前原昭二:記号論理入門

作成日 : 2026-03-12
最終更新日:

概要

「はしがき」から引用する。

本書は,その表題の示すごとく,記号論理の入門書であります.しかし,入門書とよばれる多くの書物におけるように,記号論理の初歩的な一部だけを単にぬき出し, ただそれを書いたというものではけっしてありません.そうではなくて,記号論理一般に関する1つの外観を与えたものであります.(後略)

本文中に問があり、巻末に問題の解答がある。索引はない。

感想

本書は丹治信春:タブローの方法による論理学入門から参照されている。

本書の p.199 で挙げられている参考書に、前原昭二『数学基礎論入門』がある。

十分条件と必要条件

p.8 の「第1章 論理記号による命題の表現法」の「§5. 概念・条件・集合」にある文章から引用する(p.8)。

性質 \(F\) のことを<条件>とよぶ場合には,\(F(e)\) という形の命題を <\(e\) は条件 \(F\) をみたす>というように読みます.また,たとえば,\[ \forall x (F(x) \to G(x)) \] という命題が成立する(正しい)場合, \(F\) のことを <\(G\) となるための[1つの]十分条件>,\(G\) のことを<\(F\) となるための[1つの]必要条件>というのです.(後略)

さて、私が困ってしまうのは、次のような問題を証明せよと言われるときだ。「命題 \(P\) の必要十分条件は命題 \(Q\) であることを証明せよ。」解答を見ると、「必要性:★★★、十分性:◎◎◎」と書いてある。 さて、★★★と◎◎◎に入るのは、\(P\to Q \) なのだろうか。それとも \(Q\to P\) なのだろうか。私はこういうとき、必要性とか十分性とかそういうことばを使わずに、 単に、「まず \(P \to Q \) を示す。... 次に \(Q \to P \) を示す。... よって必要十分であることが証明された。」とする。

ことばが分かっている人ならば、上記でいえば必要性を示すのは、\(P\to Q \) であり、十分性を示すのは \(Q\to P\) である。たとえば、 金沢工業大学の完全微分方程式 KIT数学ナビゲーション (w3e.kanazawa-it.ac.jp)の完全微分方程式であるための必要十分条件およびその証明のリンクを見ればいい。

矛盾

第2章 演繹 の「§4 \( \neg \) について」(pp.45 以降)では、\( \curlywedge \) という記号が出ている。p.45 に初出のこの記号について、次のように書かれている。

さて,われわれは矛盾というのを \[ \curlywedge \] という記号で表わし,これを1つの命題と認めます.それは1つの間違った命題または偽な命題であります。

LaTex では \curlywedge で表すようだ。Unicode の記号で近いものがあったが、16進数の数値文字参照で 22CF 、(英語の)名称で Curly Logical And となっているこの文字は ⋏ である。 いずれにせよ、この文字を「矛盾」にあててよいか、私は困っている。通常この意味では、\( \bot \) ( \bot )を使うはずだ。

p.61 では次の記述がある。

(前略)真理値というのは,いわば,命題につけられた<目じるし>でありまして,

正しい命題 には ⋎
間違った命題 には ⋏
という記号を対応させ,この2つの記号にそれぞれ(truth)および(false)という名称を与えます.(後略)

LaTex で \curlyvee で表すようだ。Unicode の記号で近いものがあったが、16進数の数値文字参照で 22CE 、(英語の)名称で Curly Logical Or となっているこの文字は ⋎ である。 いずれにせよ、この文字を「真」にあててよいか、私は困っている。通常この意味では、\( \top \) ( \top )を使うはずだ。

推論図

p.38 の例 1 にある推論図を描いてみた。

\[\Infer{}{C}{\Infer{}{B}{A \AND A \to B} \AND \Infer{}{B \to C}{A \AND A \to (B \to C)}}\]

これはなんとか書けた。同じページの 例 2 の推論図はどうだろうか。

\[\Infer{}{\Infer{1}{A \to C}{C}}{\Infer{}{B}{\begin{array}{cc}1 & \\ A & A \to B \\ \end{array}} \AND \Infer{}{B \to C}{ \begin{array}{cc}1 & \\ A & A \to (B \to C) \\ \end{array} }}\]

この、一番上にある2つの \(A\) の上にある 1 という記号(数字)をなんとかして書きたかった。この数字 1 の意味を、本書から引用する。

ここで,一番上にある2つの \(A\) の上に書いてある 1 という記号は,\(A\) という仮定が,最後の推論 \[ \Infer{}{C}{A \to C}\] を行なったときに除かれた、ということを意味しています.

数式記述

このページの数式は MathJax4 で記述している。

書誌情報

書名記号論理入門
著者前原昭二
発行日2005 年 12 月 10 日(新装版第1刷)
発行元日本評論社
定価2200 円(本体)
サイズA5版 200ページ
ISBN4-535-60144-5
その他川口市立図書館にて借りて読む