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2005年4月1日

新年度初日だが、仕事は昨日の続き。

北上次郎,大森望『読むのが怖い!』(ロッキング・オン)読み中

掛け合いが楽しい。やり取りは、同期するよりずれているほうが楽しい。 そして読む暇も無いのに、また本が増える。

で、まだ途中なのだが、一箇所ちょっと引っかかった。『グラン・ヴァカンス』を紹介するところ(p.164)で、 例として上げられている「FF6」(本文中ではローマ…ではなくてギリシャ数字(2004/04/20 訂正))、これは「FF11」のことでは?


2005年4月3日

北上次郎,大森望『読むのが怖い! 2000年代のエンタメ本200冊徹底ガイド』(ロッキング・オン)

「SIGHT」に連載中の書評対談から、2001年夏〜2004年秋までをまとめたもの。
北上、大森、両氏が選んだ本+編集部が選んだ本を取り上げていて、 本書は第一回『黒い仏』からはじまり、第十四回『蹴りたい田中』で締めとなっている。
書評はもちろん、それ以外でもいろいろと面白かった。

何が面白いかというと、北上氏が自分の選んだ本を取り上げる時に、すごくかまえるところ。 後半は、(読む側からすると)待ってましたという感じで、楽しかった。
かまえるその理由は、あとがき対談で出てくるが、さらに笑ってしまった。

競馬好きに読んで欲しいのが、『シービスケット』の書評(本書 pp.221-224、pp.239-240)。

北上 すごいのがさ、この写真なんだよ。 ラストのサンタアニタ・ハンデのね、最後の直線のシーンで……(略)
(本書 p.223)

最後の直線の写真を熱く語る北上氏の興奮は、競馬ファンにしか分からないような気もする。 傍(司会と大森氏)は笑っていて、そちらの反応も分かるんだけど。


2005年4月4日

箸は朱塗りが好きです(何か違う)。

プロ野球の季節

ジャンケンみたいだ、という話を 鷹ファン(一応地元なので)と鴎ファン(こっちは熱狂的)でやっていたら、 その背後を、2005年4月3日現在セパ両リーグで唯一全敗のチーム(兎)のファンが通り過ぎた。

新元良一『翻訳ブックカフェ』(本の雑誌社)

とびっきりの名翻訳家11人へのインタビュー集!(本書、帯より)

柴田元幸氏、村上春樹氏へのインタビューを楽しみにしていたのだが、 手に取ってみると、全てのインタビューが興味深く、面白かった。
特に、鴻巣友季子氏の『嵐が丘』の話(悲劇の中に垣間見える笑い)と、 岸本佐知子氏が『フェルマータ』について熱く語るところが楽しい。
トム・ジョウンズ(p.48)は、確か『うずまき猫の見つけ方』でニコルソン・ベーカーと一緒に出てきたはず。 そのエピソードもとても面白かったなあ。ここでは註釈が無いのが残念。 (検索してみると『月曜日は最悪だとみんなは言うけれど』に、エッセイが収められている)

土屋政雄氏の「コンピュータのマニュアルの翻訳でも、ああいう口調 (引用者註『アンジェラの灰』の文体。子供言葉、らしい)で 書いちゃったことがあって」(p.215)に笑ってしまった。
そして、どんな文体なんだろう?と興味が湧く。


2005年4月5日

満坂太郎『海賊丸漂着異聞』(創元推理文庫)

幕末、伊豆七島のひとつである御蔵島の沖に、合衆国船籍の商船バイキング号が漂着した。 船に乗る大人数を島に受け入れての大騒ぎの最中に、島からある人間が姿を消す。
そしてひとつめの事件が起こった。

通詞(通訳)として島を訪れた中浜万次郎と、島に住む主人公(御蔵島の書役、書記のような役職らしい)が それぞれの本来の仕事の合間に事件の謎を解いていくのだが、 謎よりも、主人公が万次郎に向ける、素直でちょっとミーハーな振る舞いのほうが読んでいて面白かった。
万次郎の島での最後の日なんて、それは職権乱用では、と思うくらい。
万次郎も、明るくて頭がよくて少々浮世離れしていて、憧れの探偵役にはぴったり。

謎解き自体は、謎そのものがあまり切羽詰まっていなかったこともあって、それほど興味が持てなかったのだが、 ミステリファンにはにやりとさせられるものがあるのかも、と、解説(末国善己氏、国は旧漢字)を読んで思った。


2005年4月6日

日中に太陽の下を歩いた。体がほぐれてとても気持ちがいい。

エドモンド・ハミルトン/中村融 編訳 『フェッセンデンの宇宙』(河出書房新社)

「奇想コレクション」シリーズを読むきっかけになった本。 昔むかし、表題の短編を読んで、とても面白かったので、手に取った。

「フェッセンデンの宇宙」の科学者は、昔読んだバージョンでは、 たんに好奇心いっぱいの専門莫迦だったのにと思っていたら、 編訳者あとがきによると、この短編には違うバージョンがあるとのこと。 昔の私はそちらを読んだのだろう。
止めるほうもこのタイミングで止めるんだから同類って気がしないでもない。

「向こうはどんなところだい?」「帰ってきた男」が面白かった。 どちらも、これでもかというほど主人公が孤独で、救いのささやかさ(?)に ほっとして思わず笑ってしまう(笑うところではないのだろうが)。
「凶運の彗星」は、どたんばでそうなる所が今一つ。 読んでいる側としては、彼が最初からそのつもりだった、と勝手に解釈してしまいたくなる。
「風の子供たち」は、この話の後を読みたい、と思った。

装画は、松尾たいこ氏。 『犬は勘定に入れません』『クライマーズ・ハイ』『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』の装画も手がけている。


2005年4月7日

カリフォルニア・ロール

飲み屋で、締めに出てきた。
具はアボカドのみで、カニカマボコは無し、海苔を内側に巻いて、外側には白胡麻をまぶしてある。結構おいしい。 アボカドが嫌いだと駄目かもしれないけど。


2005年4月10日

昨日は仕事だった。

丸山健二『安曇野の白い庭』(新潮文庫)

題名と口絵(カラー写真)だけを見て買ったのだが、読み終えることが出来なかった。
最初の数ページでいきなりこうである。

私が打ち込んでいるのは、お気に入りのいろとりどりの花をちょっと植えて、 あとはときどき思い出したように水をやるというような、 女や子どもにも出来る程度のことではない。(p.11)

私は庭の話が読みたかっただけで、この著者の愚痴が読みたいわけではないのだが。
その後も「女の腐ったような――今は男の腐ったようなと言うべきか」(p.26) 「女と、女に近い男たちは、どうしてこうもシラカバが好きなのだろうか?」(p.146) 「女って奴は目先の美のことしか考えられないんだよ」(p.147) 「ところが、なぜかそういう(引用者註:芸術家に向かない)タイプの人間が芸術に関わりたがる。 女と、女に近い男は、どうもそれ(引用者註:芸術に必要な行為)が苦手らしい。」(p.149)と続く。
ここで放り投げた。

帯に「女と、女に近い男たちはお断りです」と書いてほしい。 「選ばれた男のなかの男のための話」とでも書くとちょうど良いだろう。 この帯(凄い庭を造ることに後半生を賭けてみたい!)だと、庭仕事の本と間違う人は出てくると思う。
間違えて買うところまでいくのは、私だけかもしれないが。

ところで、著者はTVや写真で知っただけの「イギリスの有名なホワイトガーデン」(p.46)こそが 「何年費やしてもめざすに値する庭」(p.46)と思ったそうだが、 そのホワイトガーデンの作者について調べなかったのだろうか。

ヴィタ・サクヴィル=ウエスト/食野雅子 訳 『あなたの愛する庭に』(婦人生活社)

口直しに、再読。庭の本ならこういうのが楽しい。 『園芸家12ヵ月』『ボタニカル・ライフ―植物生活』も面白かったな。

本書は、《オブザーバー》という週刊日曜新聞に連載されたものを季節ごとに再構成し、まとめたもの。 それに加えて「小さな花の本の神秘」「ヒドコート・マナー・ガーデン」も収められている。 (著者による「まえがき」(pp.6-7)より)

著者は、ホワイトガーデンの作者のひとりである(訳者あとがきによると、デザイン担当がハロルド・ニコルソン、植付け担当がヴィタ)。
共同作業であるとはいえ、色を統一した庭(著者によると「花壇」)の案は、彼女のものである。 本書には「グレーと白と緑の花壇に挑戦している。」(p.14)との記述がある。

花壇と書いてはあるが、私が思い浮かべる花壇のおおきさとはかなり違うようだ。
たとえば本書には、著者の隣人(70代)の話が出てくるのだが、 彼女は、それほど大きくない「300坪程度」(p.33)の庭の持ち主で、 吹きさらしで粘土質の土と、めぐまれない環境にあって、手入れをほとんどひとりでやっている、そうだ。
小さめの庭のデザインについては、「ここで小さめというのは、600坪から2400坪くらいまで」(p.43) とも書いてある。
花壇は、300〜600坪くらいだろうか?

園芸愛好家の複雑な気持ちを書いた箇所は、微笑ましい。ちょっと人とは違うものを植えたいけれど、 誰もが植えているようなものでも、こんなに美しいものもある、でも……というような感じで。
植物の描写も美しい。タイサンボク(p.101)など、目に浮かぶようだ。 大輪のパンジーをいっぱいに木のトレーに詰めたのを

どれこもこれもカールしたビロードのネコの顔なのだ。(p.65)

とか。ここより少し前にある、桜と曇り空の対比も奇麗だった。

「小さな花の本の神秘」は、偶然手に入れた古い手書きの、庭仕事についての本の話。
「ヒドコート・マナー・ガーデン」は、ヒドコート・マナーの庭についての紹介である。 植えられている植物について、その植え方についてなどの説明が面白い。


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