二畳庵主人, 加地 伸行:漢文法基礎

作成日: 2011-04-17
最終更新日:

なぜこの本を買ったか

2011-04-17 の毎日新聞朝刊で、「正しいパンツのたたみ方」という本の若島正による書評を読んだ。 好意的な書評だったので、早速この本を買いたいと思い近くの本屋へ行ったが在庫はなかった。 はて、困った。そういえばこの書評に取り上げられていた別の本があった。 二畳庵主人の「漢文法基礎」である。本屋でこちらを捜してみたら、講談社学術文庫として復刊されていて在庫もある。 懐かしくなり、漢文を読む気もないのに買ってしまった。

さて、この本はあるキーワードで有名だ。「ポルノ漢文」である。 当時、この本は増進会(以下 Z 会)という、大学受験用の添削会社から発売されていた。 私が受験生だったとき、Z 会の添削は受けていなかったが、 ポルノ漢文があるというだけでこの本を買った。 当時の高校の友人 H くんは、「この本は実は宇能鴻一郎が書いたんだ」と怪しげな説を流した。 Z 会の参考書として発売されていたときは、筆名の「二畳庵主人」しかなかったのだ。 復刊された今、加地伸行さんの名前で出たことはめでたい。

私が買った大きな理由は、「ひょっとしてポルノ漢文が拝めるのかもしれない」ということだった。 しかし、立ち読みして目次や索引を見る限り、ポルノのポの字もない。 復刊にあたって削除されたのだろう。仕方ない。 もっとも、Z 会時代の「漢文法基礎」も、版によってポルノ漢文がある版とない版があるらしい。 わたしはおそらくポルノ漢文がある版を買ったはずだが、どんなポルノだったかまったく覚えていない。 ポルノに対してまったく鈍感だったのだろう。ちなみに、 私は大学入学時にほとんどの受験参考書を処分してしまった。 たぶん、当時所属していた文化部の部室に寄贈したのだと思う。 もったいないことをしたものだ。

小さな理由もある。それは、反訓が紹介されていることを立ち読みして知ったからだ。 今、私はまりんきょ学問所というところで「メビウスのことば」 というページを設けている。ここでは同一のことばなのに反対の意味を持つことばや言い方を集めている。 そのような奇妙な語を、漢文の世界で「反訓」と称していることをごく最近知った。 そこへ来て、漢文法基礎の目次をめくっていて飛び込んだのが「反訓」だった。 ここで反訓が説明されていれば、ポルノ漢文がなくとも買った価値はあるだろう、そう自分を納得させたのだった。

この本で覚えていたこと

私は大学入試で漢文の問題に出会ったかどうか、まったく覚えていない。 当時の状況証拠からは 2, 3 の問題に出会ったはずだが、痕跡すらない。 もちろん、大学に入った後に漢文を読む機会はなかったから、 この年になってポルノ漢文のないこの本を買う意味など、先の反訓を調べる必要を除けば全くなかった。

ただ、この本を買って確かめたかったことがひとつだけあった。 というのは、「開発」についての講釈である。こういう話だ。 「開発」という単語がある。これを覚えておけば、「開」という字で「ひらく」と訓読できるのだから、 「発」の字を見ても「ひらく」と訓読できるはずだ。そういった勘を磨いておけ、 という趣旨だったと記憶している。

私の記憶は大筋合っていた。pp.145-146 にその話が載っている。安心した。

もうひとつ、この本に載っていたということに初めて気がついたことがある。 それは、入試問題の傾向についての話だ。 「数学の大学入試問題は数学担当の教官が多いから、一人の教官に出題が回ってくるのは5年から10年だろう。 だからみな気合の入った問題を作る。 しかし国語や社会の大学入試問題は担当教官は少ないだろうから毎年連続して入試問題を作らないといけない。 わかる人が見れば傾向が似てくる」

まあだからどうだ、ということはないのだが、文系の先生は試験問題作成が大変だろう、 ということはわかった。 工学部の教官をしている友人の某くんに聞いたら、勤務先の大学で物理の入試問題を作ったそうだ。 自分がそんな役目になるとは思わなかったが、割り当てられたので気合を入れたという。 社会科学や人文科学担当の友人はいないから、どうしているのかはわからない。

この本で学んだこと

漢文を学ぶことは、漢文のみならず、古典文も、現代文も学ぶことになって、一石三鳥だ、 ということを著者は述べている。どのページにあったかすぐには見つけ出せないが、確かにそうだ。 今、福沢諭吉の「文明論之概略」を読んでいるが、 まさにこのことを痛感している。(2019-11-06)

同じ加地伸行氏の著作である「論語」も読んでいる。(2020-01-20)

書 名漢文法基礎
著 者二畳庵主人/加地伸行
発行日2010年10月29日(第2刷)
発行元講談社
定 価1650円(本体)
サイズ文庫版
ISBN978-4-06-292018-6

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MARUYAMA Satosi