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2005年6月18日

また少し忙しくなったが、 隣に座っている人(今月の残業時間が100時間を超えたとか)よりは、 ずっと余裕がある。
比較対照としては正直どうかとちょっとだけ思った……が気にしないことにした。

桜坂洋 『スラムオンライン』 (ハヤカワ文庫JA)

面白かった。

燃えないし煮え切らないし、人類の明日もかかってないし、 英雄でもないし、凄腕のハッカーでもない。 家庭用ゲーム機と普通のネットワーク回線を使って、 普通のネットワークゲーム(接続料900円/月)を普通に遊んでいる大学生の話。

バーサス・タウンはMMO格闘と呼ばれるジャンルのゲームである。 MMOとは、Massive Multi - Player Online ──日本語で言うと大規模多人数参加型オンラインということになる。 コンピュータを相手にしたただの格闘ゲームではなく、 ネットワークに接続し、他のプレイヤーとやりとりをしながら遊ぶゲームだ。 プレイヤーは、自分の分身となるキャラクターを創造し、 ネット上につくられた架空世界に参加する。

(本書 pp.41-42)

内輪の言葉が少ないので、風通しよく読める。
内輪の言葉、というのは、ある程度の間続いている場所にいる、 固定化した人員が使う言葉のこと。 ゲームでもそうだし、「普通の」職場でもよくみられる。
固定化した側は意識してないんだろうけど、 新しく入った側には、意味不明の言葉やお約束の羅列は、なんとなく鬱陶しい。 ああ、これに馴染んだんだらお終いかな、とわけもなく思ったりする。
そういうのが少ない(全く無いわけではない)のが、いい。

作者のインタビューが、 今月号のSFマガジン((「SFマガジン」2005年7月)に掲載されている。 (いま手元に無いので、記憶に頼って書く)
プレイヤーのスキルが生きるという意味で、RPGではなく格闘にした、とあった。 確かに、MMORPGは、今のところ年功序列 (しかもその世界で遊んでいる時間が長ければ長いほど有利)になっている。 プレイヤーのスキルを競う遊びではない。

とは言え、本書に出てくるような、 コマンド入力の入力の速度が生きる作りのオンライン格闘ゲームも、 今のところ無いはず。 通信環境の差を均すような作りをしないと、 不公平だと言う客は必ず出てくるだろう。


2005年6月20日

4000万枚分のカード情報

MasterCardなどのカード情報4000万枚分が大量流出(スラッシュドット・ジャパン)

提携カードも含まれるようですね。また、 amazon.co.jpやibm.comでのクレジットカードによる決済も海外利用扱いになるそうです。

参考にしたページ:クレジットカードによる支払い (amazon.co.jp)、 クレジットカード番号について(通信用語の基礎知識)


2005年6月26日

おめでとうございます。

坪内祐三 『古本的』(毎日新聞社)

「古本的」と「ミステリは嫌いだが古本は好きだからミステリも読んでみた」 (長い)の二部構成。

明治大正昭和の、いわゆる純文学にはあまり興味がないのだけれど、 ここで取り上げられている、作家についての話はとても面白かった。
たとえば、杉山龍丸(夢野久作の長男)の語る、ガンジー主義へ至る経緯の話、 太宰治の、自分は随筆を書くのは苦手であるという告白、 学生時代の小林多喜二についての描写(素晴らしい)、 江見水蔭が語る尾崎紅葉についてのちょっとしたエピソード(笑えた)、など。

それと、古本についての著者の距離の取り方もいいなあと思う。

古本屋に通うのは好きだけど、私は、人が思うほど、 古本をたくさんは買わない。 私は棚を覗くのが好きなのだ。
そのくせ、お気に入りの本を見つけると、 特にそれが手軽な文庫本だったりすると、何冊も買ってしまう。 前にも書いたように中公文庫の『明治大正見聞史』や『銀座細見』なんか、 すでに四〜五冊持っている。 それを机の上に平積みしてみると、新刊本みたいで、楽しい。

(p.57)

こういうところがいい。

ところで、「ミステリは……」の中の「蔵書整理中に読みふけってしまった一冊の古雑誌」 に出てくる『<OH!>の肖像』は、 『証言構成 OHの肖像』(飛鳥新社)のことだと思われる。 (この本の次に読んだ『現代SF1500冊』(p.110)に出てきました。)


2005年6月30日

博多山笠は「はかたやまかさ」と読みます。("か"は濁らない)

大森望 『現代SF1500冊 乱闘編 1975〜1995』 (太田出版)

移動中に、少しずつ読んだ。昔の大森氏の書評は強烈で楽しかった。

『暗闇のスキャナー』は何時ハヤカワ文庫SFに入ったんだ?(p.33)とか、 「妻を愛している殺さないで暮れ」はタイトルに引っ掛けた洒落?(p.95)とか、 阿部毅氏だけは100点満点じゃ無かったんだな(p.95)とか、 一度読み終えた後は、表を「じっくり眺めて楽しんで」いる (私はマニアではないけど)。

黒き流れ三部作は、 以前、第一部の最初で放り投げたのだけれど、 第二部まで読んで止めると幸せになれそうだ(p.321)。読もうかな。