2000年12月11日(月)
札幌:ペニーレイン24


●セットリスト

  1. 女を捜せ
  2. ダブルバーガー
  3. ドラキュラ
  4. MP
  5. 地球独楽
  6. セックスサファリ問題OK
  7. インソムニア
  8. 神々のチェス
  9. ORANGE MECHANIC SUICIDE
  10. 愛の薬
  11. 殺し
  12. ショウマン
  13. 液状チョコレート
  14. 大車輪
  15. Kick Out The Jams (MC5 のカヴァー)
  16. Hum a Tune
  17. ハニーフラッシュ
  18. ティラノサウルス
  19. アポトーシス
  20. 地球独楽リプライズ
  21. R&R
    <アンコール>
  22. BODY FRESHER
  23. 夜をぶっとばせ
    <特別アンコール>
  24. 夢を見る人



さかまき
最前列木暮前

 今回はワンチャンス! すべてを賭けてきました。

 …の割には、首の痛さが去年や一昨年よりちょっと弱いかも。最前列で首振っていて、目の前が暗くなるようなこともあったので身体が少しブレーキを掛けてしまっていたのかしら。
 …と思っていたら、2日遅れで痛くなりました。木曜日あたりがピーク。もう若くないのね。自分でもおかしいから少し笑った。

 さて、仕事を休んでの参戦。前日のライヴ(←伏線あり)の興奮も覚めやらず。
 ペニーレーン24の「24」は、西24丁目にあるというだけの意味。
琴似という、札幌市街の西の町(東京でいえば中野みたいな位置)にあるライヴハウス。
17時半に着いた時は、タジマニアのカミさんは先に会社の上司さん(年下)と会場に来ていました。上司さんは販売を終了されて前売りを買えずに、当日券を買うそうで(買っとけっつーの)。会場のスタッフに聞くと開場してから売るとのこと。
 「当日券出ますか?」と聞くと「全然大丈夫ですよ」と即答…。

 会場15分前になると、ビルの2階の「待合所」のようなところで整列。ロッカーがあったのでここで荷物を預け、上着も脱いでTシャツ一丁になる。だが周りを見ると、みんな上着1枚羽織っている。自分一人だけ「やる気充分」をアピールしまくっていた。整理番号は20番と早かったが、前に実際に並んでいる人が10人以上。しかし全体を見回すと、会場前にこの「待合所」で待っていたのは70人くらい。ちょっと熱気に欠けているのが気になる。みんな長袖羽織ってるし(くどい)。

 開場すると1階の入口へ行くのに一瞬屋外へ。Tシャツ一丁で氷点下はイタい。
 ツアーグッズを横目に会場へ一直線。ちょっと走りました。すいません。

 ゲットした位置は、木暮氏のモニタ−スピ−カーの前。もちろん最前列。最前列は開演までの時間が地獄なのだ。しかもスタンディング会場ってなぜか1時間も待たされる(のんびりできるはずのホールは30分しかないのに!)。ビールを呑んでいる後ろがうらめしいぞ。待っている間はカミさんと「あれは川崎だ」とか「クアトロがどうの」と話していたのだが、よく聞くと周りも「ブリッツ」とか「大阪」とか言っている。なんか北海道のファンっていないのかなぁ…とまた一抹の不安。

 その会場の広さは、ステージの大きさ自体は川崎のチッタくらいだが、客側のフロアは3分の2といった感じ。フルで4〜500人くらいか。開演時間が近付いてきて後ろを見ても、後ろの方まで人がいる気配があまりない。一番後ろ側は、明らかにスカスカだった。いやぁ、これなら後ろで盛り上げ部隊になった方がいいかなぁと思いつつも、やっぱりそのまま踏み止まった。2回観られるなら、絶対にどちらかは後ろで騒ぐのだがなぁ…。

 で、ライヴ本番(前置き長過ぎ)。

 SEもなしにメンバーが登場。

 木暮はつなぎ。ザンバラ頭のように両脇に髪を垂らすだけの髪型。
 L?K?O も同じ髪型になっていた。
 松ちゃんは耳付きの毛糸の帽子を。かわいい。
 神田さんもニットの帽子(ジャコパス風)で、典型的ベーシストファッション。
 田島は普通に今回のツアーTシャツでした。最初に何か着ていたけど忘れてしまった(むろんセーラー服でなく)。

 「イエーッッッッ サッポロ!」と田島は怒鳴るのだが、なんとヴォーカルマイクが綺麗に聞こえてこない! 最前列の悲しさか。

1.女を捜せ
 「キィーッキィーッ」のお馴染みのサイコSEでスタート。
 珍しくも2ツアー連続して同じ曲のオープニングとなるわけだが、前回とは意味合いが全然違うわけで。前回はとまどいつつも盛り上がった客は、今度は遠慮なく盛り上がる。
 木暮氏のギターがさっそく冴えまくる。ギターを高く掲げてヴォーカルマイクを通して音を出したり、真面目な顔して身体は派手なパフォーマンスをしたり。

2.ダブルバーガー
 立て続けに前ツアーから演奏の新曲。この繋がりはやっぱり盛り上がる。とはいうものの、ずーっと首を降りっぱなしで、ステージは全く見ていない…。前のように田島と木暮は背中合わせで間奏のギターを弾いていたっけ? L?K?O のサンプリングもちょっとよく聞こえなかった。

3.ドラキュラ
 前曲からギターの音を繋げてそのまま始める。シンプルなギターリフが非常にクール。サビに来ても同じリフを刻むあたりが、もうメチャクチャかっこいい。XXXツアーの「ブロンコ」(つまりは『XL』収録ヴァージョン)に匹敵する。これからももっとこの曲を壊しつづけてほしい。

ここでMC。
「サッポロ! 北海道のみんな元気!? 拓銀潰れたけど元気でやってる!?
#余計なお世話だっつーの! (^^;
次は『MP』という曲をやります!」

4.MP
 ほとんどラップとなっているこの曲。田島の手が自然に振られている。
 少しテンポを落とし気味だったが、タイム感を優先させるためのようだった。おかげで原曲のタイトな感じを損ねず、完璧な演奏。ほとんどの歌詞を口ずさんでいる自分に驚く。

MC。「イエーッ! ススキノ! 次はススキノに捧げる曲です!
あ!間違えた。それはその次の曲!」 < またやってる

5.地球独楽
 前にヴィデオで演奏を見た時にはメロウな感じで演奏されていたので、CDではみられるハードな部分との両立は難しいのだろうと思っていた。
 でも、そんな心配は無用だった。メロウな部分とハードな部分のコントラストを強調した演奏で、目眩感も広大な宇宙感も完全に再現していた。田島の実験精神と持ち前のメロディとが見事に融合されて、引き出されて、とにかく言葉もないくらいすごいライヴヴァージョンだった。
 中間部の「ダーリーン」のフェイクは、「接吻」のそれを超えたトリハダ物。この中間部は広大な宇宙へポーンと放り出された気分にさせられるけど、その前後のホールトーンスケールの部分との対比で考えると、この曲全体はまさか惑星探査船の「スィング・バイ航行」のアナロジーなのかな、なんて考えてしまう。
 ストリング部をフォローする木暮さんのギターの入り方がまた最高。ジッと黙って立っていて、ギャーンと弾く部分だけ動くんだよね。轟音なところは「STARS」を彷佛とさせて、やはり2曲の連関を認識できた。
今回、「STARS」がカットされたのは結構悲しかった。
「ディア・ベイビー」のようにあまり演奏されない曲になってしまいそうで。

 演奏後、「田島さんセクシー!」と最前列の女の子が叫ぶ。
 田島、ちょっとムッとした感じでなにか言い返していたが、聞こえなかった。
 最近はこの手の声援にはマイナスの反応するみたいですね。

6.セックスサファリ問題OK
 ハッキリ言ってこのペニーレーン、音があまり良くない。目の前のモニタースピーカーから聞こえる木暮のギター以外は、みんな拡散して聞こえる。たぶん最前列だから、というわけでもなかっただろう。でもこの曲の場合は、そんな音の粗さがかえってヴォリューム感を増やしていたように聞こえたのでよかった。
 ムーグシャウトのところでは、マイクのコードを鞭のごとく振るう田島。ススキノに捧げた割りには「サッポロあたりサファリ」だった。残念ながら銅鑼はなし。

MC。「次は不眠症の歌です! みなさんコンビニ行ってますか?」
すかさず「セイコーマート!」と合の手を入れたのだが、メンバーには伝わらなかったようだ。客には受けたけど。

7.インソムニア
 なんと言ったらいいのか、けだるさと覚醒ぶりが両方交ざったアレンジ。
 今までのアレンジで一番好き。というか、なかなか好きになりきれなかったこの曲で、はじめて心底シビれた。

8.神々のチェス
 順序的にこの曲が来るのは知っていたが、イントロだけではぜんぜん何の曲かわからなかった。前曲にもましてアレンジの妙が光った曲。元は諦念の思いが強い曲だが、なにか新世紀へと繋がる力強さを感じた。つい「ナイスアレンジ!」とベタベタな声援を飛ばしてしまって周囲の失笑を買ったが、本当にそれ以外に言い様はなかった。

 この2曲の並び、セットリストを見ていた時は、正直「中だるみ」の時間だと思っていた。しかし実際にはそれどころか、今回のツアーの「核」の部分なのだった。ツアー前に田島は「『ELEVEN』以降の世界観を伝えたい」のようなことを言っていたのだが、このあたりがそうなのかな。「21セイキノネムラナイヨル」とか「100years」とか、そういうものが(うまくまとめられないけど)。

幻の1stアルバムが云々…」という長いMC(内容はいつもどおり)でこの曲。

9.ORANGE MECHANIC SUICIDE
 そういえば初めてライヴで聴く。アコースティックでないのも新鮮。
 完全に一人舞台。最後は「自殺!」。

10.愛の薬
 ギターを置いて、ジュリーのように熱唱する田島。ぜんぜん寺尾聡じゃないじゃん(笑)。

 演奏後、最前列の女の子の格好に気付いて「DMのTシャツ着てるヤツいるな。なかなかいい趣味してるじゃん」みたいなやり取りをする。会場は「『DM』ってなに?」とそんな雰囲気になる(自分もわからず)。「あ、『DM』知らない? そんなもんかな…」と淋しがる田島。
 あとでその当人からメールをもらって「DM」のことをきいたら、なんのことはない、DMBQ のことだったのでした。

 そのやり取りのおかげで、「おはロック」のことを言わずに次の曲へ。残念ながら「バベル」はやってくれませんでした。やっぱ言っときゃよかった!(>_<)

11.殺し
 アレンジは原曲に近かったが、最後は松ちゃんのサックスソロ。
 ここで会場からたくさんの「松ちゃん!」コール。
 その合間に「野菜!」と叫んだのだが、まわりが「何?」という感じで囁き合っていた(そりゃわからんだろうに^^;)。

 いつのまにかキーボードに座る田島。キーボードの話でもするのかと思っていたら、「後ろの方、盛り上がってますか? 前の方はギャーギャー騒いでますけど」と、最前列を指して言う(指された(^^ゞ)。

12.ショウマン
 田島初のキーボード曲。もっともピュアな形で「田島メロディ」が表出されて、まるで全編がサビのような美しい曲。「"Let It Be" がシンプルな曲なのは、ポールがギターほどにピアノを使いこなせていなかったためだ」と田島本人が語っていたことがあったけれど、この曲はまさにそれだと思う。
 田島の鍵盤を引いている全身を見てみたかったのだが、残念ながら顔しか見えなかった。でももう、だいぶ危なげなく安定して弾いていた。

 前に戻って「ライト眩しいな、ちょっと落としてよ!」と言い出す田島。ちょっとライトを落としてもらって観客が見えるようになると、また「後ろ盛り上がってますか?」。
「そこのサラリーマンの彼、きっと彼女に連れられてきたのかな?」
余計なお世話だっつーの(^^;。でもこの莫迦MCはツボに入りました。
なおも後ろのカップルに話し掛ける田島。
「あぁ、夫婦なのかもしれませんね。それじゃ、次はセックスについての歌ですから」

13.液状チョコレート
 骨太なハードアレンジ。後半の盛り上がりがまた最高。
 でも首を振りつづけていたのでステージ状態は不明。

14.大車輪
 やはり今回のツアーではこの曲は外せない。こういう「変な曲」は田島ならでは。
 木暮氏の空中独楽回しは、見事成功! モニタースピーカーの上で器用にも。後で知ったのだが、スピーカー上はこの日がはじめてだったらしい。
 でも基本的に首を振りつづけていたので、他のステージ状態は不明(笑)。

ここでL?K?Oがマイクを。
「Fuckin' Kick Out The Jams!」

15.Kick Out The Jams (MC5 のカヴァー)
 こんなにパンキッシュな曲だったのね。
 一瞬も休まず首を振りつづけていたのでステージ状態は一切不明(笑)。

16.Hum a Tune
 これも「ナイスアレンジ」。元曲の爽やかさが少しドライになった感じ。その乾き具合がクールでいい。「インソムニア」同様、これまでの同曲のアレンジでは群を抜いている(もっともライヴでもあまり手の加わらない曲だったのだが)。アレンジの充実度は、田島の好調さのバロメーターのひとつだと思う。今の田島の状態はそれだけいいということだ。

 ここで嬉しかったのが、客との掛け合いがあったこと。LSDツアー以降、ライヴのテンションはずっと高かったのに、この掛け合いが復活することがなくて不思議だった。「スクリーーーーム!」のなんと懐かしいこと。

17.ハニーフラッシュ
18.ティラノサウルス
 ここでこの2つを続けるというのは、なんとも豪勢な感じがします。
 (さすがに記憶が飛んだ…)

19.アポトーシス
 やっと一息(笑)。しかし田島の身に異変が!
 1番を歌い終わったあたりから、鼻を拭い始めた。
 そしてその目は涙で潤んでいた。
 あたたかい星の涙を浮かべて歌う田島。
 「アポトーシス」な者達への思いにかられたのだろうか。

 自分は隣で黙々とギターを弾く木暮氏を見た瞬間、フィッシュマンズの佐藤伸二の音楽葬へと意識が飛んだ。1年前の3月、小雨降る薄暗い日。斎場に入ると、大きな遺影の前に小さな骨壷があった。人は本当にあれだけの大きさになってしまうのかと思った。その周りには音楽ではなく「音」が迸っていた。入り口で渡された白い花を壇に手向けて、出口の方へ向かうと有志のバンドのメンバーが演奏をしていた。一心不乱に演奏を続ける彼ら。そのときギターを弾いていた当人が、今、また目の前でギターを弾いていた。

 平井氏の刻むハイハットが(レコードではそれが "最後のフィッシュマンズ" 茂木欣一だったわけだ)、なんだか命の残り時間を刻む時計の音のように聞こえた。

20.地球独楽リプライズ
 ピアノのリフレインのところでは、時間が止まったかのような空気になる。
 それがまた平井氏のドラムでゆっくりと動きだし、次第に最高潮の渦へと。
 どんどんと高みへと達していき、ついに訪れたビッククランチの瞬間。

 すべての楽器は最大音量で鳴り、会場は「ひとつ」の点として無理矢理押し込められてしまった。喜も怒も哀も楽もすべてが取り込まれた瞬間。

 今にして思えば、今後のツアーで「リプライズ」なんてもう演奏されないだろう。そして次の曲へ繋がるあの一瞬の間を、もうライヴで体験することはできないのだろう。

21.R&R
 そして浮世に落下してきた田島大王。
 ビッグクランチという究極の世界の最後が訪れたにもかかわらず、それさえもはみ出してしまう過激な過剰。それこそがR&R。

<アンコール>
 木暮さんの「1、2、3、ダーッ!」と共にアンコール開始。

22.BODY FRESHER
 ドラムソロから始まる1stアルバムに近いアレンジ。

23.夜をぶっとばせ
 いやもう、この2曲のアンコールなんて、違法的必殺ラインナップ。グルーヴ感よりもビート感の方が出ていて、正に「今」のヴァージョンとなっていた。
 そういえば、これのバンドヴァージョンを聴いたのははじめてだった。

 そして終了。今日は田島の機嫌はよさそうだったが、顔が高潮していてやっぱり風邪は治っていないような感じだった。おたふく風邪になってもわからんかもしれないけどね。^^;
 それに途中のMCにも見られたように、客側の盛り上がり方がイマイチな感じ。後半の曲間はもう声援も飛ばずにシーンとすることも何度か(疲れたのだろうけど)。だからまぁ、ほとんど期待していなかったのだが、ライヴ自体は文句のないものだったので、いつものように拍手は止めなかった。周りもやはり知っているのか(終わってから張り切るのもいるが)、3分の1くらいの人はその場に居続けていた。
 そして来た! もう演奏しなくていいから、それで充分!と思ったのだが、出た以上はやってくれるわけで。

<特別アンコール>
24.夢を見る人
 アコースティックの「夢見」といえば、ほとんどの人は96年の方を思い出すのだろうけど、個人的にはやっぱりその前の大阪・飛天の方。あのときの感動ふたたび。
 「君の物語風に叶うのなら」を2度歌ってしまうなど歌詞的には混乱していたけど、もう演奏の方はしっかりとしていました。

 この日の公演に行く前にいくつかの LIVEGRAPHY の投稿をいただいていまして、その中に「10年ファンやっているけれども、今回は3本の指に入るライヴ」と書かれていた方がいました。そのときは、FIREWALKINGXXX も充分良かったのに、と思ったのですけど、実際にライヴを見て自分も正にそう思いました。はじめて見た94年のライヴ、そして97年のクアトロは「別格」としても、それらに優るとも劣らないすごいライヴでした。ここのところ1ツアーで1回しか見ないというのがいいのかもしれないけど、かつて見る度に思った「最後に見たライヴが最高のライヴ」という気持ちがすっかりよみがえっています。


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Page Written by Kiku^o^Sakamaki