ソヨゴ  Ilex pedunculosa

ソヨゴ(若草山(奈良市):2001.11.1)

ソヨゴ (奈良・若草山:2001.11.1)

モチノキ科* モチノキ属 【*APGⅢ:モチノキ科】

Ilex:セイヨウヒイラギ pedunculosa :花梗のある

ソヨゴは大阪近辺の山にはごくふつうにある木で、里山で最初に覚えるべき木のトップ・テンに入るのではないかと思うくらいです。ややぼってりとした感触の、分厚い常緑の葉が枝先に集まり、葉の表面は黒っぽい緑色で裏面は表面よりはやや色が薄いようです。葉が分厚いせいか、主脈はともかく側脈は目立たず、最初は何となく取っつきにくい印象を持ちましたが、鋸歯のない葉の縁が波打っていること、そして何よりも、「この木は、枝を振るとソヨソヨと音がするからソヨゴだ」と、冗談のような名前の由来を聞いてからは、山のなかでいっぺんに目に付くようになりました。内心、どんな木でも枝を振ればソヨソヨ音はするじゃないかと思いながらも、この木を見るたびに枝を振っては名前を確かめた記憶があります。

ソヨゴは他のモチノキの仲間と同様、雌雄異株で、秋に赤い実を付ける木と実を付けない木があります。ただ、実の色は木によってかなり違うようで、鮮やかな赤色のものからくすんだ暗赤色のものまでいろいろあるようです。同じモチノキ属の常緑樹のなかで、モチノキ、クロガネモチ、実の色は違いますがイヌツゲなどは庭木として頻繁に植えられているのに、ソヨゴが庭木や公園木として利用されることはごくまれです。モチノキやクロガネモチは赤い実を付ける雌木が価値が高いのは当然で、そのことはソヨゴも同じはずです。それが、庭木や公園木としてあまり利用されないのは、モチノキやクロガネモチにくらべ、雌木の接ぎ木や挿し木による繁殖が困難なのか、根が弱いため移植が困難なのか、本当のところはよく知りません。

(今日、石川県の造園会社の方から、「現在石川県能登地方においては、山から採ってきたソヨゴを日本中に流通させている。また、四国・近畿・中国地方などでも山採りしてきたものを大きく育て、盛んに出荷している。関東地方ではガーデニングブームの影響で大変人気が出ている」という情報をいただきました。それにしても、何百年と続いた日本の造園技術の中で、ソヨゴがクロガネモチやモチノキのように定着しなかった理由は何にあったのでしょうか。(2002.1.14))