北海道サマータイム(夏時間)導入に疑問
 昨今景気の起爆剤として、北海道サマータイム(夏時間)導入が、北海道経済産業局や札幌商工会議所等で検討・提案されています。日本国内でも終戦後GHQの指導により昭和23年(1948年)5月から昭和26年(1951年)4月まで実施され、国民の反対が多く廃止されました。導入賛成派の人々はメリットのみ強調して、さほどデメリットが存在しないかの様な提案をされていすので実際の問題点を挙げて見ました。

 札幌商工会議所によるサマータイム特区案では、4月第1日曜日~9月最終日曜日まで約6ヶ月間、北海道のみ時計を2時間進めるというものです。退社後の余暇利用で商店などの売上げ増や、札幌証券取引所が東京よりも早く開始されるメリット等を挙げています。
 問題点
まるいち 人間の体内時計は、本来約25時間の所を24時間にリセットして生活しています。夏時間が導入されても、一日24時間が増える訳ではなく、まして、4月の導入改変時には1日22時間、2時間少なくなります。導入日から毎日2時間の早起きを続けなければなりません。急に2時間も早く起きる習慣は身に付かず、目覚まし時計で強制的に起こされる日々が続きます。睡眠不足を補い、体内時計を正常に戻すのに、通常1週間~10日間以上必要となります。因みに、2時間もの時差を設けてサマータイムを実施している所は、世界中に一箇所もありません。乳牛搾乳など、動物の体内時計を変化させることは非常に困難を伴います。

まるに サマータイム導入について、時計の時刻変更設定をしなければなりません。旅行者と異なり、その地で暮らす生活者には、腕時計・壁掛け時計、携帯電話・一般電話機やFAX、パソコンから炊飯器やカーナビなど、一人10個以上ある時計内臓機器を有しています。街中の信号機や各種コンピューターから深夜電力積算メーターも時計を内蔵しています。個人から企業官庁に至るまで、その全てを、一度に時刻変更設定するのは大変です。特に夏時間に変わる際には、それでなくても一日の時間が少なくなる中で、多大な負担を強いられます。

まるさん サマータイムを導入している諸外国では、夏・冬一時間の時間差設定です。サハリン州の夏は、日本時間より2時間進んでいますが、冬時間も1時間進んでいます。ニュージーランドの夏は、日本時間より4時間進んで(UTC+13)世界で一番早くなっていますが、冬時間も3時間進んで(UTC+12)います。この件に関して以前、大前研一氏は著書やテレビ番組で時差を勘違いされて、サマータイム2時間設ければ世界で一番早い金融市場に繋がる旨の記述がありました。私から、出版社(K社)及び著者本人に誤りを指摘し、その部分の内容を変更された経緯もあります。また、同様な間違いを、札幌商工会議所のサイトでも記述されていました。私の海外生活通算約3年間の内、ニュージーランドで年2度のサマータイムの時刻変更も生活者として体験しました。私が当時調査したところ、約3%の人々は、サマータイム導入日の時間切り替えを忘れていました。学校や乗り物に遅刻して、自分を責めている人を見かけましたが、後悔しても少なくなった時間は取り戻せません。一時間の時差でさえこの様な状況なのに、二時間の時間差変更は体への負担が多く、甚だ無謀と思われます。特に年配者の方々には、時差変更は辛いと思います。


まるよん 日本国内で北海道のみ夏時間を導入した場合、北海道外の各地とのミスマッチが生じます。全国放送のテレビ番組は、遅い時間で放送せず、実質一日遅れで放送される可能性が高くなり、全国紙の新聞なども含めて情報入手が遅れます。また、本州との取引や企業の電話サービスを受ける場合など、必然的に相手方(本州時間)に合わせるために残業の発生も予想されます。都市銀行のATMを始め、ホストコンピューターが本州にある企業では、本州側で二時間早めてコンピュータを作動させるか、或いは、北海道内のサービス開始時刻を本州に合わせて遅らせることになります。プログラムの変更で問題を解決しようとすれば、未知の問題に直面し2000年問題の比ではありません。

まるご 日本各地から北海道に入る運輸交通機関・旅行者は戸惑い、混乱を引き起こします。時刻表は複雑になり、勘違いによる乗り遅れにとどまらず、最悪、事故の誘発も想定されます。特に睡眠障害を要因とする事故が国内外で発生していることも、見逃すことが出来ません。現に、北海道礼文島・M宿泊施設にて、宿独特の夏時間(トンネルを越えた西海岸は時計を一時間進める)を設定、宿泊者に対して実施していますが、外界との連絡などでは弊害が生じています。

まるろく 日照時間が長くなる利点は5月下旬から7月下旬頃迄です。4月第1日曜日(2003年4月6日)札幌・日の出5時9分・日没18時6分。9月最終日曜日(2003年9月28日)札幌・日の出5時27分・日没17時23分です。2時間進めると、現在7時に家を出て学校や職場に向かう人々は、日の出前の暗い中を通勤・通学することになります。すなわち、4月9月には暗い内に起きて活動するため、省エネルギー効果にも逆行することを意味します。更に、北海道の電力需要ピークは、本州のような夏場ではなく、冬の暖房時に電力消費ピークを迎えます。
まるなな 公務員などの土日休日定時勤務者は、サマータイム切り替え時の負担をある程度吸収可能と思われますが、土曜日・日曜日・連続出勤のサービス業従事者や自然相手の農家には、負担消化は困難となります。

まるはち これらの問題点を上回るだけのメリットがあるのか、甚だ疑問に思われます。喜ぶのは、サービス残業を強いる経営者だけのように思えますが、皆さんは如何お考えでしょう。 以上

 2003年5月8日 写真家 縄田頼信

             
 
     
         
 

 
           
           

Copyright ⒸYorinobu Nawata All rights reserved. 無断転載・転用厳禁


【広告】