日本国サマータイム(夏時間)導入に疑問
 地球温暖化防止策のひとつとして、日本国政府でも様々な検討がなされているが、現状を正しく認識するところから始めなければ、誤った情報で議論しても無意味となる。

まるいち 世界70カ国以上で実施されていると、サマータイム導入賛成派の資料で用いられているデータを詳細に分析してみる。その70カ国の中には実施していない地域面積が多いオーストラリアや、アメリカ合衆国でもアリゾナ州、インディアナ州、ハワイ州、その他で実施されておらず、カナダでも Saskatchewan州では実施されていないのである。また、メキシコも実施したりされなかったりと、州や年によって変化している。

まるに 上記リンク:サマータイム(2.世界70ヶ国以上で実施されています)では、●夏時間(サマータイム)の実施国・非実施国(資料:'98 WORLD YEAR BOOK 世界年鑑)の誤りをそのまま転用している。オーストラリアのQLD州=クイーンズランド州 <州都:ブリスベン>やケアンズの地域が実施されていることになっているが、本当は、1989年10月~1992年3月まで実施されたのち廃止となっている。従って、正しく色分けするとオーストラリア全土の約3/4の面積で実施されていないことになる。また、西オーストラリア州では1974年に採用したものの、農民などに不便だという理由で翌年には廃止されている。賛成論者に不都合なこれらの情報は伏せられている。

 「みんなで考えよう 日本の夏時間制(北海道経済産業局)」のホームページ(上記・誤った世界地図掲載)は、私の意見記事が北海道新聞に掲載されて以降、削除された。
2003年7月2日・追記
 社会経済生産性本部・生活構造改革フォーラムの「サマータイムについて」(上記・誤った世界地図掲載)は、リンク変更に伴い削除された。
2008年8月16日追記
 同地図掲載の「資源エネルギー庁」のホームページ(多額の丸投げで問題となった)は、2006年削除された。
 最新の「WORLD YEAR BOOK 世界年鑑」では、私から出版社へ連絡し、訂正されている。

まるさん 日本時間は兵庫県明石市を通る東経135度を基準に決められていることは一般に広く知られているが、日本の東西の経度幅や南北の緯度幅は以外に知られていない。日本最東端・北海道根室市納沙布岬(北緯43度23分7秒,東経145度49分2秒)、日本最西端・沖縄県与那国島西崎(北緯24度26分55秒,東経122度56分1秒)、日本最北端・北海道稚内市宗谷岬(北緯45度31分22秒,東経141度56分12秒)、日本最南端・東京都小笠原諸島沖ノ鳥島(北緯20度24分51秒,東経136度6分4秒)、が陸地としての東西南北端である。以上のことから、東西に約23度の経度幅・南北に約25度の緯度幅があることがわかる。

日本国政府が主張する北方領土(歯舞,色丹,国後,択捉)を含めると、経度幅は約26度に拡大する。
まるよん 世界標準時は、イギリス連邦グリニッチを通過する経度0度線・地点と定められている。東に15度進む毎に1時間進むことは周知の事実だが、日本では約23度の経度幅があり、東西端で1時間32分の時差が既に生じていることが分かる。この23度の経度幅は、同一時刻運用で生活できるほぼ最大幅となっている。地球規模で見た場合、広い大陸などでは、同一国でありながらも経度幅が2時間以上あるため、地域による異なった標準時刻設定となっている。

現在ではグリニッチ標準時(GMT)に変わり、協定世界時(UTC)が地球の標準時として各国で用いられている。
まるご 日本と交流が深いお隣の国、韓国では、日本と同じ標準時刻が設定されている。イギリス連邦と交流の深いアイスランドでは、イギリスと同じ標準時刻が設定されている。アイスランドは夏場白夜のため、サマータイム導入の必要が無いと多くの媒体で記述されているが、既に基本標準時間を経度線時刻より1時間進めてイギリスに合わせているのである。

まるろく 日本の緯度幅約25度は、27,778kmに相当する。(緯度90度=1万km=過去のメートル基準)4月の北海道では、流氷があり雪が降る。一方4月の沖縄では20℃以上あり海開きとなる。同一国・同一時刻の中、南北で冬と夏が同居する状態なのだ。当然、日照時間も、既に南北で大きく異なるのである。

まるなな 本州以南の夏の電力需要は、大部分が冷房用電力である。生活を一時間ずらしても、冷房電力の減少は見込めない。経度幅23度・緯度幅25度の日本に於いてサマータイム導入を行えば省エネルギー効果が少ないばかりか、導入コストや弊害に伴うエネルギー消費増の方が上回る。4月5月・9月10月の日本各地の日の出・日没・日照時間や、夏場の気温等を詳細に調べれば容易に効果が無いことが判明する。サマータイム実施で効果を挙げている地域は、夏場の冷房需要が必要ない地域であり、賛成者のデータにも正しく反映してほしいものである。

こよみのページ
まるはち 日本に於いては、関東地方・関西地方などで平均通勤時間が1時間を越えている。サマータイムを有効利用している諸外国地域では、平均通勤時間20分以内となっている。余暇利用に振り向けられる時間が減少するばかりか、省エネルギー効果も殆ど発生しない。

 省エネルギー対策は、官公庁が率先して夏場に半袖シャツの勤務姿を実施し、スーツ姿に合わせた過度な冷房温度設定を止め、半袖に合わせた冷房温度設定とする。かつ、民間にも広く奨励し、冷房病の緩和、過度な冷房エネルギーの無駄遣いを周知すれば、相当な省エネ効果が期待できる。夏場の半袖勤務習慣が日本全土に広まれば、環境配慮の大きな第一歩となる。

 地球規模で見ても、国連加盟国191カ国+台湾などの非加盟地域のなか、本当に効果的にサマータイムを実施しているのは極僅かである。実施している国々は、人・物・金・情報が活発に行き交う隣接国との関係で不都合があるからと簡単に止める訳にも行かず、反対に実施した国や地域でも隣接域の影響が少ない場合、不都合の多さに廃止した地域が多数ある。

2011年3月23日追記
 蓮舫大臣が、電力不足に備えるため、サマータイム導入を検討しているとの、マスコミ報道を目にした。
24時間稼働している現代社会において、サマータイムを導入しても、消費電力の減少とならないことは勿論、サマータイム導入切り替え時の混乱に伴う弊害が顕著なため、ロシアでは、30年間続いたサマータイム切り替え(冬時間)を、この春で廃止している。単なる思いつきでのサマータイム導入論は、迷惑千万である。

 2003年5月8日      写真家 なわたよりのぶ
 2004年7月6日 まるはち記事一部差し替え 参照リンク:サマータイム問題を考える
2011年3月23日
  追記
 
             
 
       
           
 

           
           

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