諏訪の森法律事務所 Lawyer SHIGENORI NAKAGAWA

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性教育バッシングを許さない人権救済申立

本件については、大変多くの皆様に申立人となっていただき、大きな動きを作り出すことができました。本当にありがとうございました。
2006年現在「こころとからだの裁判」は佳境に入ってきております。本ページについては、更新がなかなか出来ず、情報が古くなっている部分がありますが、記録の意味をこめ、ここに残しておくことにいたします。


人権救済の申立を行い、司法記者クラブにおいて記者会見を行いました

かげさまで、わずか10日あまりの間に1520名以上の方に申立人となっていただきました(その後も増え続けすでに2000名を超えました)。

司法記者クラブ記者会見1 映画監督の山田洋次さん、脚本家の小山内美江子さん、元衆議院議員の川田悦子さん、保坂展人さん、子どもたちがほんとうに必要とする性教育のためにがんばっている北沢杏子さんや安達倭雅子さん、森田ゆりさん、東京大学名誉教授の堀尾輝久さん、早稲田大学教授の増山均さん、ピースボート共同代表吉岡達也さん、堀口雅子さんら多数の医師、保健・福祉・教育関係の専門家の方々、草の根の市民のみなさんが名前を連ねてくださいました。もちろん、七生養護学校の教員や保護者を始め近隣の住民、PTA関係者なども申立人となっています。

司法記者クラブ記者会見2 12月22日(月)東京弁護士会に人権救済の申立を行い、司法記者クラブにおいて記者会見を行いました。 記者会見では、申立の報告・説明とともに、「スージーとフレット」の人形を展示して授業での使い方についても具体的に説明しました。また、「からだうた」も実際に演じて見て聞いていただきました。ほのぼのとしたメロディーと歌が記者クラブ内に流れると、各社ブースから会見場をのぞきこむ和やかな光景も。横山教育長は、都議会で「とても人前で読むことがはばかられるもの」「きわめて不適切な教材」などと答弁しましたが、どう考えても実際に授業で行われているようすを見ないで答弁したとしか思えません。記者の方々にもよくわかっていただけたと思います。

司法記者クラブ記者会見3 会見には、七生養護学校の保護者も参加して、「事実を知らないまわりの人たちから、『お宅のお子さんはあんな授業を受けていたのか』、とへんな目で見られてとてもつらく悔しい思いです。七生養護学校では、私たち保護者は「こころとからだの学習」についてはきちんと事前の説明を受け、とても大切でいい授業だと感謝していたのに、一方的に不適切とされるのは納得できない」と思いを述べました。


「人権救済申立」の申立人になってください   ※現在は、終了しております

《性教育》は子どもの人権!   たいせつな教材を返して!
石原都知事と都教育委員会に性教育バッシングの中止と処分の撤回を求めます。

都立七生(ななお)養護学校で子どもたちのために取り組まれてきた性教育「こころとからだの学習」について、一部の都議とマスコミが「過激性教育」などと事実を歪め、石原都知事も一方的に非難する発言をしました。東京都教育委員会は、実際の授業を一度も見ることなく、保護者や教職員の意見も聞かずに、他の養護学校を含めて116名もの校長・教頭・教職員などを「処分」しました。さらに、七生養護学校の保健室から、145点に上る性教育の教材や授業記録を持ち去り廃棄しようとしています。


七生養護学校は知的障害を持つこどもたちが通う学校です。
七生の性教育は、からだの成長にとまどったり不安をもってしまう子どもたち、深刻な性被害などの現実を前に、教職員が学校全体の取り組みとして話し合いを重ね、保護者の理解も得ながら進めてきたものです。実際の授業は事前の説明や事後のお知らせで保護者に知らされ、見学もできます。保護者がどうしても受けさせたくないと考えた場合は受けないこともできます。ひとりひとりの障害にあわせた学習です。「過激」等の非難は事実をねじまげた根拠の無いものです。

障害のある子どもたちの学習では特にわかりやすい教材が大切です。
もうすぐ生理がはじまる子どもたちに、生理のことや対応を説明するにはコトバや絵だけでは不十分なことが多いのです。そんな時、性器のついている人形を使って具体的に説明することができます。

仮に具体的な授業の方法について違った意見がありうるとしても、それは、子どもや保護者、現場の教職員、専門家がじっくり検討・検証してゆくべき問題で、今回のようなやり方は、教育基本法10条が禁止する「不当な支配」と言わざるをえません。


「都立盲・ろう養護学校不適切運営」報道の実態
(七生養護学校の保護者の方がお書きになった文章です)

(・・・前文略)
7月5日のサンケイ新聞に『過激性教育 都議ら視察』という報道が載りました。それは私の息子・宏樹が11年あまり通った七生養護学校の事でした。実際の授業ではそのような使われ方はしないのですが、下半身むきだしの人形を3体並べた写真を撮り、「常識では考えられない、まるでアダルトショップのよう」という悪意にみちた事実をねじまげた内容でした。

都教委立会いのもとに全校保護者会が行なわれた時には、あまりにも一方的な報道と都教委のやり方に抗議の声がたくさんあがりました。七生養護では、授業内容は事前にも事後にも木目細やかに学級通信がだされ、授業を見る機会も意見を聞く機会も多くあったから保護者は充分理解していたからです。また、国会議員の川田えつ子さんが設けてくれた文科省との話し合いの場で「発達段階にあっていない」とか、「一律な授業」であったとか、「保護者から抗議の声があがっている」という虚偽の報告を都教委が国にあげていたこともわかりました。
(・・・後略)
<全文はこちら>


こうした「性教育」に対する攻撃は、いま都内各地で起こっています。東京都教育委員会は、一方的に「性教育に関する実施指針」を策定して性器の名前や性交を扱うことを禁止し、子どもたちに必要な、具体的でわかりやすい教材を使うこともできなくなっています。


たとえばこんな教材が不適切として禁止・押収

・・・ほんとはとても素敵であたたかい思いのこもった教材の数々。
どれも、子どもたちの実情に即した学習をするための大切な教材です。


からだうた

「うた」は、「あたま」から始まり「あし」で終わるのですが、身体の各部分の名称の一つとして「ペニス」や「ワギナ」が出てくるというものです。知的障害のある子どもたちには、からだが頭・首・手足…とつながりのあるものと捉えにくく、そこで教員の歌う「うた」に合わせてしっかりとからだの各部位にふれてもらい、ボディーイメージや名称を意識できるよう創作されたものです。からだに触れることをともななうので、同性の教員が行うよう配慮され、もちろん性器などのプライベートゾーンにふれることはありません。


スージーとフレット

スージーとフレット 子どもたちは、言葉や図ではなかなか理解が難しいこともあって、より具体的なものが必要となります。例えば、「性器付き人形」は、男性のからだ、女性のからだの違いを知る学習で使用されました。時には、子どもが「セックス」という言葉をよくわからずに、「セックスしちゃった」などと口にすることもあるので、その意味を正確に知り、間違った使い方をすると、自分も相手も誤解されたり傷ついたりすることを学ぶことをしてきました。

7月5日付産経新聞の写真(前ページ参照)では、人形はすべてことさらにズボンやスカートをずり下げられ下半身むき出しの状態で並べられていますが、もちろんこんな使い方を授業では絶対にしません。人形はいつもはきちんと服を着て、授業の時に服を脱がすときも、子どもと一緒に「お願いします」などと声をかけながらていねいに扱っています。


最近の調査によれば高校3年生までに男子の37%、女子の45%が性交を経験しています。そのような中で、10代女性の妊娠中絶が年間4万5千件あるとされています。障害のあるなしを問わず、「こころとからだを大切にする」性教育は、いまを生きる子どもたちにとって大切な《人権》です。知的障害のある子どもたちにとって、性被害から身を守り社会参加のためのマナーを獲得するために具体的でわかりやすい人形等の教材は不可欠です。性教育をとおしてこそ、障害があっても自分の命・体がかけがえのないものだと実感できるのです。


子宮を体験できる袋

子宮を体験できる袋

子どもは、その「体験袋」のなかには入り、羊水に見立てた暖かなクッションの上で、気持ちいい状態でお母さんのからだに守られている感触を味わいます。
そして、そこから産道に見立てたゴムなどで少しきつくしてあるところを、外で待っている友だちの「がんばれ」という声援を受けながら、明るい外に向かって這っていきます。「誕生」の瞬間、待っていた友だちや教員は、「がんばったね」「おめでとう」と声をかけるのです。こうして子どもは、産むためにお母さんもがんばり、生まれるために自分もがんばったこと、その誕生には多くの人がお祝いをしてくれたことなどを追体験することを通して、あらためて生まれてきたことのすばらしさを学んでいます。
調査委報告書では、この袋を「膣付き子宮内体験袋」などと呼んで、いかにも問題のある教材であるかのように呼んでいます。


どこの学校のどの教室にも、必ず、同性愛、性同一性障害等セクシュアル・マイノリティの子どもたちがいます。彼らはテレビや雑誌にあふれる間違ったイメージに囲まれて生活し、「自分はみんなとどこか違う」と思っても、友達はもちろん親にも先生にも相談できず《孤立》し苦しむことが多いのです。同性愛や性同一性障害等が「異常」ではなく人間の自然なあり方の一つであることをはっきり知らせる性教育の存在は死活問題です。


スージーとフレット

ペニスのついたタイツ 障害を持つ子の中には、おしっこをする時、ズボンをぜんぶ下げてお尻を出してしまう子がいます。街でそのような障害者を見かけることがあるのも事実です。

先生がこのタイツをはいてまずおしりを出しておしっこをするまねをして、みんなで「おかしいよね^」と言い合うことで具体的に目に見える形で指導をすることができます。次に、ペニスを社会の窓から出しておしっこをするところを見せてみんなで「こっちのほうがいいよね」と確認する・・・という具合です。

先生たちもお母さんも、障害児を持つ親にとっては、親なきあとひとりでおだやかに生きてくれることが共通の願いです。おしっこの仕方等の基礎的なエチケットがどうしても必要なのです。そのめには、具体的にわかりやすく教える、わかりやすく教えるためのには具体的な教材がとても重要なのです。


七生養護学校在校生・保護者の会の方が都教委に出した要望書

東京都教育委員会 教育長 横山洋吉様
(・・・前文略)
知的障害のある人達の自立にとっては様々なスキルが必要です。日々の学習や作業などによって培われる力は卒業後を見据えたものであり、やがて学校を卒業した時に役立つことを保護者は望んでいます。また、1人の人間として自然な振る舞いのできる大人になる事を望んでおります。そして、人を傷つけたり人に傷つけられたりすることのないことを願っております。しかし、それはとても困難な事です。残念なことに悲しい話もたくさん聞きました。世の中は善人や障害者に理解のある人ばかりではありません。養護学校の前から車で連れ去られた女の子の話、ケーキ1つで「やさしいおじさん」について行ってしまう女の子の話、痴漢に間違われ、家族と共に暮らす事のできなくなってしまった男の子の話、人前でしてはいけない事の判断がうまくできず、作業所や職場を首になってしまった人の話…。数え上げればきりがありません。また、軽い知的障害があり、人とのつながりの持ち方がわからず、避妊の知識もなく、次々と父親の違う子どもを産み、自分で養育することが困難で里子に出すという例もあり、そんな困難な子ども達の養育を引き受けていらっしゃる方もいらっしゃいます。こんな重い現実の前に親達の気持ちは焦りを覚え、立ち尽くすばかりでした。

そんな折、七生養護では7年ほど前から性教育に取り組み始めました。それまでにはこの問題に関して多くの悩みを抱えた親達は、仲間で語り合い、先輩の保護者や作業所の指導員さん、大学や専門家の先生などといった細々としたつてを頼り、自分たちでお金を出し合い勉強会を開いてきました。しかし母親達の努力には限界がありました。学校できちんと授業の中で取り組まれることになった時には、本当に良かったと思いました。他の養護学校と交流する中で、他校の保護者から羨ましがられることもあり、誇りにも思っておりました。
(・・・後略)
<全文はこちら>


リンク

東京都立七生養護学校

“人間と性”教育研究協議会/Seikyokyo


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