焼額山から竜王山往復ツアー

 日差しが強くなってくると雪面の眩しさが懐かしくなってくる。今回も単独なのだが、このシーズン行くならやっぱり山スキーだろう。我ながら懲りないものだとあきれるが、とりあえず竜王越えで足慣らしをしてみる。


日時  2001年3月18(日)

行先  焼額山スキー場から竜王山往復、大沢滑降

日程と記録

  13:25 焼額山スキー場ゴンドラ乗場 --- 13:40 焼額山頂上 --- 15:30 竜王スキー場頂上レストハウス --- 16:00 竜王山 --- 16:30 竜王スキー場頂上レストハウス --- 18:45 奥志賀スキー場第一リフト --- 20:30 焼額山スキー場駐車場

 土曜の夕方出発したのだが、今回はすべてにおいてあまり無理をするまいと思っていたので、途中で9時間も眠ってしまい、結局奥志賀に着いたのは昼過ぎだった。だが午前中は雨もパラパラ降ったりしてすっきりしない天気だったので、あまり道中を焦りもしなかった。見上げると焼額山の上部は悪天の名残でガスがかかっている。カミさんの作ってくれた弁当を食べながらこの後のことを考えるが、そうしているうちにガスが晴れて段々薄日が差すようになってきた。

 もう10年ほど前になるが、当時よく一緒に山スキーに行った友人に「君が行ったことのあるスキー場でどこが一番いいスキー場だろうか」と聞くと、言下に「奥志賀焼額!」と答えたのを思い出す。それ以来ここは永らくあこがれのスキー場だったが、今日はいよいよそこへ繰り出すことになったわけだ。彼の答えの理由を詳しくは覚えていないが、ともかく焼額山スキー場はホテルの規模が凄い。ゲレンデをぐるりと取り囲むようにレイアウトされたホテルはまるで城塞のようで、否宿泊者が容易にスキー場に入れないような威圧感がある。こうした宿泊施設の高級感と充実ぶりは、私が知っている他の多くのスキー場にはないものだ。確かに志賀は古くからの歴史もあり一流のリゾート地なのだと有無を言わさず納得させられる。

 焼額山から竜王山を目指す。視界は良好だ。やや北側に下りすぎて、トラバース気味に西北西に延びる尾根を下る。雪はモナカ気味で滑りにくい。鞍部で一息入れて、向かいのなだらかな山を登り詰める。

 ゆったりとした時が流れ、「深山に一人」といった気分に浸っていると、風に乗ってどこからかガラガラという機械音と人の歓声が聞こえてきた。ふらふらとそちらの方に近づいてゆくと、「あれれ!」どこかで見たことのある光景が目に飛び込んできた。この1月にも来た竜王スキー場頂上のレストハウスだった。なんだか突然シャバの空気に触れた感じでガッカリした反面、懐かしく感じられもして閉店間際のレストハウスでしばらくくつろいだ。以前ここが竜王の頂上だと聞いたことがあったが、今日焼額の方から確認したところではさらに西のピークが本当の竜王山のようだ。店の主人にそのことを確認して、出発しようと席を立ったが、その主人が「あなたの靴はツアーブーツですね。私のと同じですよ。」と言ったので、「ほう、スキーツアーをされるんですか?」と聞くと、「もっとも今はテレマークばかりですがね。」と答えた。こんなところで同好の士に出会えるとは。

 竜王山のピークはそのレストハウスから尾根沿いのゲレンデを少し滑り、途中から一息登り返したところだった。その滑降コースも以前に何度か滑ったことのあるコースだったので新鮮さがなかったが、こんな目と鼻の先に竜王山の三角点が隠れていたのに気が付かなかったことが可笑しかった。

 頂上から眺めた焼額山は、傾いた光の中に寒々と浮かび上がり、これからそこへ戻るという思いもあってか心細く感じられた。その右手向こうに寺子屋山や横手山・笠ヶ岳へと志賀高原の山々が続いている。

 時間があれば小丸山までツアーをするのだが、今からでは下山地から車まで戻るバスの都合が付かないだろう。ここで焼額との鞍部まで引き返し、そこから東に延びる大沢を滑降することにする。

 再びスキー場へ滑り込み、ゲレンデを登り返す。途中で終業前の点検に回っているゲレンデパトロールに出会ったが、これから焼額方面に引き返すことについて、たっぷり2時間はかかることを心配してくれた。すでに4時30分、計画書を提出してツアーを続ける。

 シールを外して鞍部を目指す。午前中の雨と冬型、そして夕暮れの気温低下で雪面はバリバリのモナカになっている。斜滑降とキックターンを繰り返して慎重に下っていく。それでもツボ足よりは速いだろう。自分のもの以外は誰のトレースもない。

 鞍部からは左にルートを取り、大沢を下ってゆく。沢は陰の中だ。雪質は最悪のモナカである。この筋金入りの脚にはスピードは命取りになるだろう。しかし日が暮れてしまう前には山腹をめぐる林道に出ておきたいところだ。

 沢は段々枝分かれしてゆくので、どこをたどるのが安全なのかをたえず見きわめながら滑らなくてはならない。はじめは左岸を下ってゆくが、最終的に焼額山をトラバースして奥志賀スキー場に出たいので、沢が広くなってきたところで右岸に取り付き、トラバース気味に下っていった。

 目指す林道が沢に橋を架けているのを見つけた。しかし道そのものは積雪が山の斜面の中に平均化してしまっていて判然としない。所々に顔を出す道の特徴を見つけながら辿ってゆくが、下りだと思いこんでいた林道は傾斜がほとんどなく、時には登りさえあって、シールを付けないスキーで進むのはかなりつらい道のりだった。

 真っ暗になった林道をヘッドライトの明かりを頼りに進む。そしてやっと遠くに明かりを見つけた。暖かそうなオレンジ色の光だ。そしてそこを過ぎてゲレンデとおぼしき斜面に躍り出る。圧雪車がゲレンデ整備をしているらしく騒音を立てている。下に見えるホテルに向かって滑る。その側には車道があるはずで、そこを辿れば車まで戻れるのだ。

 ホテル前でスキーを外す。丁度そこへ出てきた人があったので、道がどこなのか聞く。「その向こうにバス停があるんですが、そこから右へたどれば焼額山スキー場の方へ行けますよ。最終バスは・・もう出たでしょうね。」もちろん乗れればうれしいが、もう時間も遅いので実のところバスはあまり期待していなかった。

 トボトボと言われた方に向かって歩き出す。するとちょうど100m程先にヘッドライトをつけてゆっくりと動き始めたバスのようなものが・・・。あれれ・・ひょっとして・・・。そう、それが最終バスだった。立ち話しないで歩いておればあれに乗れたかもしれなかったのだ。

 それからスキーを担いで歩くこと2時間。車にたどり着いたのは8時30分だった。

翌日の四阿山ツアーへ


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