第二次大戦以降、飛躍的進化を遂げた戦闘機は、
ついに人間の生理的限界を超えた高性能を獲得するに至った。

米空軍のF-15、F-16戦闘機や海軍/海兵隊が使用するF/A-18戦闘攻撃機など、
高速・高機動性能に優れた戦闘機の配備が開始されると同時に
戦闘機動時に発生するG(遠心力)によって、操縦者の血液が下半身に集中し
脳への酸素供給が不足することから起こる“ブラックアウト”や
反対に脳への血液供給過剰から発生する“レッドアウト”等の
“Gロック”と呼ばれる操縦者の意識障害が大きな問題となった。

こうした事態に対処するため、米軍が開発・採用したのが
“コンバットエッジ”と呼ばれる戦闘機パイロット用個人装備システムである。
コンバットエッジ・システムは、後頭部から側頭部を圧迫するためのエアバッグを内蔵したヘルメット、
上半身を加圧する耐Gベスト、下半身圧迫用の耐Gパンツ、
そして各装備にエアを供給する酸素レギュレーターで構成され、
高G機動時には各装備が体の各所を適宜圧迫することで、体内の血液量を一定に保つようになっている。

この装備は90年代に配備が開始され、空軍(州空軍を含む)のF-15及びF-16パイロットと
海軍/海兵隊のF/A-18パイロットに支給される事になっている。

というワケで、WORKSHOP現用米空軍パイロット徹底比較にて検証した
ドラゴン、BBI、HOT TOYSのパイロット・フィギュアを組み合わせて、
コンバットエッジ装備のパイロットを製作してみました。

改造箇所を極力減らし、3社のパイロットフィギュアの良い所取りで製作した米空軍コンバットエッジ装備のパイロット。
ある意味非常に贅沢なカスタムですが、残ったパーツやフィギュアは、各社から発売中のフライトジャケットや
ヘルメット等の別売りパーツを組み合わせてやれば、決して無駄にはならない(と、思います(^^;)。
フィギュアはドラゴンの“F-117 PILOT/Mitch”を使用。
このヘッドは数あるドラゴン社のフィギュアの中でもトップクラスの出来だと思います。
今回は3社の装備を組み合わせて使用する関係で、ボディサイズが3社の中間になる
ドラゴン社のフィギュアが最も都合がよい、と言うのもこのフィギュアをチョイスした理由。
なお、ここで紹介している組み合わせは、あくまでも私個人の好みを反映したもので
“コレが正しい”等と言うつもりは全くありません。
「コレが自分的ベスト」と思われる組み合わせを模索していただく上での“参考例”としてご覧下さい。

[使用パーツ/メーカー一覧]

1:HGU-55/P(CE) HELMET
ヘルメットはフォルムが正確なドラゴン製(ノン・コンバットエッジのHGU-55/P)をディテールアップして使用

2:MBU-20/P OXYGEN MASK
HOT TOYS製。ドラゴンからもHGU-55/P(CE)とMBU-20/Pマスクが発売されているので、そちらを使用しても良い

3:CSU-17/P ANTI-G VEST
HOT TOYS製。コンバットエッジ用耐Gベストと酸素レギュレーターは現在のところHOT TOYS以外の選択肢は存在しないのだが、非常に良くできているので全く問題なく使用できる

4:CRU-94/P OXYGEN REGULATOR
HOT TOYS製。ハーネスのブラケットに装着できるように、裏面のフックを針金で作り替えた(どうやら製品の個体差で、装着できるものと出来ない物があるようだ)

5:LPU-9/P LIFE PRESERVER
ディテールの良好なHOT TOYS製を使用

6:CWU-27/P COVERALL
フォルムや布の質感等、現時点ではBBI製がベストチョイス。インシグニア類はドラゴン“F-15E PILOT/Glenn”の印刷と刺繍を併用したパッチに交換してある

7:SRU-21/P SURVIVAL VEST
ドラゴンのF-15Eパイロット用を使用。F-117パイロット用でも、好みによってはさらに小振りなBBI製を選択しても良いだろう

8:PCU-15/P PARACHUTE HAENESS
HOT TOYS製を使用。BBI社のコクピットに座らせるため、ハーネス両肩のシートベルト接続用バックルのみBBIに交換した

9:CSU-13B/P ANTI-G SUIT
ディテールと材質感に優れたドラゴン製を選択。フォルムを修正して使用

10:FWU-3/P FLYER'S BOOTS
HOT TOYSを使用。ドラゴンのパイロットにはジャングルブーツが付属する(実際着用例は多い)が、やはりレギュレーション通りに黒革ブーツを履かせたい。もちろんBBIのブーツを選んでも何ら問題はない


[CUSTOMIZE POINT]

今回の改修点はヘルメットとGパンツの2箇所のみ。
いずれも“ドラゴン製パイロット・フィギュアのウイークポイント”とも言える部分なので、
作例のような“3社混合カスタム”を行わない場合にも十分に参考にしていただけると思う。
なおヘルメットのディテールアップは私=KAZが担当、Gパンツのリフォームはまつい氏の手によるものである。
HGU-55/P(CE) HELMET
remodeled by KAZ

ヘルメット本体はドラゴン製HGU-55/Pを再塗装して使用。
内装を取り外し、シェル縁部分に5ミリ径のスポンジラバーを接着(AFH-5ヘルメット改造法を参照)、
その上からグレーの合皮を被せてある。これでヘッドとヘルメットの縁が密着するようになる。
チンストラップ(あご紐)は平ゴム製で少々実感に欠けるため、ナイロンリボンと革で作り直し。
省略されているネイプストラップ(後頭部のベルト)も同様に追加製作した。
バイザーのストラップも平ゴム製の非常にあっさりした作りなので、自作のものと交換してある。
こういったストラップ類の改造は実用上必須とは言えないのだが、精密感を高めるためにお勧めしたい。
酸素マスクはHOT TOYS製をそのまま使用。マスクに合わせてバイザー下端を少々削って形状を変更している。
マスクのバヨネット(ヘルメットとの接続金具)はドラゴン社のMBU-12のものを流用しているが
これはMBU-20/P発売以前に製作したため。



CSU-13B/P ANTI-G SUIT
reformed by Jun MATUI

調節用のベルクロタブを唯一再現しているドラゴン製のG-パンツなのだが、
実際にベルクロが使われているのにかかわらず、なぜか全く機能しない配置になってしまっている。
そこで、タブを一旦外し右図の様に取り付け位置を変更した。ずらした分だけ絞り込むことが出来るようになるわけだ。
縫い目を解くには、専用の『リッパー』という道具を使うと便利。
縫い目が交差している部分では、解く必要のない糸まで切ってしまわないように注意しよう。
タブの移動が仕上がったところで試しに着せてみたが、シルエットを細くする効果が足りない様なので、
さらにファスナーの横を図の様に5ミリ程詰めることした。この二点の改造で全体が引き締まり、随分印象が良くなったと思う。
ファスナーを縫いつける時は、ファスナーの端の金具の厚みでミシンの押さえがねが傾いてしまい、非常に縫いにくい。
こういった場合、普通は『2ミリ押さえ』という巾の狭い押さえがねをつかうのだが、
1/6サイズではそれでもぶつかることがある。そこで、ファスナーの金具と同じくらいの厚みのスペーサーを使って、
押さえがねが水平を保つ様にする。ゆっくりと丁寧に進めればなんとか縫うことが出来るはずだ。
強引なやり方なのできれいに縫うのはなかなか難しいが、この方法を使えば複雑なタクティカルベスト等も縫えるようになるはずだ。

A:ディテールにぶつかるギリギリまで移動
B:タブに移動する余地がない場合は本体側のベルクロを移動する
C:一旦ファスナーを外し、この分を折り込んで縫い直す
D:ここはスキマがないので端を折ってタブを小さくする

スペーサーとしては、たとえばアクリルの定規が手軽で使いやすいだろう。もちろん条件を満たせばどんなものを使ってもOKだ
右が改修前、左が改修後のGパンツ。ドラゴンのパイロット・フィギュアは
ここさえ補正すればシルエットが格段に向上するのだ

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