鳳凰三山縦走 (2/2)

10月14日 曇り時々晴れ

このページは、縦走第2日前半(夜叉神峠 - 薬師岳 - 観音岳)からの続きです。

12:59 観音岳発(2810m)

地蔵岳
紅葉の地蔵岳(13:13)
観音からの下りも花崗岩のきれいななかなかいい道だ。ここにもウラシマツツジの岩があり、甲斐駒がバックで絵になる眺めだ。また、地蔵岳の山肌の紅葉が美しかった。

13:19 鳳凰小屋への分岐(2675m)

分岐
砂場のような分岐(13:17)
紅葉
分岐近くの紅葉(13:32)
分岐は白ザレで、まるで砂丘とか砂浜のようだ。それから小ピークに入ると少し林っぽくなり、紅葉が見られた。樹間から見える白砂は、林のコントラストのためか、まるで雪のようだった。
それから赤抜沢の頭への登りにかかる。ここは前回暑さで苦しめられたところ。そのトラウマか、足がなかなか前に出ない。

14:08 赤抜沢の頭(2720m)

黄葉
見回すとカンバの黄葉が美しい(13:41)
地蔵
絵になる地蔵岳(14:09)
左手に、花崗岩に張り付くきれいなカンバの黄葉を眺めながらじわじわと登った。
登りきったら結構へとへとだった。それから3分で赤抜沢の頭に着いた。オベリスクは姿はいいが、曇天になってしまったのは残念。
ここは通過して、賽の河原で地蔵を見上げながら休むことにする。

14:16 賽の河原着(2675m)

北ア
甲斐駒(左)の奥のかなたに北アルプス(14:16)
賽の河原
なかなかの広がり感を見せる賽の河原(14:23)
かなりえぐれた道を下りて賽の河原に着いた。賽の河原じたいは広々とした花崗岩の砂地だ。たくさんの地蔵石仏が、信仰の山であることを偲ばせる。
過去2回はすんごい人出だったが、この日はオベリスクの肩を女性がひとり登っているだけで、他に誰もいなかった。静かなのはよかったが、やはり曇天ではオベリスクも映えない。北アルプスまで見えるほど視界はいいのに、実にもったいないことだ。

14:33 賽の河原発(2670m)

道
紅葉のザクザク道を下る(14:44)
カンバ
岩にへばりついたカンバ(14:48)
オベリスクはどうせてっぺんまで登れないのだからと、肩にも登らずに鳳凰小屋へ下ることにした。
下り始めは足がもぐるほどの白砂のザレザレ道で、富士の須走りのようにザクザクと下りていく。すぐに、登ってくる人とすれ違った。登りはこの蟻地獄で大変そうだ。みんな空荷のところを見ると、鳳凰小屋からのピストンのようだ。この周囲は、紅葉がこれまでの道中で一番きれいだった。

15:09 鳳凰小屋着(2360m)

紅葉
紅葉を愛でながら下る(15:02)
階段
この階段を過ぎれば鳳凰小屋は間もなくだ(15:04)
15分も下ると須走りは終わり、樹林帯へと突入する。空荷で登ってくる人がやたらと多い。ひょ、ひょっとして小屋(テント)は混んでいるのか? 桟道やら階段やらが出現するようになり、ほどなく鳳凰小屋に着いた。写真を撮りながらのゆっくりモードだったが、40分かからなかった。
この日の最高高度は2815m、最低高度は1755m、積算上昇は1310m、積算下降は725mだった。

鳳凰小屋にて

大混雑を恐れていた鳳凰小屋だったが、人は少なく、テントも制限なしで自由に張れてホッとした。最終的なテント数は10張りだった。やはりここは平日に来るべきなのだ。
テントを張ってからしばらくまったりした。小屋の周りは紅葉が最高潮だった。テントにいると時々何かが当たり「ぱさっ」と音がしてどきっとするが、それは耐えきれなくなって落ちてきたナナカマドの紅い葉っぱだった。
夕食は、落ち着いたよい時間だった。鳳凰小屋は今年から山梨ワインを置いているとのことで、買って飲もうと思っていたが(そのために甲府駅で鶏モツ煮まで買ったのだ)、結構疲れていることもあってやはり止めることにした。
曇っていて星も見えないので、20時には眠りについた。寝るときは、足の保温対策としてズボンのうえにカッパを穿いた。夏前に新調したカッパだが、枕以外の用途で初めて使った。

10月15日 晴れ

紅葉
朝陽を浴びる鳳凰小屋の紅葉(06:12)
7時出発を目指して4時半に起床。空は晴れていた。プロトレックを外に出しておいたら3.9℃になった。それでも覚悟したほど寒くなくて拍子抜けした。結露は軽くて、テントのグランドシート下もさらさらの花崗岩のためかあまり汚れなかった。
エスプレッソリゾットの朝食をとり、テントを撤収していると、陽が差してきてテント場の紅葉が輝いた。紅葉のことを考えると、下りは滝があって紅葉のきれいそうなドンドコ沢を選択すべきなのだろうが、しかしそこは7年前に我々を苦しめた道である。もーあの道は絶対イヤ、ということで御座石へ向かう計画に揺らぎはない。それでも、コースタイムは3時間半、下りるだけだが標高差は一気の1300mだ。

6:47 鳳凰小屋発(2355m)

富士山
富士山絶景ポイントの眺め(06:56)
道
御座石への道は歩きやすい(07:07)
小屋から10分ほど歩くと東側が開けたところがあって、富士山が見える。ここにはご来光を眺めにくる人が多いようだ。この日は薄雲がかかっていたが、それでも美しさは変わらない。その下の谷はきれいに紅葉していた。
大した段差のない、歩きやすい道だ。風の音すらない静かな朝の原生林の歩きは、素晴らしくいい気分だった。こういう山歩きがしたかったんだ、と思った。ときどき樹間から、富士山や地蔵岳が見えた。1時間も歩くと甲斐駒や八ツも見えてきた。

8:17 燕頭つばくらあたま山着(2080m)

地蔵
地蔵岳(07:42)
道
この崩壊地は桟道も崩れかけていた(08:00)
崩壊地を過ぎ、甲斐駒の姿がきれいになり、笹の茂った明るい林を行くとようやく燕頭山に着く。ザックを下ろし、ベンチで一休み。見上げると、黄葉しかけたカンバと青空のコントラストがきれいだった。

8:31 燕頭山発(2080m)

八ヶ岳
下り始めてすぐの八ヶ岳(08:35)
ここまで緩やかだった道は、唐突に急坂に変わる。それでもこの道は歩きやすい。確かに斜面全体としては急なのだが、道じたいは上手くジグザグが切れていて、どうやって下りたらいいのか途方に暮れてしまうようなキツい段差はない。スリップの恐怖感もほとんどなかった。
樹林の中の谷では、ルリビタキなどの鳥が飛び交っていた。何人かの人とすれ違った程度で、とても静かだった。

9:56 西の平(1310m)

黄葉
木々はようやく色づき始めたばかり(09:51)
道標
西の平の道標(09:57)
下りきった鞍部が西の平だ。この標高では紅葉はまだ始まったばかりで、ほとんどの木々の葉っぱは青々としていた。下ろせなかったザックを下ろして、休憩をとった。ここまでくればもうあと一息だ。
・・・と思ったのが間違いだった。

10:44 御座石鉱泉着(1080m)

少し緩く登ったあと、平らな道を行く。林間の気持ちいい道だ。崩壊地が工事中で、崖に近寄らないようにロープで制限されていた。
そしてこの崩壊地のキワからの下りが物凄かった。結構急な坂で、しかも固い地盤に砂がうっすら堆積している感じ。とにかくまあよく滑る。10分もしないうちに幾分なだらかになるが、そのわずか数分間に自分は2回、相棒は1回スリップして尻もちをついた。西の平で少し気を抜いた分、余計に辛く感じた。
ただ辛いことばかりではなくて、ヤマガラなどの小鳥が多く、自分にとって初見のゴジュウカラを見ることができたのは嬉しかった。そうして着いた御座石鉱泉登山口は、標高が低いせいかとても暑かった。登山口近くにはトリカブトが咲いていた。
この日の最高高度は2355m、最低高度は1080m、積算登高は15m、積算下降は1285mだった。

下山

御座石
御座石鉱泉:左上の要塞のような所が工事中の崩壊斜面(12:05)
風呂が狭くて料金が高い(高いのは風呂だけでなく、缶コーヒーも250円もした)御座石鉱泉で一風呂浴びてから、バスで韮崎に出た。バスの始発は青木鉱泉だが、乗客はひとりだけで、それは前日に地蔵の肩で会った女性だった。彼女は夜叉神にもいた人なので(3張りだけだったテントのうちのひとつだ)、やはり2泊での縦走だったようだ。
バスは最初、もんのすごいガタガタ道を行くが、里に出てからは眺めもよくなって道も快適になった。下山中に、もうこれで甲斐駒は最後だろうとか、ここで富士山とはお別れかも、とか思いながら歩いたが、結局この車中から甲斐駒も富士山も八ツも地蔵も、とにかくみんなまた見えたので可笑しかった。
韮崎で30分ほど待って普通電車で甲府に行き、甲府でスーパーあずさに乗り換えた。月曜昼間の自由席は、甲府からでもどうにか2人並んで座ることができた。ヱビスビールと蒼龍のカップワインを飲んだら気持ちよくなった。
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