モチノキ  Ilex integrata

モチノキ(五月山(池田市):2005.11.30)

モチノキ (五月山(池田市):2005.11.30)

モチノキ科* モチノキ属 【*APGⅢ:モチノキ科】

Ilex:コルクガシに似た葉をもつ木  integrata:全縁の

モチノキはクロガネモチほど多く植えられているわけではありませんが、それでも公園樹や庭園樹としてよく目にする常緑広葉樹です。大阪でも南部に自生があるそうですが、私は見たことがありません。葉は有柄で互生し、厚い革質で、ふつう、全縁です。多くの場合、上面は深緑色、下面は淡黄緑色で、中肋は下面で隆起しています。しかし、日陰のものは葉がやや大きく薄くなっていますし、生理条件によっては葉の上面が黄緑色になっている場合もあります。また、スス病にかかりやすいという欠点もあります。

モチノキが庭木や公園樹としてよく用いられるのは、秋にたくさんの赤い果実がみのり、人々の目を引くからです。ただし、クロガネモチをふくむ多くのモチノキ科樹木と同様、モチノキも雌雄異株であるため、果実がみのるのは雌木だけです。したがって、造園樹としての価値は雄株と雌株でたいへん違います。モチノキの果実は鮮赤色で直径1cmくらいの大きさがあり、果実が小さく2~3mmで、深紅色のクロガネモチとは異なります。

モチノキという名前がこの木の樹皮から鳥もちを取ったことに由来することは容易に想像できますが、樹皮から鳥もちのとれる木はモチノキに限らず、クロガネモチ、イヌツゲ、タラヨウ、ソヨゴ(いずれもモチノキ属)などがあり、また、ヤマグルマ(ヤマグルマ科)の樹皮からもとれます。鳥もちの品質についてはモチノキが最高で「本もち」というと書いた本と、ヤマグルマの方が上だと書いた本の両方があります。

鳥もちをつくるには、春から夏にかけてモチノキの樹皮を採取し、数カ月間水に浸けて腐敗させたあと、臼でついて組織片などを洗い流すと鳥もちだけが残るそうです。鳥もちの主成分は黐蝋(もちろう)と呼ばれるろう質の物質で、アルコールなどの有機溶剤には溶けますが水には溶けないのでこのような簡単な方法で取ることができるそうです(朝日百科・世界の植物4)。