フォーレ:小品集(ピエス・ブレヴス)Op.84

作成日:1999-10-25
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1. 小品集とは

フォーレは自分の曲に標題をつけられるのを極端に嫌った。 だから、ピアノ曲で特定の標題がついている作品はひとつもない。 すべてショパンがつけているキャラクターピースの題名とその変種ですませている。 これをさらに徹底したのが「小品集」(ピエス・ブレヴス)。 8曲が含まれている。フォーレは過半数の曲を題名をつけないままにしておいたが、 出版社によって新たに名前をつけられた。今では出版社による名前で知られている。

なお、小品集は本来全8曲であるが、最後の8番は「夜想曲」であるため、 夜想曲系列に組み入れられることがほとんどである。 この小品集からの夜想曲は、夜想曲系列でも第8番となっている。 従って、出版される楽譜やレコードは残りの7曲が取り上げられている。

2. 解説

第1曲「カプリッチョ」9/8 拍子、変ホ長調

題名から想像されるよりは落ち着いている。むしろ舟歌に近い。

第2曲「幻想曲」2/4 拍子、変イ長調

即興曲のジャンルに入るだろう。 軽さと気品が求められる。

第3曲「フーガ」4/4拍子、イ短調

ほとんど変化のない主題からできている。 オルガンの響きを想定したのだろうか。

第4曲「アダージェット」3/4拍子、ホ短調

沈痛な表情を想起させる深い楽章。 彼の2つのチェロソナタにある緩徐楽章を思い起こさせる。

第5曲「即興」4/4拍子、嬰ハ短調

この曲集の中でもっとも軽い曲想をもつ。 シャンソン風な、粋な演奏が似合う。

第6曲「フーガ」3/4拍子、ホ短調

第3曲のフーガよりは動きがある。 しかし、厳格さはバッハなみ。

第7曲「よろこび」6/8拍子、ハ長調

この調性はフォーレにしては珍しい。 最初から最後まで爽やかに流れ、滞ることがない。 結尾がどこかで聞いたことがあると思ったら、 あのピアノ五重奏曲第2番の第1楽章の最後そっくりではないか。

3. 感想など

この曲集は、めったに弾かれることがない。 学生のとき、第5番を弾いた方がいたが、その演奏は残念ながら曲の魅力を伝えたものとは言い難かった。 そして私のほうがもっとうまくひけるのではないかと勘違いし、第1番と第2番を弾いたが、あまりうまく弾けなかった。 私はこの曲集を甘く見ていたのだ。

フォーレの他の曲に比べれば難易度は低いのは事実なので、入門用としてこの曲集はいい。 とはいえ、全部を無理してさらう必要はなく、好きな曲だけ、弾ける曲だけ練習するのがいいと思う。 恥ずかしいことに、私には第4番の魅力がいまだにわからないでいるのだ。 (2004-03-28 初版、2019-03-09 改定)

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MARUYAMA Satosi