★金大フィルとワーグナー
2001/3/29更新


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ワーグナー
  曲目
75 定期 マイスタージンガー第1幕への前奏曲(初出)
79 サマー マイスタージンガー第1幕への前奏曲
81 サマー リエンツィ序曲
82 定期 ローエングリン 抜粋(合唱つき)
83 サマー マイスタージンガー第1幕への前奏曲
91 定期 マイスタージンガー第1幕への前奏曲
91 定期 トリスタンとイゾルデ 前奏曲と愛の死
92 定期 ローエングリン第1幕への前奏曲、エルザの入場
95 定期 タンホイザー序曲
97 定期 リエンツィ序曲
00 合演 マイスタージンガー第1幕への前奏曲
 


 ワーグナーほどわがままで、不遜で、あつかましい男はいない・・・という人がいる。彼の個人的な生涯は、借金の踏倒しと、他人の女房を寝取るの繰り返しだった。しまいには、ルードヴィッヒ王を騙して、大金をせしめ、自分の楽劇だけを演奏する劇場を作らせたという(バイロイト劇場)。

 30分ばかり居眠りをして、目を覚ましてみると、また同じ2人の主役の歌手が、1メートル移動したところで、まだ歌っていたというのを楽しいというのは、ドイツ語を完璧に理解できる日本人を除いては、マゾヒストの悦び以外の何物でもないだろう。(石井宏著、学研M文庫、「帝王から音楽マフィアまで」が面白い)
 バイロイト劇場の座席には、片側にしか出口への通路がないという。ワーグナーの音楽を中座することなど許されないからだそうだ。

 

 ワーグナーのオーケストラ作品を演奏するのは、また、別の話だ。

 金大フィルが最初にワーグナーをとりあげたのは、1975年第36回の定演、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の前奏曲だった。この演奏の録音は手元にない。レパートリーをブラームスにまで広げて3年後、レパートリの幅をさらに着実に広げていったようである。マイスターが最初に選ばれたのは、知名度や難易度からも順当なところだ。ワーグナーを演奏するための一つの条件は、金管楽器の力量の充実があるだろう。もっとも、金管の演奏がある程度様になれば、マイスターは比較的簡単にまとまるという手軽さがある。実際のところ、ワーグナーの演奏の弦楽器、木管楽器の難しさは大変なものだ。1979年の第4回サマコンに再度マイスターが再登場したのは自然の成り行きだ。その後、1983年、1991年、そして2000年の京大合演で再演している。音楽教室や芸交祭でも多く演奏しているように思われる。


 次に登場したのは「リエンツィ」序曲だ。1981年の第6回サマコンでの、山口氏の熱演だ(氏の指揮者としての初舞台)。最後の息がピッタリあったコードは大きな成果だ。金管楽器群の充実振りもさすがだ。1997年に金洪才氏との第57回定演で再演している。


 「ローエングリン」は1981年の第42回定演で堤俊作氏と演奏している。このときは、金大合唱団中心の混声合唱と2つのTpバンダ隊、オルガンパートを模した金管バンダ隊、さらにYAMA○○のかなり安っぽい電子オルガンを交えて、大スペクタクルを演じた。11年後、1992年には、ブルックナー7番の前座として、第1幕への前奏曲と「エルザの大聖堂への行進」を演奏している。このときは、合唱はなく、オケのみの演奏だった。

 特筆すべきは、1991年の第51回定演での、山下一史氏によるオールドイツ物プログラム(メインはブラ4)だ。
 前半に、マイスタージンガー前奏曲と、「トリスタンとイゾルデ」を演奏している。これが、なかなかの力演だ。ソプラノの大沼恵美子女史を迎えた「愛の死」は、声楽ソリストとの共演という、金大フィルにとって非常に貴重な体験となった。大沼氏のソプラノにはゾクゾクするものがある。


 最後に登場したワーグナーレパートリーは、1995年の「タンホイザー」序曲だ。80年代には、何度かサブメインとして選曲に上がっては消えていった難曲。オープニングの序曲としては、余りにも演奏者への負担が大きい曲だ。1回生の初舞台としては、大きなチャレンジだったろう。
 この時、岡田司氏による第55回定演のメインは「ブルックナー8番」だった。大曲路線の行き着く果てといったプログラムだ。(サイドストーリ




 ある時期、ワーグナーの映像作品(LD)をほとんど収集した時期があった。指輪のLDセットはバブル時代、7万円もした。今でも狭い部屋の中で偉そうに鎮座している。最近、10年ぶりに観てみたが、やはり正直言って苦痛であった。指輪のセットが1、000セット以上も売れる国は世界でも日本だけだという。実際に指輪を心から愛することの出来る筋金入りのマゾヒストが1、000人もいるとは驚きだが、他人の趣味をとやかく言うのは止めよう。やはりオペラは、イタリアオペラだ。

 ワーグナーで一番演奏したかったのは、「パルシファル」の前奏曲、そして、「神々の黄昏」の最終部、ワルハラの城が燃え落ちる部分だ。オーケストラだけのワーグナーなら、実にいけるのである。21世紀の金大フィルがいつかとりあげてくれるだろう。          

 

ワーグナー・コレクション


ニュルンベルクのマイスタージンガー前奏曲
1979/07/01 第4回サマーコンサートより
指揮:大杉和彦  コンサートマスター:山田荒太




リエンツィ序曲
1981/06/28 第6回サマーコンサートより
指揮:山口泰志  コンサートマスター:纐纈直樹





「ローエングリン」より 最終部分
1982/01/23 第42回定期演奏会より
指揮:堤俊作 コンサートマスター:纐纈直樹、金大合唱団他




★トリスタンとイゾルデより
前奏曲冒頭
「愛の死」ラスト

1991/01/19 第51回定期演奏会より
指揮:山下一史 ソプラノ:大沼美恵子 コンサートマスター:村田 淳



★「タンホイザー」序曲
1995/01/21 第55回定期演奏会より
指揮:岡田 司 コンサートマスター:斉藤丈晴




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