白いアイアンコング
おもちゃショーで初めてお披露目されてから、雑誌やネットでも大きな話題となっている、アイアンコング・エヴォルツォーネは、ゲームショーでも展示されていた。残念ながら、ここでも、デモを見ることは出来なかった。
1999年のゾイド復活時、ゾイドは、ゾイドチームが一つの事業部として独立して商品開発がされていた。しかし、アニメが終了し、復活から一段落したゾイドは、爆走ロボやビットチャージーなどを含めた、ボーイズホビーという大きな事業部の中に吸収され、そこの一チームであるゾイドチームで商品開発が行われるようになったそうである。こうした組立キットのゾイドを作る部署の他に、ゾイドのゲームを作る部署がある。これらふたつとは更に独立した未来開発部と言う部署で開発が行われてきたのが、このアイアンコングである。未来開発部は、旧シリーズの頃のゾイドを開発していた方々が多く所属している、中長期的な商品開発を目指している部署だそうである。
アイアンコング・エヴォルツォーネは、各関節にサーボモーターを内蔵して、リアルでスムーズな動きを再現することを目指している。1月のホビーフェアで、アルティメットゾイドと称された、多くのサーボモーターを内蔵して、リアルな動きを再現しラジコンで動かすことを意図した4足歩行タイプのゾイドが紹介されたのであるが、同じラジコンで動かすと言う要素はあるモノの、このアイアンコングは開発の部署や流れは全くの別物だそうである。
このアイアンコング、確かにリアルな動きをさせることが出来るとなると興味はそそられるが、手にしたユーザーはどう遊んだらいいのかが見えてこないのが、引っかかるところである。今までのゾイドと同じように、作ることが楽しみの一つ、と言っても、これだけのモノを販売するとなると、おそらくランナーパーツではなく、メイン部分は組立済ユニットになっていて、ソケットやコネクターをつなぐだけが組み立てる要素となり、作ることを楽しむには遠い形になってしまうのではないかと思われる。組立後に動かすことが遊び方のメインとなっても、歩かせる、手を振らせる、ドラミングさせるなども考えられるが、一通りの動きをさせてみたら、とりあえず満足して、それ以上の発展性が見えてこない。もしくは、多くの対戦型ラジコンロボットが、BB弾の撃ち合いで対戦しているので、それに代わって取っ組み合いのような対戦が出来るのであればおもしろいであろうが、そこまでの強度と転んでも起きあがれるような動きの柔軟性が持たせられるのであろうか。
思い切った考え方は、商品化をしないこと。このまま商品化するのではなく、「トミーもこれだけの技術を持っているんだ」と言うことをアピールしながら、技術の蓄積のための素材として用いることで開発を続け、蓄積された技術を分解して、技術の部分部分をもっと遊び要素を持った低価格のおもちゃにフィードバックしていく事を目的に、更に開発をつづけていくと言う形でも問題はないのではないかと思われる。そして、こうしたイベントを通して、毎回同じ機体を持ち込んでデモをしながら、「前回はここまでしかできなかったが、今はこんな事も出来るようになりました。」と言う発表を繰り返して、トミーが技術力をアップさせていることのアピールのための機体でも良いと思われる。
ゾイドは、結局動物というモチーフの限界があるため、自ずとその動き方にも限界があるのではないかと思われる。せっかくサーボモーターを使って細かい動きをおもしろさを追求するなら、TXR系列からの発展させた、自由な形から出来るであろう自由な発想の動きをするモノを見てみたいし、または、オムニボットの系列の、愛敬があって動きが豊かでありながら実用性のあるモノの方が、こうした技術をもっとおもしろく生かすことが出来るのではないかと感じたのは否定できない。
もちろん、実際には、商品化を目指しての開発が続けられており、2003年末の発売を予定しているそうである。今後、どのような遊びの要素が加わるのか、トミーの発想に期待したい。(2002/9)