有吉 道夫:有吉道夫名局集

作成日: 2012-11-29
最終更新日:

概要

プロ生活 55 年、通算成績 1088 勝 1002 敗を誇る名棋士、 有吉道夫による自戦記を中心とした棋書。 自戦記編、名勝負編、勝局解説編の全3部からなる。

感想

棋譜

これはもう、すばらしい。 師匠である大山康晴との名人戦はすべて取り上げられている。 師匠と弟子とのタイトル戦は空前であり、おそらく絶後であろうと有吉は言っている。 名人である師匠に挑戦した第 28 期名人戦七番勝負は、 有吉が大山をカド番に追い詰めるほどの白熱した争奪戦だった。 有吉は、自戦記編全16局の冒頭にこの七番勝負の第一局をもってきている。さもありなん。 棋史に残る有吉の名手▲2八飛はノータイムである。ということは前からこの手を狙っていたということだ。 p.34 ではこれを自慢の一手と評していて、<さすがの名人も感想戦のとき、 「▲2八飛は気が付かなかった」と言われた。>ということばをひいている。 考えてみれば、火の玉流の有吉にしては、▲2八飛は守りの手であり、むしろ大山好みの手だろう。 それが弟子の有吉にやられたのだから、大山にとっては残念でもあったろうが、誇りでもあったろう。 なんといっても愛弟子なのだから。

この有吉の名局は、有吉の長い間の好敵手であった内藤國雄が取り上げて、 内藤の著書「初段最短コース」で題材としているほどだ。

自戦記編全16局の末尾は、高﨑一生とのC級2組順位戦を取り上げている。 この戦いは記憶に新しい。後手高﨑のゴキゲン中飛車に対して、 有吉は得意の玉頭位取りをとっているのだ。 といっても▲7五歩を伸ばしているだけで位を支える銀は6七のままである。 そのあたりの事情は本書を読んでもらえるとわかると思う。

そのほか

岡山県出身の有名人として、私は真っ先に有吉道夫氏と土屋賢二氏が浮かぶほどである。 みなさんには、ぜひとも将棋のプロ棋士に有吉道夫というすばらしい人がいたということを覚えてほしい。 そして、将棋がわからなくてもよいのでぜひともこの本を買ってほしい。

ちなみに、このシリーズは既に3巻が出ている。中原誠、大内延介、大山康晴の3氏である。 引退棋士の名局についてこれから続々出てくることを願う。

書 名有吉道夫名局集
著 者有吉 道夫
発行日2012年9月30日
発行元日本将棋連盟
定 価2800 円(本体)
サイズA5版
ISBN978-4-839-4206-9

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MARUYAMA Satosi