日本政府に対する
補償請求裁判

Lawsuit Against Japanese Goverment

(1991-)



1991年11月12日、韓国・朝鮮人元BC級戦犯者七人は
日本政府・日本軍が負うべき戦争責任を肩代わりさせられたとして
日本政府を相手取り、以下の四点を求めて提訴しました。

条理(正義・公正の原則)に基づく損失補償請求
条理とは「正義および公平の原理」のこと。
明治8年の「裁判官事務心得三条」(太政官布告103)には「民事の裁判に法律の成文の法律なきものは習慣により、習慣なきものは条理を推して裁判すべし」との規定がある。
国家による不法行為を問う多くの戦後補償裁判において、法的な根拠づけは、最大の難問のひとつと言ってよいだろう。例えば、現在の「国家賠償法」は戦後の法律であり、明治国家の行為を問うことができないとされている。
この訴訟では、原告請求の法的根拠を既存の法律にではなく、明治期から裁判の原理とされていた「条理」に求めている。
日本政府の債務不履行に基づく損害賠償請求
原告らを含め、朝鮮人BC級戦犯者のほとんどは俘虜監視員の軍属(軍に雇用された民間人)だった。
彼らは、実際には脅迫あるいは教唆・甘言などによって、日本軍の一員となることを強制されたのだが、形式上、日本軍の募集に応じたものとされている。つまり、そこには「雇用契約関係」が存在しているのである。
彼らは「月給50円、2年間勤務」と聞かされて赴任したが、実際には2年を過ぎても帰国は許されなかった。さらに日本軍は、軍属が安全に勤務できるような環境づくりを怠り、国際法に反する俘虜政策の一翼を担わせた。
その結果、戦犯裁判では多くの朝鮮人・台湾人軍属が「俘虜虐待」の罪で裁かれたのである。
これらはいずれも、雇用主である日本政府の契約違反=債務不履行ととらえることができる。
不法行為に基づく謝罪文交付請求
日本政府は、原告ら朝鮮人軍属が戦犯に問われる原因をつくった。その結果、彼らは祖国の人々からも「親日派(対日協力者)」の烙印を押され、白眼視され続けた。
日本政府には、彼らの名誉回復措置をおこなう義務(作為義務)があると考えられるが、今日に至るまでそれを怠っている。
この訴訟では、総理大臣が原告各個人宛に謝罪文を公布するよう求めている。
補償立法不作為の違法確認請求
立法不作為の違法確認とは、朝鮮人BC級戦犯に対する補償立法がない状態を、裁判所が「違法」だと認めることを指す。
目下のところ補償請求裁判でよく援用されるのが「立法裁量論」つまり法律を作るのは国会の仕事であり、司法は既存の法律の枠内でしか判断できないという論理である。
だが、この訴訟のように、原告に対する補償を根拠づける法律がないという状態が原告の人権を著しく侵害しているケースでは、司法が「法律がないことは違法である」という明確な判断を示すべきだ、という趣旨の請求内容である。

第一審の経過・判決
第二審(控訴審)の経過・判決
原告団(現在、控訴人)のプロフィール
弁護団のプロフィール


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