EHN 2010年4月2日
解明されていないが
残留性のある化学物質が数百ある

By Heather Stapleton and Wendy Hessler

情報源:Environmental Health News, April 2, 2010
Study identifies hundreds of obscure - yet persistent - chemicals.
By Heather Stapleton and Wendy Hessler
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/
new-study-identifies-persistent-chemicals/


オリジナル論文:
Howard, PH and DCG Muir. 2010. Environment Canada,
Identifying new persistent and bioaccumulative organics among chemicals in commerce.
Environmental Science and Technology
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/es903383a

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年4月6日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_100402_persist_bioaccumulate.html


 新たな研究が、商業的に使用されている数百の化学物質は残留性と生体蓄積性を有するが、環境中での作用とレベルについてはほとんどわかっていないことを示唆している。化学物質への暴露を予測したり、それらが健康に脅威をもたらすかどうかを知ることは大変難しい。今、研究者らが、更なる評価と監視を必要とするかもしれない化学物質を選び出し特定するための独自の方法を提案している。

何をしたのか?

 (カナダ環境省の)著者らは、1986年から2006年の間に商業的に使用された22,000以上の化学物質に関するデータを収集した。彼らは、カナダ国内物質リスト(Canadian Domestic Substance List)(訳注1)や米EPA有害物質規正法目録更新規則(Toxic Substances Control Act Inventory Update Rule)データベースを含むアメリカとカナダ政府のデータベースから情報を集めた。

 コンピュータソフトウェアを利用して化学物質とそれらの分解物質は、化学的特性と化学的構造に基づいて残留性と生体蓄積性についてスクリーニングされた。専門家がさらに、コンピュータシステムが識別できなかった他の重要な特性のために優先度が高いとして特定された化学物質を評価した。

 これらの分析から、研究者らはどの化学物質が環境中に残留しやすいかを決定した。これは、もし大気中に放出されれば大気中でどのくらい長い間その化学物質が残留するのか;その化学物質が水、大気、及び有機物質(例えば、土壌、堆積物、植物)間をどのように移動するのか;そしてその化学物質は生物中で蓄積するのかどうかについての評価を含む。

 これらの化学物質はさらに、意図される用途及び使用量が環境中へ放出されているのかどうかを決定するために評価された。例えば、研究目的のための少量製造される化学物質はリストから除外された。

何がわかったのか?

 この評価で、環境中において潜在的に残留性と生体蓄積性がある610の化学物質を特定した。そのうち約100は環境中で測定されており、47は監視プログラムを通じて日常的に測定されて歴史的に特定されていた化合物である。

 このリストは、家具や電子機器に使用されている難燃剤、ローションやせっけんに使われている抗菌剤、広範な製品中で使用されている防汚、耐油用化学物質を含んでいる。これらの化学物質のあるものは、使用が意図された場所からはるかに離れた場所、例えば北極の大気、クジラやカモメ、そしてカナダの排水中で測定されている。

 多くのものは、アメリカではもはや商業目的では製造されていない。しかし、あるものは製品中で使用されている又は環境中に残留している。

 これらの中で、62%はハロゲン化合物であった。すなわち、それらはフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のいずれかを含んでいる。これら化合物は、生体蓄積性と残留性を有するものとして知られている。例えば、有害性が認められている多くの有機塩素系農薬は、中央の芳香族炭化水素−ひとつ又はそれ以上のベンゼン環で6個の炭素からなる六角形をした化学構造を持つ−に結合された4つ以上の塩素原子を持っている。DDT、ディルドリン、クロルデンのような農薬は長年、多量に使用され、散布されたたが、がん、出生障害、生殖系及び神経系障害を含む健康と環境に対する懸念のために廃止された。

何を意味するのか?

 残留性と生体蓄積性のある多くのハロゲン化合物はいまだに製造され製品中で使用されているが、環境中のレベルについては、ほとんど分かっていない。また予測できない健康影響もあるかもしれない。

 この研究は、化学物質の環境中での運命について正確で迅速なスクリーニングをするための独自の方法を説明している。ソフトウェア・プログラムとコンピュータを使用したスクリーニングは、規制当局が商業利用される化学物質の暴露リスクを特性化する時に、もっと先を見越すことに役立てることができる。

 日常的なテスト手法は特定された多くの化学物質を検出することができる。それらの数が多いので、監視プログラムと研究者らは、いかに環境中に広がっているかを決定するためにある特定の化学物質を探すべきであると著者らは示唆している。そのことに役立てるために、彼らは生産量、生体蓄積性、及び残留性に基づいた化学物質”優先リスト”を用意した。

 おそらく同様に重要なことは、13種類のシリコン化合物を特定したことである。現在、環境中の試料からをそれらを検出する信頼性ある方法はないので、それらの化学物質が土壌、大気、水、有機体を汚染しているかどうか知る方法がない。

 現在、化学物質が米EPA所管の既存の有害物質規正法(TOSCA)の下でどのように規制されるのかに関連して大きな懸念がある。企業秘密の化学物質、すなわちその特性が公開されていない化学物質が消費者製品中で使われていることについて、いくつかの環境・健康団体がTOSCAの有効性について十分広い範囲を完全には評価していないと主張している。

 おそらく、コンピュータに基づくスクリーニングの実施をもっと実施することが、化学物質管理計画を変え、広範な環境と人の暴露を防ぐのに役立つであろう。


訳注1


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る