「序」から引用する:
物性を総合的に把握することを目標にして, 現代物理学によってつちかわれてきた物質観を, できるだけ統一的な視点から説き示そうと考えた. 物性を統一的に把握するとはどういうことか, またそのためにどんな視点がありうるか, いろいろ議論があると思うが, われわれはここでは次の 2 つの立場を選んだ. その 1 つは第 7 巻の主題をなすもので, 巨視系の存在様式をきめる法則, つまりそもそもどんな物質がどんな形態で存在しうるかを問いながら, 統計物理学の諸方法を駆使して,物性物理学を一面から整理しようという立場である.
副題は「物質の構造と性質」章立ては次の通り。
この講座は CGS 単位系で書かれている。手始めに第1章をみると、pp.1-2 では、
原子核は(中略)一般にはいくつかの陽子と中性子とからできていて,(中略)長さにして 10-13cm
程度の広がりを有する.
とある。p.2 では、
ただし `e` は電子の電荷の大きさを表わし,`e = (4.80298 +- 0.00020) times 10^-10` esu である.
という記述がある。この esu というのが早速わからない。調べると静電単位のことらしい。
それにしても電子の電荷は MKSA ではどのぐらいなのだろう。調べると、
1.602×10-19-19(C) であることがわかった。見覚えがあるような気がする。
こういった物理で基本的な量の数値(特にオーダー)を知ることは大切なのだろうが、
私はよく覚えていない。
物理の勉強の試験問題の項参照。
本講座の量子力学Ⅱでも触れた、 球面調和関数 `P_l^(abs(m)) (cos theta) e^(imvarphi)` がここでも出てきている。 `P_l^abs(m)(cos theta)` をルジャンドル陪関数として、p.8 の (1.3.15) 式が
水素原子に関するシュレディンガー方程式は厳密に解けたが、 水素分子に関するシュレディンガー方程式は電子が2つあるため厳密解を得ることは難しい。 p.45 以降では各種近似解法を説明していて、最初に出てくるのが分子軌道法である。 2つの陽子のクーロン場のなかの1電子の基底状態はどんな波動関数で表わせるか。以下、p.45 から引用する:
Bohr 半径と較べて `R` があまり小さくなければ, それは各々の陽子の近くでは水素原子の 1s 関数に近いものであろう. したがって,近似的に 1s 関数だけを使って分子の波動関数を表わそう.考えられるのは
という 2 つの波動関数 `varphi_+-` である.ただし `C_+-` は規格化定数, また簡単のために `varphi_("1s")(bbr ∓ bbR//2)` を `varphi_("a, b")(bbr)` とかいた.`varphi_+-(bbr) = 1/(C_+-)[varphi_"a"(bbr) +- varphi_"b" (bbr)]`(2.2.5)
引用するときに斜体の r が立体の `bbr` になってしまったが御寛恕を乞う。 この `varphi_("a")(bbr)` や `varphi_("b")(bbr)` は、 後に出てくるもう一つの近似方法、ハイトラー・ロンドン法でも使われる。私は最初ここを読み飛ばしてしまったので、 困った。
ヘリウムといえば興味深い物性で知られている。超流動状態にある液体ヘリウムである He II について、 p.74 で次のように記述されている:
L.Tisza は(中略)He II でも超流体(super fluid)と常流体(normal fluid)との 2 つの成分が共存するという 2 流体モデルを提出した.(中略)2 つの成分の密度を `rho_"s"`,`rho_"n"` とする. もちろん液体の密度 `rho` は,
`rho = rho_"s" + rho_"n"`である.(後略)
もちろん、と断定されて驚いたのだが、密度をこのように足していいのだろうか。私の理解が足りないことは承知しているが、 どうしてこの式が成り立つのか知りたい。
このページの数式は MathJax で記述している。
書 名 | 岩波講座 現代物理学の基礎7 物性Ⅰ |
著 者 | 松原武生, 松田博嗣, 恒藤敏彦, 村尾剛 |
発行日 | 1973 年 7 月 12 日 第1刷 |
発行元 | 岩波書店 |
定 価 | 1400 円(本体) |
サイズ | A5版 343 ページ |
ISBN | |
その他 | 越谷市立図書館にて借りて読む |
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