クロガネモチ Ilex rotunda

クロガネモチ(1999.10.24:長居植物園)

クロガネモチ(1999.10.24:長居植物園)

モチノキ科* モチノキ属 【*APGⅢ:モチノキ科】

Ilex :セイヨウヒイラギ  rotunda :丸い、丸みを帯びた

小学生の頃、八尾の龍華(りゅうげ)にある鉄道官舎に住んでいましたが、 線路を越えたところに渋川神社という小さな社(やしろ)があってよく遊びにいきました。

線路にすぐ接してクスノキが2、3本あり、そこではワラ縄をたらしてタ-ザンごっこで何時間も過ごしました。 もう少し左側、社殿の正面にはひと抱えもある大きな木があって池の上まで枝を伸ばし、 背丈ぐらいまでは登れるものの、それ以上登るには手がかりが無いという木がありました。 冬には赤い実を付けるのですが、樹肌や枝はまっくろで、ちょっと触るとすぐに手が汚れ、 立派なわりに汚い木でした。この木の名前がクロガネモチだと知ったのは、大学をでて本格的に木の名前を勉強してからのことです。

クロガネモチは、赤い実の美しさと、サイズが大きくなるのが好まれて、多くの神社やお寺に植えられる一方、 学校や公園、あるいは個人の住宅の庭でも非常によくみかけます。 子供のころ肌で知ったクロガネモチは、樹肌も葉もちょっと触っただけで手がまっくろになるので、 この木はこんなものだと思っていましたが、これは、すぐそばを日に何十回も往復する機関車の吐き出す煙のススで汚れていたので、 本当は、かなり白っぽいきれいな肌をしているものだとは随分後になって気がつきました。

モチノキ属にはアオハダやウメモドキのように落葉性の樹木もありますが、 ふつうに山の中で見掛けるものにはイヌツゲソヨゴ、ナナミノキなど常緑のものが多いようです。

図鑑にはクロガネモチも山野に普通にあると書いてありますが、 小さな実生は別にして大きな木を山の中で見かけた記憶があまりないのは、わたしの経験がまだ十分では無いのかも知れません。

クロガネモチとモチノキを比べますと、モチノキは葉が分厚くて黄味がかっており、 クロガネモチは葉がうすくて上面の緑色が濃く、また葉柄の部分がやや紅色を帯びていることで区別出来ます。 実の大きさも、モチノキではやや大きく、クロガネモチでは小さいという差があります。 なお、モチノキ属の樹木はふつう雌雄異株で実のなる木とならない木があり、 クロガネモチやモチノキの庭木としての価値も雌雄で大いに違ってきます。