諏訪の森法律事務所 Lawyer SHIGENORI NAKAGAWA

住所:〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-16-8 アライヒルズグレース2A

電話:03-5287-3750



HOME > 特集 > レズビアン/ゲイの人権・法律問題  > 同性カップルの公正証書作成について


レズビアン/ゲイの人権・法律問題

同性カップルの公正証書作成について

ゲイやレズビアンのカップルから、「共同生活に関する契約書」や「遺言」を公正証書にすることを依頼されることが増えています。


Q. 同性カップルの場合、このような書類を作ることにどのような意味があるのでしょうか?

同性のカップルが公正証書で「遺言」や「共同生活に関する合意書」を作る最大の目的は、「結婚」という制度を利用できないデメリットをカバーする、という点にあります。

異性愛のカップルは、婚姻(法律用語で結婚のこと)の届出をすればそれだけで、いろいろなメリットを享受することができます。

★一方が死亡した場合、他方は遺言書が無くても当然に2分の1以上の相続分が法律で認められます。これを「法定相続分」と言います。他に相続人がいるかどうかで割合は異なります。

★配偶者(結婚している相手のこと。妻の配偶者は夫、夫の配偶者は妻)が相続する場合には、相続税も大幅に少なくなります。

★所得税の申告にあたっても、配偶者がいる人は「配偶者控除」という名目で収入から一定の額を控除することが認められます。

★また、一般に不動産を贈与した場合には高額の贈与税がかかりますが、結婚して20年以上たつ夫婦の間で、住居のための土地・建物を贈与した場合、2000万円の範囲で贈与税がかかりません(借地の場合でもよい)。

★法律や税金以外でも、給料をもらう場合に「家族手当」が支給されたり、各種のカードで家族会員の制度を利用することができます。また、病気や交通事故で入院して本人が意識不明の場合、本人に代わって医師から病状・治療について説明を受けたり、治療方針に同意を与えるのもまずは「配偶者」です。

同性カップルの場合には、婚姻という制度(パッケージツアーみたいなもんですね)の利用ができません。

しかし、遺言を作ることによって、自分の財産を相手方に与えることができますし(遺贈と言います。贈与税ではなくて相続税が適用されます)、「祭祀承継者」を指定することによって自分の死後誰が遺体を管理し葬儀を主宰するかを指定することも法律的には可能です。
また、医師からの説明を受けたり治療への同意を与える権限については、医師がどう対応してくれるかによって左右されてしまいますが、少なくともあなたの意志が書面で明確に表示されていれば、お医者さんもまったく無視することはできないはずです。
また、公正証書に書いてないことがらについても、このような公正証書を作っていることを示すことで、異性愛の夫婦同様のサービスを認めさせたという方もいます(クレジットカードの家族会員、生命保険の受取人変更など)。公正証書のメリットも、みなさん方自身の積極的な行動によって大きくしてゆくことができるのです。

このような書面は、公正証書にしなくても法律的には有効です。しかし、公正証書にしておけば、いざという時に(たとえあなたが意識不明の重体でも)、真実あなたの意思に基づいて作成されたのだということを容易に証明することができます。

最後に、公正証書をつくることを通して、カップルのお互いが二人の関係性やそれぞれの考えについて理解を深め、周囲の人々に対して二人の関係を宣言する、という意味があります。


Q. 公正証書とは?

友達の場合でも作成することは可能です。
ただし、この場合は、一方が解消希望する場合にどのような条件で解消が認められるかをはっきりと取り決めておく必要があるでしょう。


Q. 遺留分の制約

養子縁組は、親子でない人たちが、合意(一種の契約)によって親子関係に入る制度です。(民法727条)手続きは、婚姻届と同じような届出書を市役所等に提出するだけです。

養子縁組をすると、養子となった者は実の子と同様の身分を取得します(実の親との関係も変わらず続きます)。例えば、養親が亡くなった場合、遺言が無くとも当然に相続できることになりますし、社会生活のいろいろな場面で「親子・親族」として扱われます。

ただし、養子縁組の場合には、年上の方が必ず「親」にならねばならず、「子」は「親」の戸籍に入るので姓(名字)も自動的に変わってしまいます。

レズビアンやゲイのカップルが自分たちのパートナーシップに法的な裏付けを与えるために養子縁組をした場合、後に相続の問題が実際に発生した場合などに、相手方の親族等から、「養子縁組は無効だ」と主張される可能性もあることに注意すべきでしょう(ヘテロの世界だって相続税を少なくするための養子縁組が堂々とまかり通っているのですから、本来、ケチをつけられる筋合いは無いと思いますが)。

また、外国人と日本人のカップルから、養子縁組をすることで在留期間をのばせないか、という相談をよく受けますが、養子縁組をしてもそれだけで在留資格が得られるわけではないことに注意すべきです。

公正証書とどちらがよいか、という問題は一概には決められません。養子縁組は、特に日本人どうしであれば手軽ですが、名字が変わることを自分が受け入れられるか、社会生活への影響はどうか等の問題をよく考えたうえで決めるべきでしょう。

<< 前のページへ戻る



Copyright (C) Suwanomori Law Office All Rights Reserved.