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和平復興関連 No.79


2005-05-06
星が消えた 
タミルネットのシワラム氏、暗殺される


 先週木曜日(4月29日)、ディリ‐ミラーのコラムニストでありタミルネットの主任編集者であるダルマラトナム・シワラム氏(46)がコロンボ市内で誘拐され、翌朝、タラガム運河に架かる日本スリランカ友好橋の近くに遺体となって発見された。身体には弾痕があった。使用された武器は口径9ミリの銃でスリランカでは暗殺に使われているものだという。
 暗殺に至る状況はヒンドゥタイムスの4月29日(14:52)の報道が詳しい。また、同日のランカモスリム・コム(14:51)はタミル新聞を引用して更に詳しい状況を報道している。
 暗殺者は不明だ。LTTEと敵対関係にあるカルナ派の反抗だとする見方がある。LTTEとカルナ派は双方の通信員を互いに殺害している。しかし、カルナ派は犯行声明を出していない。タミル議員と繋がりのあるスリランカ政府軍の犯行という見方がLTTE内部にある。もちろん政府軍は否定している。

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補足
 スリランカの情報は世界中から容易に集められる。ネットと言う手段を使ってのことであり、情報とはネットの中だけの情報だ。
 情報の内容と質は各ウェブ媒体によって異なる。客観的な事実の詳細な報道という点で、ダルマラトナム・シワラムの編集するタミル・ネットは他のスリランカ関連報道を圧倒していた。LTTE内部の報道ばかりではなく、スリランカ政府と、また、日本政府が取らなければならなかった、そして怠った対タミル戦略に関しても、その報道は、ときにアイロニカルではあっても几帳面に内容が書きこまれていた。初期のタミルネットに日本人が加わっていたことも事情精通に組していたかもしれない。
 他の報道媒体がシワラム氏の暗殺報道に終始している29日夜(21:11)、タミルネットは冷静に、また、沈着にマーク・ホイッテカー南カリフォルニア大学人類学助教授のコラムを載せている。それは『あるジャーナリストの生涯』という題の話だった。
 シワラム氏と生きる哲学を共有し友となったホイッテカー助教授がシワラム氏の軌跡を詳細に追っている。
 この『かしゃぐら通信』はシンハラ人のスリランカを、特にその言語から解体し総合し、また、日本人の言語と照合することでそのあり方を観察しているが、シンハラの情報を正確に得るためにはタミルネット情報が欠くことのできない媒体だった。その媒体を星、ターラカと呼ばれる1人のジャーナリストが生命をかけて守っていた。
 彼の意志は繋がれるだろう。これからもターラカでありつづけて欲しい。


 「ダルマラトナム・シワラムはありふれた三文文士ではない」

 「ダルマラトナム・シワラムはありふれた三文文士ではない」と言う書き出しでアジアン・トリビューンは戦争に反対したがためにテロルの犠牲となったタミル知識人たちを紹介しテロルを糾弾している。シワラムはアイランド紙で論説を張り、PLOTE(タミル・イーラム人民解放機構)でLTTEを糾弾し、LTTEに加わって後はバーラシンガム以上の戦略家と目されていた。ターラキという彼のペンネームはアイランド時代に生まれ、タミル語のターラカ(星)を誤植したものだったが、その論評の鋭さはすぐに多くの共感者を得た。彼は輝く星であった。
 プラバカラム個人のの独善的な暴力体制を浸透させるLTTEにあって、公然と「穏やかな論客」でありえたシワラムが自らの民族の中にあってテロルの犠牲となったことは、この国の戦争の行方に更に暗い影と混迷を投げかけたとトリビューンは語っている。
 
 日本政府はシワラム氏を日本に招待する計画を持っていたが、この事件で穏健なLTTE指導者との接触は不可能となった。


20億ドルの使途、今だ決まらず

 BBCは5月2日の報道で、20億ドルにおよぶ津波復興資金がスリランカ政府とLTTE側の足並みがそろわないため、その使途さえ決まらない状態にあると報じている。津波被害はスリランカ東部と北部で最も烈しく、復興にはこれらの地域が外せないにもかかわらず、今現在の状況として、応急のテント生活での生活にこれらの地域では支障が多く生じているという。
 津波災害が起こる以前から、時ならぬ乾季の豪雨にスリランカ東部は洪水の被害を受けていた。そうした事態が放置され続けている。タミル居住地区での政府に対する不満がさらに高まることは避けられない。


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