1 此伊勢物語者京極黄門真跡
  2 無雙之鴻寶也忝為
  3 後花園院御秘本之處故相公
  4  羽林 實連 哥道器量抜群依
朝臣
  5 叡感賜之然而不幸短命長禄
  6  三年十月廿日薨逝矣 于時 
十七歳
  7 爰宮道親元年来眤近結膠
  8 漆之交存其舊好附属此本
  9 畢彼親元死去後依遺命
 10 所返送予也
 11        前内大臣 花押
 12 これをたにいまははなれていせのあまの船なかしたるおもひとをしけれ

天福本千歳本嵯峨本
 13 むかしおとこうゐかうむりして
 14 ならの京かすかのさとにしる
 15 よしヽてかりにいにけりその
 16 さとにいとなまめいたるをんな
 17 はらからすみけりこのおとこ
 18 かいまみてけりおもほえすふる
 19 さとにいとはしたなくてありけ
 20 れはこヽちまとひにけりおとこの
 21 きたりけるかりきぬのすそを
 22 きりてうたをかきてやるそのお
 23 とこしのふすりのかりきぬをな
 24 むきたりける
 25 新古今かすかのヽわかむらさきのすり衣
 26   しのふのみたれかきりしられす
 27 となむをいつきていひやりける
 28 ついておもしろきことヽもや思けん
 29 古今みちのくの忍もちすりたれゆへに
 30  みたれそめにし我ならなくに
 31 といふうたの心はへなりむかし人
 32 はかくいちはやきみやひをなん
 33 しける

 河原大臣哥也 廿五日
左大臣源融寛平七年八 月薨 七十
非在中将時□先達如何

天福本千歳本嵯峨本
 34 むかしおとこ有けりならの京は
 35 はなれこの京は人の家また
 36 さたまらさりける時にヽしの京
 37 に女ありけりその女世人にはま
 38 されりけりその人かたちよりは心なん
 39 まさりたりけるひとりのみもあら
 40 さりけらしそれをかのまめをと
 41 うちものかたらひてかへりきて
 42 いかヽ思ひけん時はやよひのついたち
 43 あめそほふるに/やりける
 44  古今おきもせすねもせてよるをあかし/ては
 45   春の物とてなかめくらしつ
天福本千歳本嵯峨本
 46 むかしおとこありけりけさうし
 47 ける女ももとにひしきもといふ
 48 ものをやるとて
 49   思ひあらはむくらのやとにねもし/なん
 50   ひしきものにはそてをしつヽも
 51 二條のきさきのまたみかとにも
 52 つかうまつりたまはてたヽ人にて
 53 おはしましける時のこと也
天福本千歳本嵯峨本
 54 むかしひんかしの五条におほき
 55 さいの宮おはしましけるにし
 56 のたいにすむ人有けりそれ
 57 をほいにはあらて心さしふ/かヽりける
 58 ひとゆきとふらひけるをむ月の
 59 十日はかりのほとにほかにかくれ
 60 にけりありところはきけと人の
 61 いきかよふへき所にもあらさりけ
 62 れは猶うしと思ひつヽなんあり
 63 ける又のとしのむ月にむめの
 64 花さかりにこそをこひていき
 65 てたちて見ゐて見ヽれとこそに
 66 にるへくもあらすうちなきてあはら
 67 なるいたしきに月のかたふく/まて
 68 ふせりてこそを思いてヽよめる
 69  古今月やあらぬ春や昔のはるならぬ
 70   わか身ひとつはもとの身にして
 71 とよみて夜のほの*とあくるに
 72 なく*かへりにけり
天福本千歳本嵯峨本
 73 むかしおとこ有けりひんかしの五条
 74 わたりにいとしのひていきけり
 75 みそかなる所なれはかとよりも
 76 えいらてわらはへのふみあけたる
 77 ついひちのくつれよりかよひけり
 78 ひとしけくもあらねとたひかさなり
 79 けれはあるじきゝつけてその
 78 かよひちに夜ことに人をすへて
イ□□本
 81 まもらせけれはいけともえあは
 82 てかへりけりさてよめる
 83  古今ひとしれぬわかこひちのせき/もりは
 84   よひ*ことにうちもねなヽん
 85 とよめりけれはいといたう心や
 86 みけりあるしゆるしてけり
 87 二条のきさきにしのひてまいり/けるを
 88 世のきこえありけれはせうとたちの
 89 まもらせたまひけるとそ
天福本千歳本嵯峨本
 90 むかしおとこありけり女のえうま
 91 しかりけるをとしをへてよはひわ
 92 たりけるをからうしてぬすみいてヽ
 93 いとくらきにきけりあくたかはと
 94 いふ河をゐていきけれは草の
 95 うへにをきたりけるつゆをかれは
 96 なにそとなんおとこにとひける
 97 ゆくさきおほく夜もふけにけれ
 98 はおにある所ともしらて神さへ
 99 いといみしうなりあめもいたう
100 ふりけれはあはらなるくらに
101 女をはおくにをしいれておとこ
102 ゆみやなくひをおひてとくちに
103 をりはや夜もあけなんと思つヽ
104 ゐたりけるにおにはやいとくちに
105 くひてけりあなやといひけれと
106 神なるさはきにえきかさりけり
107 やう*夜もあけゆくに見れは
108 ゐてこし女もなしあしすり
109 をしてなけどもかひなし
110   しらたまかなにそと人のとひし時
111   つゆとこたへてきえなましものを
高子 元慶元年正月為中宮 卅六
112 これは二条のきさきのいとこの女御
113 の御もとにつかうまつるやうにてゐた
114 まへりけるをかたちのいとめてたく
115 おはしけれはぬすみておひて
昭宣公
116 いてたりけるを御せうとほりかはの
117 おとゝたらうくにつねの大納言ま
118 た下らうにて内へまいりたまふに
119 いみしうなく人あるをきゝつけて
120 とめてとりかへしたまうてけり
121 それをかくおにとはいふなりけり
122 またいとわかうてきさきのたヽに
123 おはしける時とや
天福本千歳本嵯峨本
124 むかしおとこありけり京にあり/わひて
125 あつまにいきけるにいせおはり
126 のあはひのうみつらをゆくに浪
127 のいとしろくたつを見て
128  後撰いとゝしくすきゆくかたのこひし/きに
129   うら山しくもかへるなみかな
130 となむよめりける
天福本千歳本嵯峨本
131 むかしおとこ有けり京やすみうか
132 りけんあつまの方にゆきてすみ
133 所もとむとてともとする人ひとり
134 ふたりしてしてゆきけりしなのヽくに
135 あさまのたけにけふりのたつを見て
136  新古今しなのなるあさまのたけにたつ煙
137    おちこち人の見やはとかめぬ
天福本千歳本嵯峨本
138 むかしおとこありけりそのおとこ身を
139 えうなき物に思なして京には
140 あらしあつまの方にすむへき
141 くにもとめにとてゆきけりもと
142 より友とする人ひとりふたりして
143 いきけりみちしれる人もなくて
144 まとひいきけりみかはのくにやつは
145 しといふ所にいたりぬそこをやつは
146 しといひけるは水ゆく河のくもて
147 なれははしをやつわたせるによりて
はイ
148 なむやつはしといひけるそのさはの
149 ほとりの木のかけにおりゐてかれ
150 いひくひけりそのさはにかきつはた
151 いとおもしろくさきたりそれを
152 見てある人のいはくかきつはた
153 といふいつもしをくのかみにすへて
154 たひの心をよめといひけれはよめる
155  古今から衣きつヽなれにしつましあれは
156   はる*きぬるたひをしそ思
157 とよめりけれはみな人かれいひの
158 うへになみたおとしてほとひにけり
159 ゆき*てするかのくにヽいたりぬ
160 うつの山にいたりてわかいらむと
161 するみちはいとくらうほそきに
162 つたかえてはしけり物心ほそく
163 すゝろなるめを見ることヽ思ふに
164 す行者あひたりかヽるみちはいかて
165 かいまするといふを見れは見し
166 ひとなりけり京にその人の御もと
167 にとてふみかきてつく
168  新古今するかなるうつの山へのうつヽにも
169    ゆめにも人にあはぬなりけり
170 ふしの山を見れはさ月のつこも
171 りに雪いとしろうふれり
172  新古今時しらぬ山はふしのねいつとてか
173    かのこまたらにゆきのふるらん
174 その山はこヽにたとへはひえの山
175 をはたちはかりかさねあけたらん
或説云塩尻臺塩といふ地あり□□□……□□□ 或本はしりほしの
176 ほとしてなりはしほしりのやう
177 になんありける□□□……□□□
□□□……□□□
178 ゆき*て武蔵のくにとしもつふさ
いと
179 のくにとの中におほきなる河あり
180 それをすみた河といふその河の
181 ほとりにむれゐておもひやれは
182 かきりなくとをくもきにけるかな
183 といひあへるにわたしもりはやふ
184 ねにのれ日もくれぬといふにのり
185 てわたらんとするにみな人物わひ
186 しくて京に思ふ人なきにしも
187 あらすさるおりしもしろきとりの
188 はしとあしとあかきしきのおほ
189 きさなるみつのうへにあそひつヽ
190 いをヽくふ京には見えぬとりなれは
191 みな人見しらすわたしもりにとひ
192 けれはこれなん宮ことりといふを
193 きヽて
194  古今名にしおはヽいさ事とはむ宮こ鳥
195   わかおもふ人はありやなしやと
196 とよめりけれは舟こそりてなきにけり
天福本千歳本嵯峨本
197 むかしおとこ武蔵のくにまてまとひ
198 ありきけりさてそのくにヽある女を
199 よはひけりちヽはこと人に
200 あはせむといひけるをはヽなんあて
201 なる人に心つけたりけるちヽは
202 なおひとにてはヽなんふちはら
203 なりけるさてなんあてなる人にと
204 思ひけるこのむこかねによみてをこせ
205 たりけるすむ所なむいるまのこほり
206 みよしのさとなりける
207   みよしのヽたのむのかりもひたふるに
208   きみかヽたにそよるとなくなる
209 むこかね返し
210   わか方によるとなくなるみよしのヽ
211   たのむのかりをいつかわすれん
212 となむ人のくにヽても猶かヽること
213 なんやまさりける
天福本千歳本嵯峨本
214 昔おとこあつまへゆきけるに友
215 たちともにみちよりいひをこせける
216  拾遺わするなよひとは雲ゐになりぬとも
217   そらゆく月のめくりあふまて
天福本千歳本嵯峨本
218 むかしおとこ有けり人のむすめを
219 ぬすみてむさしのへゐてゆくほとに
220 ぬす人なりけれはくにのかみにから
221 められにけり女をはくさむらの
222 なかにをきてにけにけりみちくる
223 ひとこの野はむす人あなりとて
224 火つけむとす女わひて
225  古今むさしのはけふはなやきそわかくさの
226  カスカノつまもこもれりわれもこもれり
227 とよみけるをきヽて女をはとりて
228 ともにゐていにけり
天福本千歳本嵯峨本
229 昔武蔵なるおとこ京なる女のもとに
230 きこゆれはヽつかしきこえねはくる
231 しとかきてうはかきにむさしあふ
232 みとかきてをこせてのちをともせす
233 なりにけれは京より女
234   むさしあふみさすかにかけてたのむに/は
235   とはぬもつらしととふもうるさし
236 とあるを見てなむたへかたき心
237 地してける
238   とへはいふとはねはうらむむさ
239               しあふみ
240   かヽるおりにやひとはしぬらん
天福本千歳本嵯峨本
241 むかしおとこみちのくにヽすヽろに
242 ゆきいたりにけりそこなる女京の
243 ひとはめつらかにやおほえけん
244 せちにおもへる心なんありけるさて
245 かの女
桑子 蚕也
246  入万葉中*に恋にしなすはくはこにそ
247    なるへかりけるたまのをはかり
248 うたさへそひなひたりけるさす
249 かにあはれとやおもひけんいきて
250 ねにけり夜ふかくいてにけれは女
東国之習家ヲクタト云
251   夜もあけはきつにはめなて
252   くたかけのまたきになきて
家鶏也
253        せなをやりつる
254 といへるにおとこ京へなんまかるとて
わ一本       ね
255   くりはらのあれはの松の人ならは
256   みやこのつとにいさといはましを
257 といへりけれはよろこほひて
258 おもひけらしとそいひをりける
天福本千歳本嵯峨本
259 むかしみちのくにヽてなてうことな
260 き人のめにかよひけるにあやしう
261 さやうにてあるへき女ともあらす
262 見えけれは
263   しのふ山しのひてかよふ道も哉
264   人の心のおくも見るへく
265 女かきりなくめてたしとおもへと
266 さるさかなきえひすこヽろを見
267 てはいかヽはせんは
天福本千歳本嵯峨本
268 むかしきのありつねといふ人有けり
269 み世のみかとにつかうまつりて時に
270 あひけれとのちは世かはり時うつり
271 にけれは世のつねの人のこともあらす
272 人からは心うつくしくあてはかなる
273 ことをこのみてこと人にもにす
274 まつしくへても猶むかしよかりし
275 時の心なからよのつねのこともしらす
276 としころあひなれたるめやう*
277 とこはなれてつゐにあまに
278 なりてあねのさきたちてなりたる
279 ところへゆくをおとこまことにむつ
280 ましきことこそなかりけれはいまはと
281 ゆくをいとあはれと思けれとまつし
282 けれはするわさもなかりけり
283 おもひわひてねむころにあひかたら
284 ひけるともたちのもとにかう*いま
285 はとてまかるをなにこともいさゝか
286 なることもえせてつかはすことヽ
287 かきておくに
288   手をヽりてあひ見し事をかそふれは
289   とおといひつヽよつはへにけり
290 かのともたちこれを見ていとあは
291 れと思ひてよるの物まてをくりて/よめる
292   年たにもとおとてよつはへにけるを
293   いくたひきみをたのみきぬらん
294 かくいひやりたりけれは
295   これやこのあまのは衣むへしこそ
296   きみかみけしとたてまつりけれ
297 よろこひにたへて又
298   秋やくるつゆやまかふとおもふまて
299   あるは涙のふるにそ有ける
天福本千歳本嵯峨本
300 年ころをとつれさりける人のさ
        
301 くらさかりに見にきたりけれは
302 あるし
303  古今あたなりとなにこそたてれ櫻花
304   年にまれなる人もまちけり
305 返し
306  古今けふこすはあすは雪とそふりな/まし
307   きえすはありとも花と見ましや
天福本千歳本嵯峨本
308 むかしなま心ある女ありけりお
309 とこちかう有けり女うたよむ人
310 なりけれは心見むとてきくの花の
311 うつろへるをゝりておとこのもとへやる
312   紅にヽほふはいつら白雪の
313   枝もとをヽにふるかとも見ゆ
314 おとこしらすよみによみける
315   紅にヽほふかうへのしらきくは
316   おりける人のそてかとも見ゆ
天福本千歳本嵯峨本
317 昔おとこ宮つかへしける女の方に
318 こたちなりける人をあひしりたり
319 けるほともなくかれにけりおなし
320 ところなれは女のめには見ゆる物
321 からおとこはある物かとも思たらす
322 女
323  古今あま雲のよそにも人のなりゆくか
324   さすかにめには見ゆる物から
325 とよめりけれはおとこ返し
     古今ゆきかへり
326   あまくものよそにのみしてふる/ことは
327   わかゐる山の風はやみ也
328 とよめりけるは又おとこある人と
329 なんいひける
天福本千歳本嵯峨本
330 むかしおとこやまとにある女を
331 見てよはひてあひにけりさて
332 ほとへて宮つかへする人なりけ
333 れはかへりくるみちにやよひはかり/に
334 かへてのもみちのいとおもしろき
335 をとりて女のもとにみちよりいひやる
336   君かためたおれる枝は春なから
337   かくこそ秋のもみちしにけれ
338 とてやりたりけれは返事も京
339 にきつきてなんもてきたりける
340   いつのまにうつろふ色のつきぬらん
341   きみかさとには春なかるらし
天福本千歳本嵯峨本
342 むかしおとこ女いとかしこく思ひ
343 かはしてこと心なかりけりさるを
344 いかなる事かありけむいさヽかなる
345 ことにつきて世中をうしと思ひ
346 ていてヽいなんと思ひてかヽるうたを
347 なんよみて物にかきつけヽる
348   いてヽいなは心かるしといひやせん
349   世のありさまを人はしらねは
350 とよみをきていてヽいにけりこの
351 女かくかきをきたるをけしう心
352 をくへきこともおほえぬを
353 なにヽよりてかかヽらむといといたう
354 なきていつかたにもとめゆかむと
355 かとにいてヽと見かう見ヽけれと
356 いつこをはかりともおほえさり
357 けれはかへりいりて
358   思ふかひなき世なりけり年月を
359   あたにちきりて我やすまひし
360 といひてなかめをり
361   人はいさ思ひやすらん玉かつら
362   おもかけにのみいとヽ見えつヽ
363 この女いとひさしくありてねむし
364 わひてにやありけんいひをこせたる
365   今はとてわするヽ草のたねを/たに
366   ひとの心にまかせすも哉
367 返し
369   忍草うふとたにきく物ならは
370   思けりとはしりもしなまし
371 又*ありしよりけにいひかはして
               おとこ
372  新古今わする覧と思心のうたかひに
373    ありしよりけに物そかなしき
374 返し
375  新古今中そらにたちゐるくものあともなく
376    身のはかなくもなりにける哉
377 とはいひけれとをのか世ヽになり
378 にけれはうとくなりにけり
天福本千歳本嵯峨本
379 むかしはかなくてたえにける
380 なか猶やわすれさりけん女の
381 もとより
382  新古今うきなから人をはえしも/わすれねは
383   かつうらみつヽ猶そこひしき
384 といへりけれはされはよといひて
385 おとこ
386   あひ見ての心ひとつをかはしまの
387   水のなかれてたえしとそ思
388 とはいひけれとその夜いにけり
389 いにしへゆくさきのことヽもなといひて
390   秋の夜のちヽをひとよになすら/へて
391   やちよしねはやあく時のあらん
392 返し
393   秋の夜のちよをひとよになせりとも
394   ことはのこりてとりやなきなん
395 いにしへよりもあはれにてなむ/かよひける
天福本千歳本嵯峨本
396 むかしゐなかわたらひしける人
397 の子とも井のもとにいてヽあそひ
398 けるをおとなになりにけれは
  おとこも女も
399 はちかはしてありけれとおとこは
400 この女をこそえめとおもふ女は
401 このおとこをとおもひつヽおや/の
402 あはすれともきかてなんありける
403 さてこのとなりのおとこのもとより
404 かくなん
405   つヽ井つのゐつヽにかけしまろか/たけ
406   すきにけらしないも見さるまに
407 女返し
408   くらへこしふりわけかみもかたすき/ぬ
409   きみならすしてたれかあくへき
410 なといひ*てつゐにほいのことく/あひにけり
411 さて年ことなるほとに女おやなく
412 たよりなくなるまヽにもろともに
413 いふかひなくてあらんやはとて
414 かうちのくにたかやすのこほりに
415 いきかよふ所いてきけりさり
416 けれとこのもとの女あしとおもへる
417 けしきもなくていたしやりけれは
418 おとこヽち心ありてかヽるにやあら
419 むと思ひうたかひてせんさいの中/に
420 かくれゐてかうちへいぬるかほにて
421 見れはこの女いとようけさう
422 してうちなかめて
423  古今風ふけはおきつしら浪たつた山
424   夜はにや君のひとりこゆらん
425 とよみけるをきヽてかきりなく
426 かなしと思ひて河内へもいかすなり
427 にけりまれ*かのたかやすにき
428 て見れははしめこそ心にくも
429 つくりけれいまはうちとけて
430 てつからいゐかひとりてけこのうつわ
431 物もりけるを見て心うかりていか
432 すなりにけりさりけれはかの女
433 やまとの方を見やりて
434  新古今君のあたり見つヽをヽらんいこま山
435    くもなかくしそ雨はふるとも
436 といひて見いたすにからうして
437 やまと人こむといへりよろこひてま
438 つにたひ*すきぬれは
439   君こむといひし夜ことにすきぬ/れは
440   たのまぬ物のこひつヽそふる
441 といひけれとおとこすますなりにけり
天福本千歳本嵯峨本
442 むかしおとこかたゐなかにすみけり
443 おとこ宮つかへしにとてわかれお
444 しみてゆきにけるまヽに三とせ
445 こさりけれはまちわひたりけるに
446 いとねむことにいひける人にこよひ
447 あはむとちきたりけるにこの
448 おとこきたりけりこのとあけた/まへと
449 たヽきけれとあけてうたをなん
450 よみていたしたりける
451   あらたまの年の三とせをわちわひて
452   たヽこよひこそにゐまくらすれ
453 といひいたしたりけれは
454   あつさゆみま弓つき弓年をへて
455   わかせしかことうるはしみせよ
456 といひていなむとしけれは女
457   あつさ弓ひけとひかねと昔より
458   心は君によりにし物を
459 といひけれとおとこかへりにけり女いと
460 かなしくてしりにたちをひゆけと
461 をいつかてし水のある所にふ
462 しにけりそこなりけるいはにお
463 よひのちしてかきつけヽる
464   あひおもはてかれぬる人をとヽめか/ね
465   わか身も今そきえはてぬめる
466 とかきてそこにいたつらになりにけり
天福本千歳本嵯峨本
467 むかしおとこ有けりあはしともいは
469 さりける女のさすかなりけるかもと/に
470 いひやりける
471  古今秋のヽにさヽわけしあさの袖よりも
472   あはてぬる夜そひちまさりける
473 色このみなる女返し
474  古今見るめなきわか身をうらとしらね/はや
475  小町かれなてあまのあしたゆくゝる
天福本千歳本嵯峨本
476 むかしおとこ五條わたりなりける
477 女をえヽすなりにけることヽわひ
478 たりける人の返ことに
一本 なみた    らし
479  新古今おもほへす袖にみなとのさはく哉
480    もろこし舟のよりし許に
天福本千歳本嵯峨本
481 昔おとこ女のもとにひと夜いきて
482 又もいかすなりにけれは女の手
483 あらふ所にぬきすをうちやりて
484 たらひのかけに見えけるをみつから
485   我許物思人は又もあらし
486   とおもへは水のしたにも有けり
487 とよむをこさりけるおとこたちきヽて
488   みなくちに我や見ゆらんかはつさへ
489   水のしたにてもろこゑになく
天福本千歳本嵯峨本
490 昔いろこのみなりける女いていにけれは
491   なとてかくあふこかたみになりにけん
492   水もらさしとむすひしものを
天福本千歳本嵯峨本
貞観十一年二月貞明親王為皇太子于時高子為女御
 依春宮母儀号也□年十二月廿六日誕生高子年廿七
493 むかし春宮の女御の御方の花の
494 賀にめしあつけられたりけるに
495  新古今花にあかぬなけきはいつもせしかと/も
496   けふのこよひにヽる時はなし
天福本千歳本嵯峨本
497 むかしおとこはつかなりける女のもと/に
498   あふことはたまのを許おもほえて
499   つらき心のなかく見ゆらん
天福本千歳本嵯峨本
500 昔宮の内にてあるこたちのつほねの
501 まへをわたりけるになにのあた
502 にか思けんよしやくさ葉よならん
503 さか見むといふおとこ
504   つみもなき人をうけへは忍草
505   をのかうへにそおもふといふなる
506 といふをねたむ女もありけり
天福本千歳本嵯峨本
507 むかし物いひける女に年ころありて  
508  古今いにしへのしつのをたまきくりか/へし
  □作者
509   むかしをいまにかへすよしも哉
510 といへりけれとなにともおもはすや/ありけむ
天福本千歳本嵯峨本
511 むかしおとこつのくにむはらのこほりに
512 かよひける女このたひいきては又は
513 こしとおもへるけしきなれはおとこ
514   上句 あしへよりみちくるしほのいやましに
515   万葉 君に心を思ます哉
516 返し
517  こもり江に思ふ心をいかてかは
518  舟さすさほのさしてしるへき
519 ゐなか人の事にてはよしやあしや
天福本千歳本嵯峨本
520 むかしおとこつれなかりける人のもとに
521   いへはえにいはねはむねにさはか/れて
522   心ひとつになけくころかな

523 おもなくいへるなるへし
天福本千歳本嵯峨本
524 むかし心にもあらてたえたる人のもと/に
525   玉のをヽあはおによりてむすへれは
526   たえてのヽちもあはむとそ思
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