フォーレ:宗教曲

作成日 : 1998-06-05
最終更新日 :

1. 宗教曲概観

フォーレの宗教曲はで一番有名なのはなんといってもレクイエムである。 ここではレクイエム以外の宗教曲を取り上げる。宗教曲以外の合唱曲・重唱曲は、フォーレの合唱曲・宗教曲を参照してほしい。 なお、ここでの宗教曲とはラテン語の韻文をテキストとする曲とした。

2. 恵み深きマリア

テナーとバリトンのための小曲。ソプラノとメゾソプラノで歌われることもある。 愛らしく、清潔な、いかにもフォーレ的な一品。ちなみに作品番号は47-2で、 続く作品番号48は有名な「レクイエム」である。作品番号 47-1 は「オ・サルタリス( おお、救い主なるいけにえよ)」である。この 47-1 は聴いたことがまだない。

あるとき、ふとひらめいたことがある。この曲を伴奏だけで演奏してもいいのではないかと考え、 自分が所属する弦楽合奏団でアンコールにこの曲を演奏するように働きかけ、 自分の編曲での演奏を実現させてしまった。フォーレ好きが高じた一つの例で、 団員には迷惑をかけたかもしれないがいい曲だという意見があったのでこれでいいことにしている。 なんでもある合唱団の指揮者によればこの曲は有名なのだそうだが、本当だろうか?

3. 小ミサ曲

Kyrie, Sanctus, Benedictus, Agnus Deiからなる8分ほどのミサ曲。 ミサ曲はすべて大仰なものという私の固定観念からすると、この小ミサ曲はひじょうにかわいらしい。 GloriaCredo もないが、やはりミサ曲である。

私のお気に入りは、 Kyrie の終結部の変イ長調からイ長調への転調およびその復帰である。

この転調、どこかで聞いたことがあるような気がしていたら、 案の定バッハの平均率クラヴィーア曲集第2巻のプレリュードとフーガに似た例があった。 ただどこかその切り口が違う。

4. タントゥム・エルゴ

フォーレは少なくとも 3 曲のタントゥム・エルゴ (Tantum Ergo) を作曲している。作品番号があるのが 2 曲(Op.55, Op.65-2)、 そして作品番号がないのが 1 曲(1904年作曲)である。タントゥム・エルゴとはラテン語で「大いなる秘蹟」という意味だ。 最も作品として優れているのは Op.65-2 のホ長調だろう。 フォーレのごく自然な転調が聞ける。 Op.55 はハープの序奏こそ気が効いているが、後はテナーの一本調子という気がする。 1904 年の作品は、残念ながら冴えない。 参考までに、ラテン語の歌詞を記した。 (2000-10-24)

5. サルヴェ・レジナ

聖母マリアを賛美するこの曲は、原曲(Op.67-1)ではソプラノ独唱用になっている。 手許の録音では非常に美しいソプラノで歌われており、 これは非常に気に入っている。ところがこの曲は合唱用にも編曲されている。 私はまだ合唱としてのこの曲は聞いたことはないので、 聞く(歌う)機会があればと思っている。 (2000-09-18)

6. アヴェ・ヴェルム・コルプス

アヴェ・ヴェルム・コルプス (Ave verum corpus) といえばモーツァルトの曲がよく知られているが、 フォーレ他、多くの作曲家も作曲している。Op.65-1 のこの女性合唱曲は、落ち着いた趣きでフォーレの宗教曲のなかでよく知られている。

7. アヴェ・マリア

Op.67-2 変イ長調 と Op.93 ロ短調がある。 Op.67-2はメゾソプラノ独唱(1894-1895)。控えめで落ち着いた印象。 Op.93 はソプラノの二重唱(1877作曲、1906改作)。華やかで粋な転調が効果的だ。

8. バビロンの流れのほとりで

習作であり、なかなか聞くことができなかったが、 最近パーヴォ・ヤルヴィの指揮の録音で聞けるようになった。 フォーレの個性はまだ出ていないが、 ダイナミックな半音階のうねりからは学生時代の彼の生気のほとばしりを感じる。 この録音を紹介してくれた hasida さんに感謝します。(2012-11-18)

なお、この詩篇第 137 番(136 番と呼ばれることもある)には、 多くの作曲家が曲をつけている。題名は「バビロンの川のほとりで」 「バビロン河の畔りで」など、いくつか揺れがある。 この詩編には多くの作曲家が曲をつけている。また、この名を冠した器楽曲もある。下記は一例である。

どうでもいいことだが、パレストリーナの合唱曲は私も歌で練習したことがある。

9. オ・サルタリス

Op.47 「2 つのモテット」の第 1 曲(第 2 曲は「恵み深きマリア」)。バリトンソロのための、 おちついた曲だ。

10. 見よ、忠実な僕を

Op.54 の「見よ、忠実なしもべを」(Ecce Fidelis servus、エッチェ・フィデリス・セルヴス)は、フォーレの宗教曲の中ではとりわけ好きな作品だ。 原曲はソプラノ・テナー・バス(またはバリトン)の三重唱または三部合唱の曲である。この名の曲はフォーレ以外で見ることは珍しい。萩原英彦によれば、 カワイ出版「フォーレ合唱曲集 混声合唱篇」の本作品の解説で、 見よ 忠実なしもべ……の聖句は,旧約聖書 : イザヤ書第 65 章第 14 節 および新約聖書 : マタイ伝福音書第 12 章第 18 節にもとづくものである. とのことである。

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MARUYAMA Satosi