トムラウシ - 旭岳縦走 (2/4)

7月28日 晴れのち曇り

木道
木道に霜が・・・
夜明け
美しいヒサゴ沼の夜明け
3時に目覚める。本日も素晴らしい天気だ。しかしそれにしても寒い。枕もとのプロトレックを見れば、気温は8.5℃。4時出発のつもりだったが、あまりの寒さに相棒の鼻水がとまらなくなったので、再びシュラフにもぐりこむ。
4時にようやく活動を開始できるようになった。トイレに行こうと外に出ると、ヒサゴ沼から水蒸気がたちのぼり、奥にはニペソツがシルエットになって浮かんでいた。あまりの美しさに見惚れていると、体が冷えてすぐにクシャミが出てきた。あわててトイレに向かうと小屋の前の木道が白っぽい。なんと凍っていたのだった。朝食は、前夜の余りご飯に味噌汁を入れて煮て、雑炊にした。

5:20 ヒサゴ沼発(高度計:1665m, 温度計15.9℃)

雪渓
急な雪渓の登り
当初の予定より1時間半も遅れて出発。テントはそのままで、サブザックでトムラウシまでピストンする。化雲への分岐のすぐ次にくるトラバースの雪渓はカチカチに凍っていた。いちおうステップが切れてはいるがツルッツルで緊張する。こういうところはストックが有効だ。通過してから振り返ると、ストックを持っていない重装備の人がものすごいへっぴり腰でおっかなびっくり渡っていた。
いったん夏道を歩いたあと、今度は急な雪渓の登りが出現。ここもステップが切れてはいたが、上部の方は踏み跡がまばらで見失いそうだった。先ほどの重装備の人はどうやら雪渓を避けて右手の岩塊の上を進んでくるようだ。

5:58 ヒサゴのコル(1785m, 21.3℃)

木道
トムラウシ山頂は雲に包まれていた
雪渓に気をとられて気付かなかったが、いつの間にか雲が空を覆っていた。コルから10分登った台地の上に立っても、行く手は雲であった。むむう、今回も晴天のトムラウシ登頂は望めないのか・・・
木道を進むと、トムラウシこそ隠れてはいるものの、雲はときどき晴れてロックガーデンあたりまでは見渡せた。

6:38 天沼(1820m, 19.0℃)

天沼
薄暗くてもそこそこきれいな天沼
巨岩地帯
巨岩地帯を行く
天沼手前の小さな沼は干上がっていて、季節が進んでいることを感じた。
天沼周辺のチングルマは終わりに近づいていた。曇天で暗いせいか、あまり美しいとも感じなかった。このあたりが暗いわりには向こうに見えるロックガーデンには日が差していた。なんだかヘンな天気だ。
天沼を過ぎ、ぬかるみの花畑・巨岩地帯・クワウンナイ源頭を経て、ロックガーデンへ。

ロックガーデン

ロックガーデン
ロックガーデンを直下から見上げる
ここの岩の壁を見ると本当に圧倒される。2mくらいある岩が当たり前のようにごろごろしているが、そんなでかいヤツがぐらぐらしていたりするので注意しなければならない。「山の自然学」という本によると、トムラウシほど巨岩が多い山は珍しいのだそうだ。
ナキウサギがそこかしこで鳴いているが、本日は早い登頂を目指しているので探したりせずにさっさと進む。ペンキ印と踏み跡があるので(岩に泥がついている)、よほどの悪天候でないと迷うことはないだろう。
そしてロックガーデンを突破すると、いよいよトムラウシが眼前に迫った。この眺めも大好きな景色のひとつだ。道が1本、丸い丘に向かってすうっと伸びていて、その先にトムラウシの頂上部がある。はるばるやって来たんだ、と感慨もひとしおだ。

8:13 北沼分岐(1985m, 19.3℃)

トムラウシ
丘の上からトムラウシ頂上部を眺める
丘を越えるとトムラウシ頂上部の全貌が見えた。朝の感じだとまるっきり雲の中だと思っていたのでこいつはラッキーだ。
頂上に向かって道が何本か伸びているが、一番左よりの道が正規ルート。他の道には以前にはなかったロープが張られて、正しい道に誘導するようになっていた。

8:46 トムラウシ登頂(2110m, 19.1℃)

山頂にて
好天を祈りつつカフェオレを飲んでまったりする
巨岩を渡ってトムラウシ登頂。晴れていたのは山頂付近だけで、上は明るいが周りは真っ白だった。目標だった快晴の登頂はならなかったが、考えを切り替えて、3度目の今回もちゃんと登頂できたことを素直に喜ぶことにした。
風が強くて結構寒く感じたので、カッパの上着を着込んで岩陰に陣取る。時間はたっぷりあるので、カフェオレを淹れたりしてまったりと過ごした。
山頂は最初静かだったが、南からどんどん人がやってきた。トムラウシ温泉からの日帰り登山者だ。こっちは2日がかりでようやく到達したのに、なんだかなあと思う。

10:26 下山開始(2115m, 20.9℃)

旭岳
旭・白雲が見えた!
登山道
南斜面を下る(右上の沼が南沼)
粘った甲斐あって(?)、10時過ぎには旭岳と白雲岳が並んで見えるようになった。これが見られればまあいいだろう、ということで下山開始。
帰りは来た道ではなく、南沼に下りる。さらに、来るべきトムラウシ - オプタテシケ縦走の偵察も兼ねて、銀杏が原方面に足を伸ばすことにした。
ところで、この南の道は歩きやすかった。北沼方面と違って巨岩の渡りもないし、道がよく踏まれている。

10:50 南沼テント場(1950m, 21.5℃)

南沼テント場
気分の良さそうな南沼キャンプ指定地を眺める
南沼
南沼は不思議な色合いだった
南沼のキャンプ指定地は通過。ここもなかなか雰囲気の良さそうなテント場だが、トイレがないのが難点だ。
携帯トイレブースの脇を抜けると眼下に南沼が見える。南沼に向けて50mほど高度を下げる。南沼は残雪の上に水が張っていて、なんともいえない色だった。

11:25 銀杏が原のちょっと手前(1825m, 23.3℃)

銀杏が原
銀杏が原の眺め
その後はだらだらとした下りになった。とちゅうでちょっと細い尾根(ここがフウロソウできれいだった)を通過する以外は、なだらかな斜面を行く感じだ。
ヒサゴ沼へ16時までに帰るとして逆算してタイムリミットを11:30にして進む。そして、おそらく三川台と南沼テント場のほぼ中間地点まで到達したところでストップすることにした。その先はたぶん、しばらくハイマツ林が続くだろう。サブザックをおろしてポットのお湯をすすりながら、山頂とはうってかわって誰もいない静かな山を味わった。目の前のだだっ広い草原が銀杏が原で、イワイチョウの草原となっているらしい。秋には黄葉して黄金色になるので黄金が原とも言われている。そんな景色も見てみたいなあと思った。

12:20 南沼テント場発(1930m, 18.7℃)

登山道
日本庭園に劣らない花畑を行く
40分ほどかけて南沼テント場へ戻った。この帰り道でナキウサギを見つけた。帰る途中、石に腰掛けて休んでいたら目の前に現れたのだ。例によってキーキー鳴いているのでマネして鳴いてみたら、訝しがるように黙り込んでしまった。
テント場でバウムクーヘンなどを食べて腹ごしらえしてから出発。ロープで仕切られた細い踏み分け道を登っていく。周囲はキンポウゲがきれいだ。坂を越えると今度は雪解けあとのチングルマやエゾコザクラ。花→岩→花と、順に巡ってくる。この日は日本庭園よりもきれいだったかもしれない。

13:10 北沼分岐(1985m, 20.7℃)

花畑
北沼南岸の花畑
北沼の南岸の斜面の花畑は凄い密度だった。そういえばここは3年前も凄かった。道は北沼の東岸を水際に沿って進む。この斜面も物凄い密度の群生が見られた。沼をはさんで対岸にも一面にピンクや黄色に染まっているところが。近くで見てみたいが道のないところだ。ただ同じことを思う人が多いのか、ちょっと踏み跡がついていたのが気になるところだ。
ロックガーデン上の台地でトムラウシの雄姿を記憶に焼き付けてから、岩場を下った。またここに来る機会は果たしてあるのだろうか。

14:35 天沼(1830m, 22.8℃)

クワウンナイの源頭部に差し掛かったあたりで、単独男性と、続いて高校生くらいの4人パーティとすれ違った。どちらも「ここの上が北沼ですか」などととんでもないことを言う。おそらく南沼で幕営するのだろうが、みんな結構のん気だなあと思う。
天沼は朝と同じく暗かったが、雲が高くなっていてトムラウシの先っちょが見えた。チングルマも朝は逆光だったのか、この時間に見ると思いのほか美しかった。ふたりで「朝もこんなにきれいだったっけ?」などと言い合いながら歩く。

15:13 ヒサゴのコル(1785m, 22.9℃)

登山道
トムラウシを振り返りながら歩く
台地上からもトムラウシはずっと見えていた。途中で何度も振り返りながら歩いた。木道の最終地点で山頂部は見えなくなる。明日の予報は曇りなので、もうこれがトムラウシを見る最後かもしれないと思い、後悔しないようにじっくりと眺めてからコルに下った。

15:49 ヒサゴ沼着(1680m, 21.5℃)

登山道
ヒサゴのテント場まであと少し
朝、苦労して登った雪渓をおっかなびっくり降り、独特の形状の木の階段に降り立てばヒサゴ沼のテント場はもうすぐだ。
食事の支度をしながら天気予報を聞くと、翌日北海道は弱い気圧の谷に入るため曇り、上川地方の山間部では朝晩に弱い雨が降るだろう、ということだった。「上川地方の山間部」って、ピンポイントでココじゃん。明日は白雲まで行きたいが、朝雨が降っていたらどうしようか。最悪の場合はここに停滞して、天人峡のあの悪路を下山する可能性も考えるようになった。
今宵の食事は岳食シリーズのえびカレーとシウマイ、ポテトサラダ。
この日はテントは20張ほどに増えた。例によって10人程度のツアーが来ていたが、みな小屋に入れたようだった。ガイドたちはテント泊まりのようだ。
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