コンシューマー・レポート 2022年5月20日
FDA は食品包装中の全てのフタル酸エステル類の
禁止を求める請願を拒否

同化学物質は多くの健康問題に関連しているが、
FDA はもっと多くの情報が必要と言う
スコット・メディンツ

情報源:Consumer Reports (CR), May 20, 2022
FDA Denies Petition to Ban All Phthalates in Food Packaging
The chemicals have been linked to numerous health problems,
but the agency says it needs more information
By Scott Medintz
https://www.consumerreports.org/food-safety/fda-denies-petition-
to-ban-all-phthalates-in-food-packaging-a8313932149/


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年6月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/news/220520_CR_
FDA_Denies_Petition_to_Ban_All_Phthalates_in_Food_Packaging.html


 食品医薬品局(FDA)は今週(6月19日)、公衆衛生、食品安全、及び環境組織の団体からの食品包装及びプラスチック材料でのフタル酸エステル類の使用の禁止を求める 2つの請願を却下した。

 プラスチックの剛性を下げ、柔軟性を高めるために可塑剤として一般的に使用されるフタル酸エステル類は、これらの材料から接触する食品や飲料に浸出し、消費者が飲食するときに暴露することが知られている。 何十年にもわたる科学的研究により、フタル酸エステル類の暴露は、先天性欠損症、不妊症、内分泌系のかく乱、子どもの学習障害や注意欠陥/多動性障害のリスクの増加など人間の深刻な健康問題に関連付けられている。

 フタル酸エステル類は、製造工場のコンベヤーベルトやプラスチック配管から、食品の調理に使用される手袋、牛乳パックや飲料容器の裏地などの食品包装容器に至るまで、食品製造チェーン全体の製品に含まれている。

 FDA は、プラスチック業界団体であるフレキシブル・ビニル・アライアンス(FVA)がFDA への独自の請願で当該化学物質はその様な目的ではもはや使用されていないことを示したという理由で、食品包装及び加工における 23の特定のフタル酸エステル類の使用の承認を撤回した。

 しかし、FDA は、請願者らが他の 9つのフタル酸エステル類が食品包装や加工での使用に安全でないことを証明しなかったとして、それらの使用の中止要求を却下した。

 ”FDA の決定は、私たちの食品がフタル酸エステル類で現在汚染されていることを無謀にも容認し、次世代を生きる子どもたちの人生を変えてしまうリスクに彼等をさらしている”と、FDA にこれらの化学物質の使用を禁止するよう説得する取り組みを行っている環境防衛基金(Environmental Defense Fund)環境健康センター(Center for Environmental Health)、アメリカ学習障害協会(Learning Disabilities Association of America)、及び食品安全センター(Center for Food Safety)を含む消費者団体のコンソーシアムを代表する地球正義(Earthjustice)の弁護士キャサリン・オブライエンは言う。

 コンシューマー・レポートの上席科学者であるでマイケル・ハンセン博士は、これらの懸念を同様に述べている。”これらの化合物は特に子どもたちへの悪影響に関連していることが科学的に非常に明確なので、FDA が 9つの追加のフタル酸エステル類の中止を拒否したことは残念である。その科学は、請願書が提出された 2016年に明らかになり、その後の研究を通じて強化された”と彼は言う。

 2017年、消費者製品安全委員会は、その専門家委員会が健康上のリスクを示していると結論付けた後、おもちゃやその他の子ども向け製品での 8つのフタル酸エステル類の使用を禁止した。禁止されているフタル酸エステル類のうち 3つは、FDAが食品容器や加工材料にまだ使用できると述べている 9つのうちのものである。

 FDA の決定は、環境及び健康団体からの 2016年3月の請願に応えて行われた。彼らは、フタル酸エステル類の危険性に関する科学的証拠を考えると、連邦食品医薬品化粧品法で義務付けられているように、FDA はその物質が承認された使用に対して安全であると合理的に確信できないはずであると主張した。

 同法は、FDA が 180日以内にそのような請願を許可または拒否することを要求している。しかし、FDA は繰り返し詳細情報を求め、あるケースでは、200 を超える科学記事を引用した 71ページの分析を環境健康団体から受け取った。最初の提出から 5年半後の 2021年 12月、請願者らは連邦裁判所に、FDA は”行政回避のためのマラソン交渉”に関与したとして判決を出させるよう要請した。 FDAは、裁判所が対応を命じた後にやっと最終報告書を発行した。

 請願を否定する一方で、FDA は、現在も使用されている 9つのフタル酸エステル類の使用と安全性についてさらに多くの情報を求めると述べた。”FDA は一般に公開されているフタル酸エステルに関する最新の毒物学的及び使用情報を認識している”と、決定とともに発行されたプレスリリースに書いた。

 健康と安全の擁護者らは、FDA の要請により提出された新しい科学情報が請願書の実質的な変更につながったため、2018年に FDA は対応期限を延期したと述べた。 ”健康と安全の擁護者らが警鐘を鳴らしてから 6年後、フタル酸エステル類の安全性に関する新しいデータのレビューを開始するという FDA の発表は法外であり、既存の請願の手続きにおいて現在の科学に取り組むという FDA の法的義務を回避しようとしてる”と Earthjustice の弁護士オブライエンは述べている。

 多くの研究でほとんど全てのアメリカ人で発見されているフタル酸エステル類を完全に回避することは困難であるが、次のような食品への暴露を最小限に抑えるためにできることがいくつかある。
  • 新鮮な家庭料理をできるだけ頻繁に食べ、プラスチック接触の加工食品の店での購入は避ける。
  • ボトル入りの水ではなく、水道水を飲む。 (水道水の安全性を確認して対処する方法を参照
  • 食品をプラスチック容器で保管しない。代わりに、ガラス、シリコン、又はホイルを使用する。
  • プラスチック容器に入った食品を電子レンジで加熱しない。代わりに、従来の加熱方法(ストーブまたはオーブン)またはガラス容器内の電子レンジを使用する。

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