あらかるとの本/トモカの食卓写真からspring.vol12.1994/
写真説明と
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 東京ジャーナルが選んだ
トモカの
グルメ・キーワード

緑豆の香ばしい香りのシチュウー
ジャック・フルーツのカレー
唐辛子と椰子と子エビの練り物
完璧に霊感をもたらすサンバル

キュウリと薬草の冷たい和え物

油でカリカリに揚げたナスのカレー
ロイヤル・ピリスナー
紅茶はブランデーの香り
椰子砂糖から作ったファッジ
アラック
 
 
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『東京ジャーナル』1992.Feb ”TOMOCA”から

かしゃぐら通信
南の島のカレーライス

 『東京ジャーナル』スリランカ料理トモカはこう紹介されていた-----

 私の友人モハンはマレーシアの都会に住む大食家。たいそうなグルメで、だから私は彼をモティに連れて行ったことがある。彼はマハラジャやタージ・マハルも好きなのだけれど、このごろ、「日本のインド料理は何でもかんでもムガール料理の線を追っかけているばかりで単調だね」と言い始めた。「タンドーリもナンも、みんな北インドのカレーばかりじゃないか」と、そう言うのだ。
 言われてみると、まったくそのとおり,と私も気付いた。それで、決めたのだ。今度、彼がトウキョウへやって来たらトモカに連れて行ってやる、と。

  トモカは別に気難しい料理店じゃない。インド料理店より気安いと言える。まぁ、気遣うことといったら、お腹を空かせておくこと。それが肝心なだけだ。

  店に入って席につく。魚かえびか鶏肉か羊肉か牛肉か、それらの中から、まず、ひとつを選ぶ。メニューの選択はそれだけ。懐には「4200円ぴったり!」を準備しておけばいい。
  しばらく待つと、テーブルにたくさんの器が運ばれてきて食事開始の合図になる。緑豆の香ばしい香りのシチュウ唐辛子と椰子と、そして多分は醗酵した小エビをそこに加えた練り物。穏やかなジャック・フルーツのカレー。 小さいジャコとタマネギのfielyな、完璧に霊感をもたらしてくれるサンバル。細かく刻んだきゅうりと薬草の冷たい和え物油でカリカリに揚げたナスのカレー。
  先程選んだ肉や魚の料理を米の粉を使って焼いたホット・ケーキのようなパン(ホッパー)に浸けて食べる。それが終わったら山盛りのご飯で料理の数々を食べる。ライオン・ラガー・ビールを喉に流し込む。それはイギリスの味を思い出させてくれる。そして、450年の間、ヨーロッパのルールの下であの島の人々は暮らしていたんだと思い起こさせてくれるロイヤル・ピリスナー。あの島のビールの独特の味がある。

  料理が終われば熱いミルクが入ったビーカーと、ポットに淹れた香りのいい紅茶が運ばれてくる。トモカの不思議な世界に誘われるのはこのときだ。「紅茶はブランデーの香りがする」と茶を愛好する人々は噂するが、トモカの紅茶が運ばれてくるとその言葉の意味がわかる。
  トモカで過ごす時の幸福。あなたも、きっとセレンディブの島の上を流れる遠い雲の上に浮かんで、自分の心がどこか高いところの際に浮かんでいると感じるはず。
 
  トモカの魅力はなんと言っても香りの新鮮さにある。コロンボでジェットを乗り換える時に、スリランカで一泊することの多い私も、それに私の友人で、元裁判官のスリランカ人もお互い、この結論に異論はない。それと、一体全体、日本のどこで椰子砂糖から作ったファッジをトモかのように食べさせてくれる処があるか、ということについても。

  あなたはスリランカのアラックを試したことがあるだろうか。(もし、アラックは接着剤のようなにおいがする酒と考えていたのなら、ぜひスリランカのアラックを試すべきだ)

  バティック(ろうけつ染)のベッド・カバーを壁飾りにして、鉢植えの大きな椰子を置いて、そこにインド亜大陸から流れてくる音楽を乗せる。60年代をドロップ・アウトして、今この記事を書いている”逃亡者”は、トモカにあるそれらすべてを「正しい」と直感してしまう。何もいらない。ただ、香りが漂っていればいい。それだけで、「世界」を感じる。

  トモカは、あるときは開店と同時に店がいっぱいになってしまう。また、あるときはがらんとしている。テーブルはたった四つだけ。東京の飲食店が集まる街角。細い通りにあるビルの汚い階段を上っていちばん上。 正確に判断すれば、トモカはモティが手にしたビッグ・サクセスは繰り返さないに違いない。
  いや、「私たち」が求めるものが、実は、そこにある。私と私の知人たち。つまり、トモカのロウ・キーなファンは、「トモカよ、どうか今のままでいてくれ。モティ張りのサクセスは止めてくれ……」、とささやき合っている。    (『東京ジャーナル』1992年2月号の「TOMOCA」より/ 訳・TOMIO。
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