフォス。ギリシャ神話を題材に取り上げながら「太陽」「光」「死」。そこにあるのはきらめくばかりの命。
 >感動することになれなくちゃいけない。自分が本当に感動したときに、それが嫌にならないように。


 上の引用は初めてこの本を読んだときに本に書き込んであったもうインクの色もあせている1文。感動や経験を共有できないような孤立しているような自分が嫌だったとき、生も死も見つめたカミュの描く人物にどれだけ救われたか。作品「幸福な死」と共にいつまでも離しがたい本の一つ。
 実はこのカミュとの出会いが進路選択を180度変換させねじれ人生の一歩を踏み出したのではないかと思い当たらなくもない。(2000.04.16記)


みさとの本箱にもどる

The Rites of Passage 〜みさとのごった煮〜にもどる