小熊 英二(編著):平成史 |
作成日: 2013-02-03 最終更新日: |
平成の時代を歴史として振り返る。
政治の章を見ていて、興味深い注があった。(107)の注を引用する。
たとえば、政治学者が行ったJES二という調査は、1993年から96年にかけて7回行われているが、 このすべてに回答した 589 人のうち、1 回でも支持政党なしと回答したのは半数近い 47.1 % に上った。 一方、一貫して支持政党なしと答えていたのはわずか 2.4 % に過ぎなかった。 樺島郁夫『政権交代と有権者の態度変容』(木鐸社、1998年)
ここで、JES 二という調査名は、正しくは JES II (II はローマ数字)であり、 政治学者を中心とした選挙のパネル調査を指す。ここで JES とは Japanese Election Study の略で、 JES I、JES II、JES III などがある。
さて私は、この百分率が出てくる文脈に疑問をもった。「半数近い」と「わずか」に、 著者の主張が現れているようだ。この 107 の注を挙げた原文はどうか。
ただし、無党派層という言葉の定着の一方で、世論調査で支持政党なしと答える層は安定しているわけではない。 自民党、民主党という大政党を中心に、特定政党の支持と支持政党なしを行き来するような人々が多いのである。
私の考えでは、どんな有権者でも確率 p で、前回の結果とは関係なく支持政党なしと答える、 という仮説のほうがよりよくあてはまるように思える。以下、計算しよう。
再度定義しよう。個人が支持政党なしと答える確率を `p` とする。 選挙が 7 回あり、7 回とも支持政党なしと答える確率は `p^7` である。 また、1 回でも支持政党なしと答える確率は ` 1- (1 - p)^7 `である。 さて、`p^7 = 0.024 `を満たす `p = p_0` と `1 - (1 - p)^7 = 0.471` を満たす `p = p_1` を求めよう。 まず、`p_0` からだが、`p_0 = 0.024^(1/7)` を計算して、`p_0 = ` を得る。 一方、`(1 - p_1)^7 = 0.529` であるからこれを解いて `p_1 = ` が得られる。`p_0` と `p_1` の間には大きな開きがある。 これは驚きだった。むしろ、`p_0` の値が `p_1` より多い。人種が違うのだろうか。 こういった確率計算をせずにいきなり割合の多い少ないで議論されると、足をすくわれる恐れがある。 (2013-02-07)。
書 名 | 平成史 |
著 者 | 小熊 英二(編著) |
発売日 | 2012 年 10 月 12 日 |
発売元 | 河出書房新社 |
定 価 | 円(本体) |
サイズ | B6 480ページ |
ISBN | 978-4-309-62450-1 |
その他 | 河出ブックス |
NDC | 210.77(日本史) |
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