Part2


5月1日 越中沢岳 〜 北薬師岳直下

 時折ガスのかかる天気だった。ガスの切れ間からのぞく薬師岳が徐々に近くなってくることに心を踊らせながら歩を進める。この日の記憶は霧の中の光景のように曖昧だが、結構シビアな登下降があったように記憶している。

 北薬師岳も間近になった頃には脚も弱り、安全な登高が怪しくなったので早々と幕営を決める。

 力尽きたその場所は、狭い稜線だったので幕営地としてはあまり適地とは言えなかったが、幸い天気は穏やかで風もなく、平野を埋める雲海が美しい夕べだった。まるで帆船ツェルト号で雲の大海を船出しているようなそんなシチュエーションだった。僕は疲労感の中で夢とも現ともつかない光景を楽しんだ。

 夜は静かに更けていった。


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