例年9月10日ごろをすぎますと朝晩の気温がめっきり下がり、季節の 変化を肌で感じることができます。それは植物でも同じなのか、激減したとはいえ、 アキノタムラソウやツリガネニンジンなど秋の草花が咲きはじめますし、 ガマズミやムラサキシキブなども色づきはじめます。ウメモドキもそんな 仲間で、場所によっては9月はじめには、細い枝いっぱいに真っ赤な実 をつけているのを目にします。
「もどき」というのは「似たように作りたてられた」という意味です から、ウメモドキとはウメに似た木ということです。ただ、どこがウメに 似ているのかについては、葉が似ているとか、枝の出方が似ているとか、 小さいけれど花の形がそっくりだから、など諸説がありますが、 モチノキ科のウメモドキとバラ科のウメとでは類縁関係は遠く、 私にはそれほど似ているように思えません。
ウメモドキの属するモチノキ属にはソヨゴやクロガネモチなど常緑性の 高木も多いのですが、ウメモドキは落葉性の低木です。山中のやや湿った 環境に多く、真夏には見過ごすことがあっても、果実が真っ赤に色づいた 時には決して素通りできない美しさを誇ります。ただ、ほかの モチノキ属の樹木と同じように個体によって雌雄が異なり、実をつけるの は雌株だけに限られます。
初秋に色づいたウメモドキの真っ赤な実は、葉が黄葉し、落ちた後でもまだ残って います。そのため庭木としても大変好まれ、よく植えられています。 なかには黄白色の実をつけるシロウメモドキやキミノウメモドキなどの品種があるほか、 ごく小さな葉と実をつけるコショウバイという品種もあるそうです。