米への配慮で核軍縮独自性示せず……外交公文書公開で
2000年12月19日
 米英ソの核実験に批判が強まっていた1950年だ、外務省は核実験禁止外交でリーダーシップの発揮を試みたが、米国への配慮から結局独自性を示せないままとなった。57年4月3日に開催された定例幹事会の記録。この日は「原水爆実験禁止要請に関する件」が議題とされ、外務省としての基本的態度を確立するのが狙いだった。議論は、自由主義諸国との協調と核実験禁止の目標が対立するかが焦点であった。「核実験禁止は日本外交の新たな一原則として独自の評価を与える異議がある」との積極論の反面、「自由世界の安全保障という大義と見合う、重大で確実な禁止理由が不十分」との消極論が出された。会合では国連に提出する核実験禁止に対する政府見解案も検討されたが、米国への配慮から「実験中止の点を『希望』程度でぼかす」こととされた。
※外務省は1976年から作成後おおむね30年経過した外交文書を公開している。今回は16回目の公開。

抑留未帰還者数を誇張……外交公文書公開で
2000年12月19日
 1949年、当時ソ連に抑留されていた日本人の未帰還数について、政府は「20万人以下」と見積もっていたにもかかわらず、疑問のあったGHQ調べの「46万9000人」と公表していた。外務省の倭島英二管理局長は49年6月GHQに呼ばれ、GHQ調べの未帰還数が「日本調べ」とあらかじめ書き込まれた素案を渡され、日本政府の正式書簡として提出させられた。この直前、引揚援護庁は「未帰還は20万人以下と推定されGHQ数字は過大」と指摘していた。49年10月の政府対策会議では「17万9600人が残留」と報告されGHQ数字の誤りを理解し「責任を日本に転嫁される可能性」に気付きながらGHQに加担した。現在もソ連による抑留数、収容所での死亡数などはハッキリしないが、こうした数字の政治利用が影響したと考えられる。

「思いやり予算」微減
2000年10月5日
 日米両政府は在日米軍駐留経費の日本側負担分(思いやり予算)について、娯楽施設は日本側の負担としないことで合意した。9月に合意した新「特別協定」でも米側の経費削減努力が初めて盛り込まれている。
 今回の特別協定の改訂作業では日本側が経費の削減を要求。労務費を負担する人数の枠を据え置き、光熱水料も削減を約束させた。(2000.10.5)

不審船の抵抗鎮圧に1日1万4000円
2000年8月28日
 防衛庁は不審船の追跡・検査に従事する自衛隊員に支払う「不審船対処手当」を新設。最高額は1万4000円で2001年度から実施。従事する業務の危険度で3段階に分類され、「強制的停船業務」には1日2000円、不審船に乗り込んで行なう立入検査は1日7000円、乗り込んだ先で相手の抵抗にあって鎮圧した場合は1日1万4000円が支給される。この他不審船の武装解除を行なう特別警備隊の設置や、装備品の開発を進めることとしている。

最大電力5年ぶり更新
2000年8月25日
 電気事業連合会は8月25日、全国的なきびしい残暑で電力10社合計の午後2時から3時までの平均電力消費量が1億7306万9000キロワットに達し、1時間あたりの最高記録を1995年8月25日(1億713万3000キロワット)以来、5年ぶりに更新したと発表した。午後3時現在の各地の気温は、大阪で37・5度、東京で33・7度だった。
電力小売り自由化が進展
2000年8月10日
 8月10日、霞が関の通産省ビルの電力供給会社を決める入札が行われ、東京電力ではなく三菱商事系の電力販売会社が落札した。2000年10月から始まった電力小売り自由化が進展したことを象徴する事例となった。これまで全国で10の地域電力会社が独占的に電力の小売りを行なってきたがこれが自由化され、当面使用規模が2000キロワット以上で2万ボルト以上の特別高圧電線で供給を受けている大口需要者向け電力が自由に売り買いされることになる。米の電力会社エンロンが日本で電力小売りを行なうために数カ所に火力発電所を建設することを検討するなど新規参入の動きも活発だ。中央官庁の電力入札は通産省が初めてで、落札した三菱商事系のダイヤモンドパワーのほか、東京電力、東北電力が参加した。ダイヤモンドパワーの落札価格は約2億8000万円で、同省は現行の東京電力より約4%、年間1200万円のコストダウンになるとしている。入札を予定していた東京ガスや伊藤忠商事などが東京電力から調達する補給用電力の料金が予想以上に高かったことなどから断念しました。補給電力料金の問題は独占禁止法上の問題も指摘されているが、東電側は「設備稼働が増すコストを回収するため適切」と主張している。
空中給油機導入1機238億円
2000年8月
 2001年度予算の概算要求に空中給油機1機分の購入費238億円が盛り込まれた。2000年度予算ではじめて研究費400万円が計上されたが、このままいけば2001年度予算で空中給油機の導入が本決まりとなる。空中給油機は空中で戦闘機などの燃料を給油し滞空時間を延ばすために用いられる。いちいち基地に帰らずに給油ができるので空中で敵を待ちかまえる警戒能力が高まるほか、戦闘機の離着陸の回数も減り基地周辺の騒音も減らすことができると防衛庁は主張している。これまで「専守防衛」の理念から、戦闘機の航続距離は抑えられてきた。空中給油機の導入で日本の基地から直接、他国を攻撃できるようになる。(2000.8)
原発は安くない……CASA研究報告を発表
2000年5月31日
 地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)は5月31日、原子力発電コストについての研究報告を発表した。電力会社の有価証券報告書総覧より発電単価を推計した。この結果、過去10年間の電源別の発電単価は、水力が平均9.62円/KWH、火力が平均9.31円/KWH、そして原子力が10.26〜10.55円/KWHとなり、原子力は水浴や火力に比してむしろ割高であった。
 政府の試算では水力13.6円/KWH、石油火力10.2円/KWH、原子力5.9円/KWHとなっているが、これと大きく異なる結果となっていることは興味深い。
DAC諸国の1999年ODA実績
2000年5月12日
 経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)は加盟22国による99年の政府開発援助(ODA)実績(暫定値、支出純額ベース)を発表した。
チェルノブイリ事故の作業員5万5000人死亡
2000年4月26日
 ロシアのシェイグ副首相兼非常事態相はウクライナのチェルノブイリ原発事故から丸14年の26日、事故炉の処理にあたった旧ソ連の作業員86万人のうち5万5000人以上がこれまでに死亡したことを明らかにした。死者がすべて事故の後遺症によるものかは不明だが、多くは作業時に浴びた放射線障害などが直接、間接の原因とみられる。作業員は兵士、技術者、建設労働者などで構成されている。
原子炉閉鎖で乳児死亡率激減
2000年4月26日
 免疫学や環境問題などを専門とする医師、研究者などで組織する「レディエイション・パブリック・ヘルス・プロジェクト(RPHP)」が、1987年から97年までに原子炉を閉鎖した全米7カ所の原子力発電所を対象に、半径80キロ以内の居住の生後1歳までの乳児死亡率を調べた。調査は、原子炉閉鎖前の死亡率と閉鎖2年後の死亡率を比較しているが、それによると87年に閉鎖したワイオミング州のラクロッセ発電所では、15.3%の死亡率減少だった。もっとも減少率の大きかったのが、97年に閉鎖したのがミシガン州ビッグロック・ポイント発電所周辺で54.1%の減少だった。減少はがん、白血病、異常出産など、放射線被害とみられる原因が取り除かれたことによるものとしている。RPHPによると85年から96年までの全米幼児の死亡率は、平均で6.4%減に過ぎず、「原子炉の影響が実証された」としている。
トライデント破壊の活動家に無罪判決
1999年10月21日
 イギリス.スコットランドの法廷で、グラスゴー西方にある海軍基地ファスレーンに忍び込み、原潜関連施設を破壊した女性3人に免罪の決定がされた。反核グループ「トライデント.プラウシェア2000」に所属するアンジー.ゼルダーさんら3人は、1999年6月に核搭載原子力潜水艦トライデントの付属施設である「はしけ」の実験設備の一部を破壊して逮捕され、拘束されていた。
 弁護側は、1996年の国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見で核兵器は違法とされている被告は基本的に罪を犯したが、それはこれをうわまわる犯罪を防ぐためだったとした。したがってスコットランド法によって「免罪」されるべき、と主張していた。 スコットランドのグリーノック治安判事裁判所のギムブレット判事は、「こうした行動を繰り返していいという意味ではない」と断わりながら、「英国のトライデントが他国に脅威を与えていて、国際法を犯すと解釈することもできる」として女性らの行動は正当化されると判断した。
40年前の損害試算が明らかに
1999年6月2日
 日本に原発建設を始めようとした1959年、科学技術庁は事故が起きた際の被害の試算を原子力産業会議に依頼した。原産の試算は国家予算を超える膨大なものであったため、科技庁は全貌を明らかにせず国会には報告書の一部18ページを提出、被害額を半分以下の1兆円に止めて報告、「原子力損害賠償に関する法律」(61年)を成立させた。
 当時の国家予算は1・7兆円で、原産の試算は3・7兆円の被害が想定されていた。事故発生が雨の日の場合、10万人の早期立ち退き、1760万人の避難・移住、15万平方キロメートルの農業制限が必要と計算。死者への賠償金は治療費15万円、葬祭費5万円、慰謝料35万円などで最高賠償額は88万円とした。想定している原子炉は16万キロワット級。

全国原発立地点の9割に考慮すべき活断層
1998年8月20日
 全国の原発立地点16カ所のうち、国の安全基準で定める「耐震設計に考慮すべき活断層」を周囲に抱えるのが9割近い14カ所にのぼることが中国新聞社の調査で分かった。炉心付近から最短地点の距離は、中国電力島根原発の南東で確認された「七田活断層」までの2.5キロが最短であった。

設置者 立地点 断層名 炉心付近からの距離 断層
長さ
算定地
震規模
最短地点 震央まで
北海道電力 なし - - - -
東北電力 女川 (海域) 9 12.1 6.4 6.2
東京電力 福島第一 双葉 30 35 18 6.9
東京電力 福島第二 双葉 40 43 18 6.9
東京電力 柏崎刈羽 中央丘陵西縁部 6 12 12.5 6.7
中部電力 浜岡 石花海海盆西縁南 17 17 10.8 6.6
北陸電力 志賀 眉丈山第二 16 16 12 6.6
関西電力 美浜 (海域) 7 10 17 6.9
関西電力 高浜 熊川※ 20 31 20 7.0
関西電力 大飯 熊川※ 10 19 20 7.0
中国電力 島根 七田 2.5 5.9 8 6.3
四国電力 伊方 (海域) 5 5 6 ※※
九州電力 玄海 なし - - - -
九州電力 川内 上甑島東側海域 20 24 15 6.8
日本原子力発電 東海第二 関谷 78 84 40 7.5
日本原子力発電 敦賀 甲楽城 7 10 20 7.0

※熊川断層は市街地など計測不能区域まで断層延長に参入。
※※伊方の断層は活断層群の一つで個々の活断層での規模は算定されていない。

照射済試験片(放射性同位元素)の所在が一時不明に
1998年4月
 大洗町(茨城県)の日本核燃料開発の試験施設において、原子力発電所で放射線を照射した試験片(約1グラム)19個の所在が不明になっていることが判明。同社は、所在不明の事実を約3ヵ月にわたり、国、県や大洗町に報告していなかった。その後、5月に事業所内に保管されていた廃棄物のなかからすべて発見された。
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