ラゲールの多項式

作成日:2016-09-18
最終更新日:

量子力学でおなじみのラゲールの多項式

ラゲール多項式はフランスの数学者であるエドモンド・ラゲール(1834-1886)の名前からとられている。 ラゲールの名前は他の直交多項式に冠されているチェビシェフ、エルミート、ルジャンドルの名前に比べてそれほど知られていない。

また、直交多項式の積分の範囲が有界であるチェビシェフ多項式やルジャンドル多項式は大学入試の数学問題にも出やすいが、 ラゲール多項式は積分範囲が 0 から `oo` なので、大学入試の試験問題で出ることはまずないだろう。

さて、ラゲール多項式の興味深い性質を少しずつ探っていこう。なお、以下は特記なき限り正規化されていない形の多項式を取り扱う。

ラゲール多項式の定義

ラゲール多項式はさまざまな定義がある。たいていは微分方程式で定義されているが、最初はロドリゲスの公式からの定義がよいような気がしてきた。

ロドリゲスの公式

ラゲール多項式を表すロドリゲスの公式は次のとおりである。`n` は負でない整数である。 (文献[3] p.147 )。

`L_n(x) = e^x d^n /(dx^n) (e^(-x)x^n)`
`quad\ quad\ =(-1)^n { x^n - n^2/(1!) x^(n-1) + (n^2(n-1)^2)/(2!) x^(n-2) + cdots + (-1)^n n! }`

シグマを使って明示的に表すと次の通りとなる。

`L_n(x) = sum_(k=0)^n (-1)^k ((n),(k)) (n!) / (k!) x^k `

ラゲール多項式の具体的な形を下記に掲げる。

`L_0(x) = 1`
`L_1(x) = -x + 1`
`L_2(x) = x^2 - 4x + 2`
`L_3(x) = -x^3 + 9x^2 -18x + 6`
`L_4(x) = x^4 - 16x^3 + 72x^2 -96x + 24`
`L_5(x) = -x^5 + 25x^4 - 200x^3 + 600x^2 -600x + 120`
`L_6(x) = x^6 -36 x^5 + 450x^4 - 2400x^3 + 5400x^2 -4320x + 720`

グラフ

`L_n(x)` のグラフを次に掲げる。ただし、それぞれ上記の式に `1/(n!)` を乗じている。

微分方程式

`n` が負でない整数のとき、上記のラゲール多項式 `L_n(x)` は下記の微分方程式を満たす。

`x d^2/(dx^2) L_n(x) + (1 - x) d/(dx) L_n(x) + n L_n(x) = 0` .

漸化式

次に、ラゲール多項式が満たす漸化式を掲げる。

`L_0(x) = 1`
`L_1(x) = - x + 1`

`n >= 2` の `L_n(x)` は、次の漸化式により定義される。

`L_(n+1)(x) - (2n + 1 - x) L_n(x) + n^2 L_(n-1) (x) = 0`

直交性

ラゲール多項式は次の直交性を満たす。
`int_0^oo e^-x L_m(x) L_n(x) dx = delta_(mn) (n!)^2`
ここで `delta_(mn)` はディラックのδ関数である。

高校数学の範囲で低次のラゲール多項式の直交性を確認しておこう。被積分関数の変数を `t` とおき、積分範囲を有限区間の `[0, x]` とする。 その後で `x -> oo` とすれば高校数学の範囲で扱える。なお、任意の自然数 `n` に対して成り立つ次の式は使ってよいものとする。

`lim_(x->oo) x^n e^-x = 0`

まず、 `int_0^x e^-t (L_0(t))^2 dt` を計算する。`L_0(t)` は定数 1 であるから、 `int_0^x e^-t dt = [-e^-t]_0^x = -e^-x + 1` となる。 `lim_(x -> oo) e^-x = 0 ` であるから、`lim_(x-> oo) int_0^x e^-t (L_0(t))^2 = 1` である。

次に、 `int_0^x e^-t L_0(t) L_1(t) dt ` を計算しよう。定義より `int_0^x e^-t (1 - t)dt` を計算すればよい。

`int_0^x e^-t L_0(t) L_1(t) dt ` = `int_0^x (1 - t)e^-t dt`
`= [-(1-t)e^-t ]_0^x + int_0^x e^-tdt`
`= [-(1-t)e^-t ]_0^x - [e^-t]_0^x`
`= (-(1-x)e^-x - 1) - (e^-x - 1)`

ここで右辺の極限 `x ->oo` をとると、`e^-x -> 0` かつ `(1-x) e^-x -> 0` であるので、右辺は 0 に近づく。

なお、直交性を誤って直行性と記して質問を寄せる人がいる。注意されたい。

直交性を確認するグラフ

低次のラゲール多項式で、直交性を確認するためのグラフを作成した。 y = 0 の上下で、面積が同じになっている(ような気がする)ことを実感してほしい。

母関数

ラゲール多項式 `L_n(x)` の母関数は `1/(1-t) e^(-(xt)/(1-t)) ` である。すなわち、

`1/(1-t) e^(-(xt)/(1-t)) = sum_(n=0)^oo (L_n(x)) /(n!) t^n `

文献[2] pp.210-211、文献[3] pp.146-147、

ラゲール陪多項式

ラゲール陪多項式`L_n^m(x)` とは、`n` 次のラゲール多項式を `m` 階微分した多項式のことをいう。すなわち、

`L_n^m(x) = d^m/(dx^m) L_n(x) quad \ (0 <= m <= n) `。

なお陪多項式を誤って倍多項式と表記する方がいる。注意されたい。

陪多項式の「陪」の意味がわかりにくいが、陪審裁判のように、主となるもの(裁判官)などに「伴う」という意味がある。 英語では associated という形容詞が使われる。 この陪多項式を定義する微分方程式を、陪微分方程式と呼ぶ。

以下、ここだけの用語で `m` を指数という。`m = 0` のときはラゲールの多項式である。`

ラゲールの陪多項式の実例は次のとおりである。

`n` \ `m``0``1``2``3`
`0``1`
`1``-x + 1``-1`
`2``x^2 -4x + 2``2x - 4``2`
`3`-`x^3 + 9x^2 -18x + 6``-3x^2 + 18x - 18``-6x + 18`-6

微分方程式

ラゲールの陪多項式は次のラゲールの陪微分方程式を満たす。

`x d^2/(dx^2) L_n^m(x) + (m + 1 - x) d/ (dx) L_n^m(x) + (n - m) L_n^m(x) = 0` .

グラフ

準備中


応用1:水素原子

準備中

数式とグラフの表現

数式の記法には ASCIIMath を、 数式の表示には MathJax を用いている。 またグラフの表現には ASCIIsvg を使っている。

文献

[1] 森 正武、室田 一雄、杉原 正顕:数値計算の基礎(岩波書店)
[2] 吉田 耕作、加藤 敏夫:大学演習 応用数学 I (裳華房)
[3] 寺沢 寛一:自然科学者のための数学概論[増訂版] (岩波書店)

リンク


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