欧州環境庁(EEA)2013年1月 レイト・レッスンズ II
4. 飲むには多すぎる:
水道本管中のパークロルエチレン(PCE)汚染 (概要編)

David Ozonoff
情報源:European Environment Agency
EEA Report No 1/2013 Part A Summary
4 Too much to swallow: PCE contamination of mains water
David Ozonoff
http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2/late-lessons-chapters/late-lessons-ii-chapter-4

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico
掲載日:2013年2月21日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/04_PCE_contamination_summary.html


 PCE(パークロルエチレン)はまた、パーク(perc)、又はテトラクロロエチレン(訳注1)とも呼ばれ、飲料水配管のプラスチック・ライニングの製造用に1960年代後半及び1970年代に用いられた。この新しい比較的テストされなかった配管のタイプは、ニューイングランド水供給システムで1,000キロメートル以上(700マイル以上)使用された。PCEがパイプ・ライニングから水の中に漏れ出しており、今日まで継続的な改善が求められる水供給系の広範な汚染があることは、1976年に発見されるまで分からなかった。

 パイプがそこに敷設される以前から、PCE の潜在的な有害性について相当な量の科学的情報が利用可能であった。これは、今日の懸念の多くより高い曝露であるが、それでも比較的低レベル曝露での PCE の発がん性、催奇性、及びその他の健康影響についての現在の懸念は含んでいなかったが、多くの早期の警告は PCE ベースの主配管ライニングの導入に注意する必要を示唆していた。

 PCEは、 鉤虫(腸に寄生する線虫)の駆虫薬に用いられており、副作用に関するデータは文献中にあったが、後に、航空機作業者、生物学的モニタリングが求められる諸国の小さな会社、そしてドライクリーニング会社など、様々な職業的利用者が研究された。また飲料水が PCE 又はそれによく似たがんに関連する TCE(トリクロロエチレン)(訳注2)で汚染されていないかどうかを調べるために、いくつかの環境的な調査が実施された。結果は相反する要素の混ざったものであり、化学産業は PCE がヒト発がん性であることを否定した。

 このケーススタディは、化学物質の毒性を研究する初期(1970年以前)の歴史を探求している。それはまた、製造会社であるジョンズ・マンビル(Johns-Manville Corporation)(訳注3)が有害性が疑われる物質の使用についての警告の兆候を認めなかったことにも焦点を合わせている。それは、公衆の健康への影響を考慮せずに、なぜ新製品が市場に出されたのか、そして潜在的な危険性の証拠がなぜ無視されたのかについて検証している。

 この科学は秘密ではなかった。それは行動を導き促進するのに効果的ではなかった。問題は、注意義務違反なのか、又はどのような証拠が行動の引き金になるのかについての明快さの欠如なのか、又は科学的証拠は科学自身の中では解決できないということをどのように解釈するかについての同時代の議論の欠如なのか。解決を規定することができる科学の哲学からの包括的な基準はない。

 本章はまた、二つの補足的テキストを含んでいる。ひとつは特に PCE とTCE の評価に焦点を合わせつつ、同じデータに基づくリスク評価の結論の間の相違を分析するパネル。もうひとつのパネルは、現在のドライクリーニングでの PCE の使用を減らすためにウエットクリーニング技術に切り替える機会を記述している。


訳注1
pressconnects.com 2012年1月7日 新たな研究:トリクロロエチレンとテトラクロロエチレンによる汚染土壌からの発生ベーパは先天性異常に関係する

訳注2
ロサンゼルス タイムス 2011年9月30日 工業用溶剤トリクロロエチレン(TCE) 考えらていたより人体に危険 全米のスーパーファンドの浄化が必要か?

訳注3
ジョンズ・マンビル - Wikipedia
 アスベストの危険性を何十年も前から知りながら無視して製造を続け、労働者や消費者を危険にさらしたとして多数のアスベスト健康被害に対する訴訟を起こされ、1981年に製造物責任法により高額の懲罰的賠償を命じられた。



化学物質問題市民研究会
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