大食漢のパンタグリュエルが引き起こす奇想天外の物語。
第 1 章では、ビワを食べたあらゆる人々の体におそろしい腫物ができてしまったこと、それも皆同じ場所にできずにいろいろな場所にできてしまったことが面白おかしく描かれている。 現代人なら(現代でなくとも)、あそことか、あそこが大きくなる描写があるのではないかと思うだろう。p.23 から引用する。
また他の人々は「
天然耕夫 」と呼ばれるものがにょきにょきと長くなり、驚くほど長く、 大きく、むっちりとし、太く、ぴんぴんとして、古代のファルス神のようにおったってきたために、これを帯代わりにして使い、五重六重に体へ捲きつけたほどであった。
特に私がつけ加えることはない。
こんどは p.24 から引用する。
また他の者どもにあっては、鼻がひどく伸びてきて、
蒸溜器 の雁首のようになり、それが様々な色合いとなり、 小粒の吹き出物ができて光彩陸離とし、ぶつぶつだらけ、猩々緋のようになり、真赤 かなぼちぼち飾りを附け、 七宝を鏤 めたようで、腫物 が一杯、 紋章図の唐紅 を縫い附けたような恰好となってしまったが(後略)
らんびき、についてはなぜか物理化学の本を見て名前だけは憶えていたのだが、
それにしてもこの描写は美しいのか汚いのかが全く分からず、混乱してしまった。光彩陸離
という言葉は初めて聞いた。光が入り混じって美しいようすを表すことばのようだ。
猩々緋も知らなかったことばで、赤みの強い赤紫色のことだそうだ。ただ、猩々緋が出てくる作品に菊池寛の「形」があり、
これは有吉道夫名局集で著者の有吉が解説していたので、
読んでみようと思う。唐紅(からくれない)は濃い紅色。古今和歌集の在原業平の歌で有名。
第 2 章の末尾では、p.34 では、誕生したパンタグリュエルの姿が熊のようだったので、産婆の一人がこういっている。
―この御子様は毛むくじゃらでお生れなすった。きっとすばらしいことを色々なさるだろうし、生き長らえて行かれるうちには、お年もめされるこってしょうぞ。
これはまるでラパリサードではないか。
書名 | 第二之書 パンタグリュエル物語 |
著者 | ラブレー |
訳者 | 渡辺一夫 |
発行日 | 1988 年 7 月 7 日 第 7 刷 |
発行元 | 岩波書店 |
定価 | 700 円(本体) |
ISBN | 4-00-325022-2 |
サイズ | ページ |
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