イヌツゲ  Ilex crenata

イヌツゲ(高安山(八尾市):2005.4.19.)

イヌツゲ (高安山(八尾市):2005.4.19)

モチノキ科* モチノキ属 【*APGⅢ:モチノキ科】

Ilex:セイヨウヒイラギの古代ラテン名  crenata:鈍鋸歯のある

イヌツゲの果実(2011.12.3.) イヌツゲは大阪付近の山にごくふつうに生えている雌雄異株の常緑性の低木で、アカマツなどが生える二次林の代表種の一つです。大きいものですと幹の直径が 20 cm、高さ10 m 程度に達するものがありますが、ふつうはもっと小さなものが目につきます。これは、大阪近辺の山では比較的短い周期で山の木が切り倒され、切り株から新しく芽を吹いて森林が再生していくという二次林特有の歴史が関係しているのかもしれません(右写真:イヌツゲの果実(池田市五月山 2011.12.3))

マメツゲ(大阪府立大学:1999.8.7) イヌツゲは公園樹や庭木として非常に重要な位置を占めていますが、これは刈り込みに強く、その萌芽力が大きいことによるといえるでしょう。かなり太くなった幹をばっさり切っても、その切り口からたくさんの新芽が出てきて、すぐに木としての形を作っていきます。そのため、生け垣やまるく半球状に刈り込んだり、時にはいろいろな動物の形に刈り込んだりして植えられています。また、イヌツゲには葉の形や大きさ、斑(ふ)の入り方などにかなり大きな変異があって、たくさんの変種や品種が区別されています。その中でも非常によく見かける園芸品種にマメツゲと呼ばれるものがあり、これは名前のとおり葉がダイズほどの大きさで、表面に丸くふくれたようになっています(右写真(大阪府立大学:1999.8.7))

イヌツゲはかなり乾燥の強い環境にも生育していますが、一方で湿地の植物でもあります。たとえば京都にある天然記念物の「深泥が池(みぞろがいけ)」という湿地の浮島にもたくさんのイヌツゲが生えていますし、各地の湿地には必ずといっていいほどイヌツゲが生えています。形態的な変異の幅が広いだけでなく、生育環境に対する変異の幅も広いのかも知れません。

なお、植木屋さんはイヌツゲのことをツゲと呼ぶことが多いのですが、本当のツゲ(ツゲ科)は葉が対生しており、葉が互生するイヌツゲとはまったく違っており、区別は容易です。