飯豊連峰縦走 2ページ目

8月9日 曇りときどき晴れ

3時起床。テント内の温度は19.5℃。なんだかぱっとしない天気で、東の空には星が見えるものの、肝心の本山や大日岳は雲の中のようだ。

4:53 切合発(1685m, 21.6℃)

道
マツムシソウの咲き乱れる道
今日はうまくいったら梅花皮小屋まで行く気なので、4時にはスタートしたかったが、まだまだ暗かったのでちょっと遅らせて5時発とした。梅花皮小屋までは大日岳を往復すると11時間ほどかかるだろう。マツムシソウの咲き乱れる中を、テント場からも見えた目の前の小ピーク目指して登っていく。

5:27 草履塚(1840m, 22.7℃)

道
草履塚から本山を望む(中央が御秘所の岩場)
その小ピークは草履塚だった。ちょっとした広場になっていて休憩適地。
ここで飯豊本山がどかんと目の前に登場した。尾根を大きく張り出した、南アルプスの山のような、大きくて立派な山だ。風が強くて少し寒く、暑がりのかつりんでもTシャツ・ウールシャツでちょうどよいくらいだった。草履塚からいったん下る。

5:51 姥権現(1755m, 22.4℃)

姥権現
姥権現と飯豊本山
下った最低鞍部が姥権現。かつて女人禁制だった飯豊山に自分の息子を探しにきた母親が神の怒りに触れ石にされてしまったという伝説の像がある。供え物はなぜかキャンディばかりだった。
姥権現のすぐ上から御秘所の岩場が始まる。

6:05 御秘所通過(1800m, 23.2℃)

岩場
さほど難しくない御秘所の岩場
道
いよいよ本山は近い
御秘所は「おひそ」と読むらしい。草履塚から見えたときなんとなく想像できたが、思ったとおり岩場は大したことはなかった。奥穂の取り付きとかと比べれば簡単だと思う。短いし、恐怖感もほとんどない。
御秘所のあとはいよいよ本山への長い登りに取り付く。周囲の花はマツムシソウやツリガネニンジンといった秋の花の印象が強く、その中に終わりかけのウスユキソウが見られた。

7:09 本山小屋(2030m, 22.2℃)

山頂
本山小屋付近から山頂を望む
花
ニッコウキスゲの斜面を見下ろす
上方に見える石垣を目指して登っていく。なかなか登りごたえのある道だ。登りきるとそこは一王子で、一帯はテント場となっていた。石垣はかつての山小屋の名残であろうか。ここで道はなだらかになって、テント場のすぐ向こうに本山小屋が見えた。水場の標識があるがまだたっぷり残っているのでここはパス。
間もなく本山小屋到着。立派な小屋と立派なトイレがあった。小屋前の小さなベンチに座り休憩をとる。小屋の脇の展望台のような場所から本山の山頂が見えたが、ときどき雲がかかったりしていた。
山頂へと歩きだすと、南斜面にニッコウキスゲやコバイケイソウが咲いているのが見えた。1週間ほど前が見頃だったというからもう終わりかけなのかもしれないが、なかなか美しい。そしてここで初めてイイデリンドウを発見。この先咲いていないと困るので、写真をばしばし撮りまくる。ミヤマリンドウよりも小さくて、思った以上に可愛らしい花だ。

7:49 飯豊本山登頂(2030m, 22.9℃)

山頂
晴れていればこのバックに大日岳があるはずだが・・・
そんなこんなでだらだらと歩いたが、それでも小屋から20分ほどで本山登頂。雲に覆われてときどき本山小屋から草履塚のあたりまでが見える程度の眺望だった。
雲で展望がないからつまらないのか、標識が1本ぽつんと立っているだけで寂しすぎるのか、やってくる人々はみな10分もしないで山頂を去っていく。ここまでで切合に帰る人と、この先御西小屋方面に向かう人とでは、帰る人の方が若干多いくらいの感じだった。
一説によると、百名山詣での中高年には切合小屋から本山をピストンするだけの人が多いんだとか。切合小屋は飯豊で唯一の(そして東北でも数少ない)食事提供のある小屋だからなのだろう。しかし飯豊連峰の最高峰は大日岳だ。なにをもって百名山登頂と認定するのだろうか。と、くだらないことを考えてしまうのだった。

8:13 本山発(2025m, 21.7℃)

道
高原状のたおやかな稜線を行く
本山を出ると、いよいよ高原漫歩のメインイベントだ。大日岳を眺めながら、というのが理想だが雲の中。道は花がきれいだし、降られていないだけいいだろう。空は明るいし、そのうち晴れるかもしれない。

8:47 玄山道分岐(1895m, 23.9℃)

弘法清水
こんこんと湧き出る弘法清水
分岐
ヨツバシオガマの美しい玄山道分岐
玄山道分岐の標識でザックを下ろす。あたりはいやに道が広がっていた。
ここで休憩をとったのは弘法清水の水場があるからだ。夏の初めはまだ雪の下にあって使えないが、今年はもう出ているという情報があった。あまり遠かったらやめようと思ったが、分岐からは5分くらいだろうか。水場の前からは分岐の標識が見えるほど近い。
最初相棒を待たせて自分ひとりで汲みにいったが、冷たくて美味いので水筒の水を全部入れ替えることにし、分岐に戻って相棒を誘いまた水場へ。こういう湧き水のあるところは大概花がきれいだがここも例に漏れず、雪解けあとのチングルマやイワカガミ、アオノツガザクラなどが咲いていた。

9:26 分岐発(1910m, 28.6℃)

道
飯豊本山をバックにニッコウキスゲの道を行く
花
可憐なヒナウスユキソウとイイデリンドウの競演
そんなこんなでまったりしていると(山頂にいた時間より長かった)、空には晴れ間が見えてきた。両側をニッコウキスゲが彩る道を気分よく出発。
鞍部から緩く登り、丘をまわりこむようにすると大日岳方面の展望が開けた。とはいっても肝心の大日岳は雲の中だった。なだらかに広がる高原に道が続くのが見えるあたりが草月平。噂に違わぬ美しい大花畑に歓声をあげながら歩く。大好きな大雪山の花畑は、単一だったり少ない種類の花で構成されるが、ここは色とりどりのさまざまな花が文字どおり咲き乱れているのだ。

10:16 御西小屋着(1925m, 24.5℃)

小屋のかげにザックをデポして最高峰大日岳を往復する。同様のザックが5,6個並んでいた。往復を終えて休憩中の登山者もいて、話を聞くともなしに聞いていると、空荷だと片道1時間ちょっとで行けるようだった。山頂でののんびりタイムも含めて往復3時間みればいいだろう。

10:48 御西小屋発(1930m, 27.1℃)

大日岳
このトンガリを目指して登る
サブザックに水筒・軽食・カッパ・カメラなどを詰めて出発。いきなり結構下る。道はかなりガレていたが、背中が軽いのであまり気にならない。スタートして間もなく雲がとれ、ようやく男前の大日岳の姿が見えた。
山に気をとられてばかりいるとなかなか気づかないが、道中は花がきれいだ。イイデリンドウも咲いていた。また、文平の池があるせいか、やたらとカエルが多かった。

11:54 大日岳登頂(2070m, 27.8℃)

山頂
ちょっぴり寂しい大日岳山頂
山頂には、途中休憩なしで1時間ちょっとで着いた。下からずっと目指してきたトンガリがニセピークで、直前で左に巻いてしまうのがやりきれなかった。
山頂は雲の中だった。西の方の景色は時折見えたが、今まで歩いてきた山並みが見えるはずの東側がまったくダメ。

12:17 大日岳発(2060m, 25.1℃)

斜面
コバイケイソウの斜面
花
コバイケイソウの向こうに昨日歩いた疣岩山が
まったく展望が開けそうにないので下ることにした。山頂にいた約30分の間に来た人はひとりだけだった。
往路で急いだ分、帰路はのんびり花を楽しむことにして出発。雪解けあとにはチングルマが一列に並んで咲いていた。コバイケイソウやニッコウキスゲがきれいだった。歩いているとときどき晴れ間が出たりもした。往路同様、カエルが多かった。夏山はいいなあと思った。

13:40 御西小屋着(1945m, 29.0℃)

道
小屋への最後のガレた登り
のんびりしたので往きよりも時間がかかった。帰りは誰にも会わなかった。
梅花皮小屋までのコースタイムは4時間もあるので、今日はここでストップ。かなり風が強かったし、小屋も混みそうにないというので、小屋泊まりに決めた。
小屋は小さいが新しくてきれい。寝床の番号を見ると1・2階合わせて38人は寝られるようだが、小屋番氏の指示により、1階を食堂として使い、2階に寝ることになった。受付を済ませて2階に上がって昼寝した。

御西小屋にて

大日岳
夕暮れの大日岳と御西小屋
門内岳
夕暮れの門内岳と花畑
気象通報を聞いたあと、16:30に1階に下りて夕食にした。食後、水をくみに外に出ると見事に晴れ上がっていて、大日岳はもちろんのこと、明日歩く予定の門内岳がきれいに見えた。会津磐梯山も見えて、小屋番氏の言うには猪苗代湖まですっきり見えたのは実に久しぶりということだった。その後はまたガスが湧いてきたが、このためブロッケン現象が見られた。我々ふたりにとって人生初ブロッケンだった。
いい断熱材を使っているとかで小屋の中はたいそう暖かく、シュラフは使わないでTシャツ1枚で寝られた。この日の宿泊者は我々を含めて10人だけだった。テントは昨日切合にいたワンゲルの1張だけだった(切合には2張あったのに、もう1つはどこに行ったのだろう)。
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