第1章 怒りっぽい隣人 (11)
家にもどると、ちょうどマリラ・カスバートが馬車で帰ってきた。アンは急いで夕食の支度にとりかかり、二人で食事をしながら、このできごとを話しあった。
「競売が終わると、ほっとするよ(12)」マリラが言った。「あんなにたくさん家畜を飼うのは荷が重いよ、あのあてにならないマーティン(13)しか、世話をする者がいないんだから。マーティンったら、まだ帰ってこないんだよ。昨日の夜には必ず帰るって約束したのに。おばさんの葬式に出るというから、一日、休みをやったんだが、いったい何人、おばさんがいることやら。一年前にうちで働くようになってから、亡くなったのは、これで四人めだ。畑の刈り入れが終わってバリーさんが農場を借りてくれると、もっと楽になるよ。ドーリーは、マーティンがもどってくるまで、囲いに閉じこめておくしかないね。放すなら裏の牧草地だが、柵が破れたままでは、また出ていく。レイチェルが常々言うように、この世は厄介やっかいなものだ。メアリ・キース(14)だが、かわいそうに死にそうだよ。二人の子どもが先々どうなるか、それがなおさら心配でね。ブリティッシュ・コロンビア州(15)にはメアリの兄さんがいるんだがね、子どものことで手紙を書いても音沙汰(おとさた)ないそうだ」(つづく)
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