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青梅街道――江戸繁栄を支えた道
(山本和加子著 聚海書林 1984(昭和59)年)
1 あとがき
私は新宿淀橋で生まれ育ちました。
成子坂(青梅街道)の市電の両側は絶えず荷馬車や荷車が通っていました。
戦後東京とその周辺を転々と移り住み、現在、小平市の青梅街道沿いに住みついています。
理由はただそれだけなのですが、故郷に通じるこの一脈の道に愛着と関心がつのり、この街道の歴史を探ってみたいと思うようになりました。
しかし歴史というものを学んだこともなく、文章表現力もなく、ただ四十路に入った自分の生きた証(あかし)を、何らかの形にとどめ置きたいとの欲求だけで始めてみました。
歴史に関する書物は手当り次第読みあさり、街道と周辺の探訪、郷土史・古文書研究グループへの参加、記録まとめ、とたちまち数年の歳月がたってしまいました。
思いの外、こんな無名に近い街道にも、無数の人たちの苦難に満ちた歴史があったことをはじめて知りました。
素人の私がそれでもどうにかまとめ得だのは、郷土に関する研究書や記録が豊富に出ていたことでした。
また私の夫が著作に従事しており、取材や執筆に辛苦を傾ける姿を見、原稿整理の手伝いなどしてきたことも幸いしたかも知れません。
書きまとめた原稿はそのまま物置にしまい込んで五年ほどたちましたが、「青梅街道」の企画を立てておられた聚海書林との思わぬ出会いから、これを本にすることになりました。
今改めて読んでみると、未熟さからくる難点ばかり目立ち、全面書き直しをと思いましたが、当時の探究心と気負いをそのまま残すことにして、部分修正だけに留めました。
独断と偏見の塊りで、出版後に、多くの方々から忠告や誤りの指摘を受けると思います。
むしろそれを期待し、今後の歴史学習の糧にしていくつもです。
この本の青梅街道は、石灰の道として開かれた「成木往還」から端を発し、江戸・東京の隣接地域としての街道を見ることを主眼としました。
青梅市より西多摩郡、山梨県甲府まで続く山岳地帯の青梅街道は、いずれの機会にか調べてみたいと思います。
出版にいたるまで、多くの人の厚意と励ましを受けました。
特に多摩史と古文書の指導を受けた経済史学者伊藤好一氏、文章指導を朝日新聞社図書室長及川武宣氏、出版に導いて下さった名著出版社長中村安孝氏に心から感謝いたします。
一九八四年十月 東京・小平の自宅にて 山本和加子
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