Toxic-Free_Food Packaging 2022年
食品包装及び食品接触材中の有害化学物質

情報源:Toxic-Free_Food Packaging, 2022
Harmful Chemicals in Food Packaging &
Food Contact Materials

https://toxicfreefoodpackaging.com/all-about-fcms/

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年7月27日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/plastic/news/220000_
Toxic-free_Food_Packaging_Food_Contact_Materials_and_Health.html

PFAS
ビスフェノール類
フタル酸エステル類
非意図的添加物質類(NIAS)


PFAS(パーフルオロアルキル物質及びポリフルオロアルキル物質):耐油性と耐水性のため、焦げ付き防止調理器具、パン用包装袋、食品持ち帰り用容器、ファーストフード包装、ポップコーン容器など、多くの人々が日常的に使用する様々な食品接触材でよく使用される。

 ARNIKACHEM TrustHealth and Environment Alliance(HEAL)、及び他の 7つの市民社会組織が実施したある調査では、ヨーロッパ全体で使い捨て食品包装に PFAS が広く使用され汚染されていることが示された。一部の PFAS が体内に蓄積し(生体内蓄積として知られる)、生殖及び発達の異常、コレステロールの増加、免疫応答の抑制、及び腫瘍形成に関連していることが今や明らかである。いくつかの研究によると、一部の PFAS は内分泌かく乱物質である可能性がある。それらの極めて高い難分解性性のために、それらは「永遠の化学物質」とも呼ばれる。

ビスフェノール類:食品缶やプラスチック容器などの食品包装を含む、ポリカーボネート・プラスチック及び樹脂の製造に広く使用されている化学物質のグループ。 BPA は最もよく知られており、一般的に使用されているビスフェノールであり、内分泌かく乱化学物質(EDC)として分類されており、生殖毒性がある。

 多くの証拠が、脳の発達と子どもの行動への悪影響、血圧の上昇、心血管疾患や代謝疾患(糖尿病や肥満など)の発症など、BPA と人間の健康への影響との関連を示している。企業は BPA を BPS や BPF などの他のビスフェノール類に置き換えているが、これらの化学物質も同様の特性を持ち、有害性と健康への影響について、同様の懸念を引き起こしている。 EU では BPA は、ほ乳びんで禁止されているが、他の食品接触用途では禁止されていない。

フタル酸エステル類:柔軟性(可塑剤と呼ばれる理由)と耐久性を高めるためにプラスチック包装材に添加されることが多い化学物質のグループ。

 生殖毒性及び/又は内分泌かく乱化学物質(EDC)として分類されているものもある。フタル酸エステル類への暴露は、高血圧、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病に関連している。妊娠できる、または妊娠したい人にとって、フタル酸エステル類への慢性暴露は、出生力の問題、高い流産率、及び貧血などの妊娠合併症に関連している。

非意図的添加物質類(NIAS):食品接触材中に存在するが意図的に添加されていない物質であり、製造プロセスからの副産物及び不純物。

 NIAS は大量に食品に移行することがわかっている。これらのほとんどは安全性について調査されておらず、食品接触材の評価では考慮されていない。

食品接触材と健康

 食品接触材(FCM)に使用でき、食品や飲料に移行する可能性のある化学物質は数千ある。ヨーロッパだけでも、約 8,000 の化学物質類を食品包装やその他の FCM に使用できる。これらの化学物質の多くは、私たちの健康に有害であることが証明されているか、疑われている。食品接触材に含まれる多くの化学物質については、安全性評価がなされていないため、科学者らや消費者らはまだ完全な影響を知らない。

 これらの化学物質は私たちの体(尿、血清、血漿、胎盤、臍帯、母乳、胎児組織を含む)で検出され、私たちの健康に有害な影響を及ぼしている。 FCM のいくつかの化学物質は以下に関連付けられている。
  • がん(乳がん、子宮内膜がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、甲状腺がんの世界的な発生率は、過去40〜50年にわたって増加している。)、
  • 不妊症及びその他の生殖障害(1973年から2011年にかけて、西欧諸国の男性の総精子数は59%減少した。)、
  • ホルモンかく乱、
  • 発達障害(子どもの学習、注意、及び行動上の問題のリスクの増加、及び子どもの神経発達障害及び低 IQ に伴い達する 1,570億ユーロの年間費用)
  • 神経系と免疫系への影響。
食品接触材と循環経済

食品包装に含まれる有害な化学物質は、循環経済を妨げる可能性がある。

 食品包装のリサイクルは、欧州連合で循環経済を達成するための重要な部分であるが、有害化学物質はリサイクルプロセス中に常に除去されるとは限らない。これは、リサイクルされた材料が危険な化学物質を含む可能性があることを意味し、時には未使用の材料に見られるレベルよりも高いレベルになる。

 公衆の健康を保護し、有害物質のない循環経済の創出を確実にするために、有害な化学物質はそもそも一次食品包装に使用されるべきではない。

食品接触材とプラスチック

 大多数の食品接触材(FCM)とは異なり、プラスチックは特定の EU 規制の対象であるが、これはプラスチックの食品接触材(FCM)に含まれる有害な化学物質についての懸念がないことを意味するものではない。

 Health and Environment Alliance(HEAL)のレポート「プラスチックの潮流を変えろ(Turning the Plastic Tide)」は、プラスチック製の食品接触材の製造中に存在する、又は使用される化学物質への暴露に関連する健康上の懸念に光を当てている。

解決と代替案

 いくつかの研究は、より安全な食品接触材が市場で入手可能であることを示している。

 経済協力開発機構(OECD)が 2020年に発表した報告書(PFASs and Alternatives in Food Packaging (Paper and Paperboard) Report on the Commercial Availabilityand Current Uses)は、食品接触材に含まれるパーフルオロアルキル物質及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)の非フッ素化代替物質(物理的及び化学的の両方)が市場で入手可能であり、一般的な食品包装用途に求められる耐油性と耐水性を満たすことができることを示している。例としては、木材パルプ高密度精製して作られた天然耐油紙(NGP / natural greaseproof paper)(結果として得られる材料は、他の紙に比べて細孔が非常に少ない、圧縮された高密度のセルロース繊維網)、及び植物オイル由来のバイオワックスなどのバリア配合物がある。

 小売業者や企業は、製品中に含まれるこれらの化学物質の一部を段階的に廃止するための措置を講じている。スターバックスは 2022年春に、2023年までにすべての食品包装材での PFAS を国際的に禁止すると発表し、バーガーキングの親会社は 2025年までに添加 PFAS を段階的に廃止すると発表した。


訳注:当研究会が紹介した関連記事の一部


化学物質問題市民研究会
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