米陸軍航空隊の女性パイロット“WASP”です…
と言ってもピンと来る方は少ないと思いますが、一言で言ってしまえば
“第二次大戦中、パイロットの不足を補うため陸軍航空隊に雇用され
輸送等の支援任務に就いた女性パイロット”のことです。
(一応こちらに解説ページを用意しましたので、興味のある方はご一読下さい)

今回、製作のきっかけになったのは表紙写真に惹かれて購入した
“WOMEN PILOT OF WORLD WAR II”という洋書でした。
ペーパーバックで値段も安く、資料としては大した期待もしていなかったのですが
かなり不鮮明ながらも30ページほどに渡って当時のスナップ写真が掲載されていました。

宿舎で身だしなみを整える訓練生、食堂での食事風景、
宿舎の外にイスを並べ水着で日光浴をする訓練生たち…
いずれも“軍隊”という言葉から受けるイメージとはかけ離れた、
実に活き活きとした女性たちが写されていました。

それまではWASPと言う名称と、それが女性パイロットを示す言葉だという
漠然とした知識しか持っていなかったのですが、この本を見て俄然興味が沸いてきました。
関連書籍を探したり、HPを検索して画像を集めたり…
久々に燃えて(<萌えて…ではない(^^;)製作したのがこの作例です。

特にHPは検索してみて驚いたのですが、膨大な数がリストアップされます。
どうやら成立から解散に至るまでのドラマチックな経緯や
戦後、退役軍人として認められるまでの複雑ないきさつもあって
支援や研究目的のサイトが多数存在しているようなのです。
日本では全くマイナーな存在ですが、本国では知っていて当たり前、なのかもしれません。

とにかく、歴史的考察関係の資料は膨大な量が収拾可能なのですが
問題はフィギュア製作に役立つような“装備品”に関する記述がほとんどないこと、でした。
サービス・ユニフォーム(制服)に関しては米空軍のアーカイブから、着用規定マニュアルが入手できましたが
それ以外は当時のスナップ写真や報道用の写真から判断するしかありませんでした。
ですので、ココで掲載しているフィギュアの装備に関しては
かなりの部分を想像と推測で補っていることをお断りしておきます。
たとえばフライトヘルメットやパラシュートの形式等に関しては
“多分コレであろう”あるいは“コレも使っていたであろう”と言った感じ…(^^;
まあ“大間違い”はやらかしていない、とは思いますが…
一応、そういうこともあり得る、と言うことでご了承いただければ、と思います。

前置きが長くなってしまいましたが、何はともあれご覧下さいませ


WASP TRAINEE

 欧州と太平洋、2つの戦線に戦力を展開する米陸軍航空隊では、
パイロットの不足が大きな問題となりつつあった。
この事態に対処するため、男性パイロットを非戦闘任務から解放することを目的に
女性パイロットの採用が決定された。
選抜された候補者はテキサス州の訓練基地に集められ、軍用機の操縦訓練が開始された。
訓練生の服装は白いシャツにカーキのトラウザースという極シンプルな物、
他に“ズートスーツ”と呼ばれた紺色の作業ツナギが支給されたが
着心地が悪く、本来男性用のためサイズも合わず評判が悪かった。
いずれの場合もネームテープ以外の徽章類は取り付けられていない。

白いシャツはボークスのドール用ブラウスに少々手を加えた物。
スラックスはジェニーのボーイフレンド用。靴はケン(バービーのボーイフレンド)用を塗装して使用。
ギャリソンキャップはドラゴン“フライングタイガー”に付属の物を染め直してある。
フィギュアは植毛(カツラ)版“スベトラーナ”。子犬はバービーの警官ユニフォームセットのオマケ。

Figure/Dragon/Svetlana
Shirt/Volks/La PERSONARE Collection
Slacks/TAKARA/Jenny
Shoes/Matel/Barbi(ken)

SANTIAGO BLUE

訓練を完了したパイロットには“サンティアゴ・ブルー”と呼ばれる
紺色のサービス・ユニフォームが支給された。
ユニフォームはジャケットと同色のスカート、ベレー帽からなり、
正装時には白の手袋、ストッキング、黒革靴、小型のショルダーバックとともに着用された。
他に同色のアイクジャケットタイプの短上着やスラックスも
サービス・ユニフォームと組み合わせて着用されされている。

ユニフォームはパラドックス・インターナショナルから発売されていたVICKY ANGEL
本来ハスブロ“GIジェーン”用のユニフォームセットだがCGにも問題なく着用できる。
ユニフォームには上襟のWASPバッジ(実物は金属製)と左肩のAAFパッチを追加した他、
着用マニュアルの記述に合わせてネクタイを黒に変更、
ショルダーバッグはバービーのものに若干手を加えて使用している。
パイロット資格を示す左胸のウイングマークは、1943年第1期から第7期までの卒業者には
クラスナンバーを刻印したシールドに翼をあしらった物が使用されたが、
以降はダイヤモンドに翼の意匠に変更された。
いずれも男性用のウィングマークより一回り小型で、どうやら男性パイロットの家族や恋人への
“お土産”用として販売されていたPX品が原型になっているようだ。

Figure/BBI(TAKARA)/CY Girl JET
WASP Service Uniform/PALADOX INTERNATIONAL/VICKY ANGEL

WASPは当時“ベレー”を採用していた唯一の米軍組織だった。
ベレーは21stの樹脂製のものに、着色したコットンペーパー(不繊布風テクスチャーの紙)を貼って製作。
帽章は実際には半分くらいのサイズの小型の物が“正式”だが、
男性の制帽用帽章を取り付けている写真もある。

CGベースのカスタムで最大の問題はフィギュアに足首が無いことだと思う。
他メーカーのフィギュアから足首を移植する手もあるが、
今回はCGの足首パーツ(ブーツのインナー)をそのまま利用して、専用ブーツを自作することにした。
パーツに薄手の革を貼り付けただけの単純な構造なので、見た目ほど難しい作業ではない。
靴ひも等のディテールは、今回のようにブーツの上部がズボンの裾に隠れてしまう場合なら、
省略してしまっても、さほど気にならないだろう。

おそらく私物と思われるユニフォームと同色のギャリソンキャップ(略帽)を着用したWASP。
キャップの前あわせが男性用と逆になっていることに注意。
ギャリソンキャップは“フライングタイガース”制作時に興した型紙を元に綿ブロード布で製作、
縁の銀モールは、0.3ミリの針金に銀紙を貼り付けたもの。
実物のモールの色が不明のため、当たり障りのない色、と言うことで“銀”にしてある。
後期型のウイングマークはドラゴンP-40パイロットのものをベースにして製作した。

Figure/BBI(TAKARA)/CY Girl JET
WASP Service Uniform/PARADOX INTERNATIONAL/VICKY ANGEL

CGの髪型のままでは“第二次大戦中”の雰囲気は出せないと判断、
MONIQUE社のドール用ウィッグで髪型を変更することにした。
ウイッグの使い方はいたって簡単で、植毛されているドールヘアを全て抜き、
(ハサミで根本から切り取るだけでも可)被せるだけ。
MONIQUE社の製品は日本国内に正規取扱店が無いようだが、同社のHPで直接オーダーできる。
なお、CGに使用する場合、ウイッグのサイズは4インチが適応。

こちらはVICKY ANGELに付属のブーツに硬質発泡ウレタンを充填し、
CGの足首軸を差し込むための穴を開けてやることで足首問題に対処。
他社のフィギュアに履かせることは出来なくなってしまうが、
何といっても作業が非常に簡単なのがメリット。

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